遺言(Last Will)


 心のタガを外して

会ったこともない叔父さんが亡くなったという知らせが入った。大富豪ながら家族も友人もいない叔父さんは、金の使い道を知っている親戚に遺産を与えることにしていた。遺言状には、決められた額を親戚に与え、その中で最も早く使い切った者に残りの財産を与えるという。そんなミッション、余裕じゃないか・・・と思って集まってきた親戚たちは思い知ることになる。破産するのも容易じゃないと。

そんなクレイジーな設定のチェコのボードゲーム。ドイツ語版が”Mankomania”であることでも知られる『ビバ破産!』のような双六かと思いきや、シビアなマネージメントが求められるゲームだった。イラストも20世紀前半のレトロな雰囲気を出していて格調高い。

遺言

毎ラウンド、中央のボードにコマを置いてこのラウンドのアクション数などを決める。獲得できるカード枚数、お使いできる下男の数、そしてアクション数、さらにプレイ順もこれで決まる。手番順が先になるほどカード枚数もアクション数も減り、カード枚数が多ければアクション数が少なく、逆にアクション数が多ければカード枚数が少ないというジレンマ。ここで軽くシビれる。

次に下男コマを置いてカードや拡張ボードを取ったり、不動産の価格を変更するフェイズ。ここはワーカープレイスメントで、先手番が圧倒的に有利。

そしてアクションフェイズ。手札からカードを自分のボードにカードを出したり、出ているカードを発動させたりして実際にお金をなくしていく場面だ。限られたアクション数の中で、どの組み合わせだとお金を一番使うか考える。もちろんコンボもあり。

カードは「劇場」や「船旅」など1回限りのイベントカード、何回でも使える浪費カード、シェフ・婦人・犬・馬など出費をかさばらせる同伴者カード、特殊能力をもたらす助力者カードなどがある。例えば同じ「船旅」でも、通常は2アクションで2ポンドしか消費できないが、犬と婦人とシェフと一緒に出せば9ポンドも消費できる。なんとも贅沢な旅である。

中でもカギとなるのが不動産カード。購入するのに大枚をはたけるが、これをもっている限り破産できない。不動産価格は徐々に下落していくので、安くなったときに手放すのである。ただし、管理費を払っていると不動産価格が下落せず、手放しにくい。どうせならば庭師を追加で雇うなどして、管理費を無駄に増やしておきたい。

誰かが破産するか、第7ラウンドの最後にゲーム終了。破産した人が複数いたら、一番負債の多い人が勝つ。

普段から無駄遣いに定評のある鴉さんが、序盤から追加アクションでどんどんお金をなくし1位。常識の逆を行くシチュエーションに大笑いしたが、節約を心がける心のタガが外れそうで怖かった。くれぐれも、このゲームが終わってからボードゲームのまとめ買いなどしないようにしたい。

Last Will
V.スーキー/チェコボードゲームズ(2011年)
2~5人用/13歳以上/45~75分
日本語版は、アークライトから『おかしな遺産』として2013年春発売予定

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