メンヘングラートバッハ。ドイツでは近年、ボードゲームシーンが活況だ。メンヘングラートバッハはその基礎となる役割を果たしている。ここからたくさんのアイデアが生まれているほかに、莫大な数のパーツが送り出されている。
ボードゲームのパーツとして目に止まったものだけでも、床から天井までカラフルなコマが入った箱が積み上げられている。ブランクカード、ダイス、木製のコマ、ブランクのボード、ゲームのお金。この全てが、想像力に富んだボードゲームデザイナーが新作を製品化したり、アイデアをテストプレイしたりするのに必要なものである。メンヘングラートバッハ在住のハラルド・ミュッケ氏が、クリエイターのためのこの遊び場(シュピールプラッツ)の主である。ネット通販サイト「シュピールマテリアル」(www.spielmaterial.de)では、デザイナーたちが必要なものを注文してくる。
「ドイツとヨーロッパ中、いやたぶん世界中で一番、ボードゲームのコマやその他のパーツの品揃えがいいと思います」とミュッケ氏は語る。ホテル業のビジネスマネージャーを経て、今の仕事に就いた。「シュピールマテリアル」はミュッケ氏によれば「窮地から生まれた」という。自身もボードゲームデザイナーで小さなボードゲーム出版社を運営しているが、そこで自身のゲームを製品化するのに、いろいろな種類の良質なパーツを入手するのはとておたいへんなことだった。
そこで2000年から「シュピールマテリアル」でこの穴を埋めている。顧客はドイツのデザイナーが大半だが、ほかにも言語聴覚療法士、社会教育士、学校、大学もある。企業もボードゲームをパブリック・リレーションズの手段として開発している。
このためミュッケ氏は、自身のボードゲームを特定のテーマで開発したり、手持ちのアイデアを製品化するというかたちで手伝っている。ちょうど今、水資源マネージメントとのコラボで仕事をしたり、あるボードゲームをザクセン州の障害者団体のために作り変えたりしている。
ボードゲームの製造も彼の会社を通して行われる。ボードゲームは1000個以上で経済的にも見合ったものになるが、試作品や、50~500個の少部数でも製造することができる。「我々にはゲームを製造できるパートナーがいます」とミュッケ氏。
「箱やボードの大きさを設定し、契約を結ぶと、あとはやってもらえます。」おそらくボードゲームで儲けようとか、ドイツ年間ゲーム大賞を狙っているのでなければ、この方法で自作のボードゲームという夢を叶えられる。ドイツでは長年の間、きわだって活況なボードゲームシーンがあり、情熱的なプレイヤー、定期的なボードゲーム会、秋にエッセンで行われるシュピールのような大規模なボードゲームイベントがある。
そしてボードゲームデザイナーもドイツには数多くいる。ボードゲームデザイナーギルド(SAZ)には450名が加盟する。そこにもちろんミュッケ氏も属している。自身のボードゲームを開発しているが、ほかのデザイナーの作品を出版することもある。さらにすでにあるパーツをいわゆる「リサイクル」するコンテストもある。「大きな出版社はたくさん製造しすぎることがあるのです」とミュッケ氏。「例えば、ドイツ年間ゲーム大賞を狙って外したときなどです。」
そのようにして大量に余ったパーツをミュッケ氏は引き取り、そのパーツを使ったボードゲームのコンテストを開く。このようにしてプラスチック製の原油と採掘塔コマを使ったボードゲームシリーズが生まれた。
もちろん小さな出版社にとって、大企業に太刀打ちするのは難しい。そのためミュッケ氏は3つ目のプロジェクト「シュピールディレクト」に取り掛かっている。これは小さな出版社20社が組合を作り、一緒に卸売をしているものだ。「これがないと我々のような小さな出版社は消えてしまうでしょう」とミュッケ氏。店舗がメンヘングラートバッハにあるこの組合を通じて、業者は170タイトルのボードゲームを注文することができる。
「シュピールディレクト」は営業などおらず、メッセで活動している。この営業形態のメリットは、組合で利益を上げる必要がなく、コスト分だけ働けばよいことだ。小さな出版社はこうしてドイツのボードゲームの多様性に貢献することができている。
・RP Online:Viel mehr als Mensch-ärgere-dich-nicht