プレイスタイル再考

プレイスタイルの違いはそんなに大きくないものだから、こだわらずに一緒に遊びましょうよという話。
『ルールズ・オブ・プレイ』では、プレイヤーを5つのタイプに分類している(上巻、545ページ)。
標準的なプレイヤー(Standard Player):勝つことに普通の関心をもち、ルールに従って楽しもうとする。
凝るプレイヤー(Dedicated Player):勝つことに強い関心をもち、ルールに精通して、大きな熱意で楽しもうとする。
姑息なプレイヤー(Unsportsmanlike Player):勝つことに強い関心をもち、暗黙のルールを破る。弟に勝たせない兄や、野球で打者の集中を見出そうとする捕手など。
ごまかし屋(Cheat):勝つことに強い関心をもち、操作のルールをこっそり破る。楽しもうとする心構えがあるふりをする。
妨害屋(Spoil-Sport):勝つことにもルールを守ることにも興味はなく、楽しもうとする心構えもない。チェス盤上のコマを全て払いのけてしまうプレイヤーなど。
この分類の軸になっているのは、楽しもうとする心構えの度合い、ルールの権威に対する敬意、勝つことへの関心である。

楽しもうとする心構え ルール 勝つこと
標準的なプレイヤー
凝るプレイヤー
姑息なプレイヤー
ごまかし屋
妨害屋

ここで注目したいのは、凝るプレイヤーは、楽しもうとする心構えがより高いということである。ガチゲーマーほど、エンジョイゲーマーなのである(したがって「ガチ勢」と「エンジョイ勢」を対比させるのはおかしい)。この分類には入っていないが、凝るプレイヤーと対比されて「カジュアル(気楽に遊ぶ)プレイヤー」「暇つぶしをしたい初心者」などが言及されている。いずれも相対的なものであることに注意しなければならない。AさんはBさんよりガチだけど、Cさんよりはカジュアルだというように。

楽しもうとする心構え ルール 勝つこと
カジュアルプレイヤー
標準的なプレイヤー
凝るプレイヤー

姑息なプレイヤー、ごまかし屋、妨害屋については、この書籍のテーマであるルールの探求上は興味深い事例だが、自分のプレイスタイルを位置づけるには考慮しなくてもよい。しかし、カジュアルプレイヤーから見て、凝るプレイヤーが姑息なプレイヤーに見えるという指摘は重要である。

例えば、ゲーム仲間の間で一目置かれている筋金入りのゲーマーであるプレイヤーは、姑息に思われるかもしれない。なぜなら、気楽に遊ぶプレイヤーと一緒に遊ぶときでも、競争する気満々の「パワーゲーマー」だからだ。(『ルールズ・オブ・プレイ』上巻P.550)

本人はすごく楽しもうとしているのに「大人げな~い」「何、あいつ真剣になってんの」「ゲームなんだからもっと楽しそうにやればいいじゃん」などと冷ややかな目で見られる。ボードゲーム愛好者なら、そんな場面を何度も目にしたことが(あるいは自分がそう思ったり、思われたりしたことが)あるだろう。
逆から見れば、「もっとゲームに集中してくれよ」「ろくに考えないで適当な手を打つなよ」「ろくに勝ちも目指さないで何が楽しいの?」となるだろう。こうしてお互いにネガティブに相手を捉え、ディスり始めることになる。これがゲームの目的は勝つことか楽しむことかとか、勝敗重視かコミュニケーション重視かとか、ガチ勢かエンジョイ勢かとか、定期的に繰り返されている論争の正体である。
つまり、楽しもうとする心構えや、勝つことへの関心が違いすぎるために、プレイヤーのミスマッチが起こるということなのだ。
この解決策として、スタイルが違いすぎるプレイヤーとは卓を共にしないというは確かに手っ取り早い。しかし初対面では避けられないこともあるし、大都市圏でなければボードゲームをする人自体が少ないので選り好みもしていられない。TPOに合わせて、柔軟に変えられるのがスマートだ。
いつも遊ばないメンバーと一緒になったとき、軽く雑談をしながら、このテーブルで最適なところを探る。楽しもうとする心構えや勝つことへの関心をどれくらいにして臨むか。会話を楽しみながら軽く遊ぶかガチでいくか。そういう自己調整をして、メンバーも楽しませつつ自分も楽しめるように最適化するオールラウンドプレイヤーになれたらいいなと思う。

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