『ガールズ・アンダーグラウンド』

先月のゲームマーケットで『キャット&チョコレート』をリリースした川上亮こと秋口ぎぐる氏の新刊ノベル。ボードゲームがちょっとだけ登場する。

15年前、K市を中心として恐るべき“大感染”が起こった。やがて“重症者”が“軽症者”の上に立つという逆差別の社会構造ができあがる。ペーパーレス化が進む中、Bランク市民の少女・萌絵は古い印刷機を使い、アナログの地下新聞を作ることで反政府活動に加わる―。“閉ざされた世界”の秘密に少女たちが迫る、近未来サスペンス。

物語自体、テーマが深くストーリーもエキサイティングで一気に読んだ。逆差別という問題は多かれ少なかれ今の社会にも起こっていることであり、この本はそれをどうやって乗り越えていくかという示唆に富んでいる。
それはさておき、小説中に2箇所、ボードゲームの記述がある。ひとつは、近未来の学校では、ディベートやボードゲーム、カードゲーム、合唱、合奏、集団スポーツといったコミュニケーション能力を高めるための実習が行われているという設定。普通の勉強は携帯端末を使って家で行う。そんな世の中になっていくのかもしれない。
もうひとつは待ち合わせ場所にボードゲームカフェが登場するところ。飲み物とボードゲームを注文し、遊ぶふりをして人を待つ。著者によれば韓国のボードゲームカフェをモチーフにしているという。小説では、病気の症状に応じてSランクからCランクまで居住区が分かれているが、ボードゲームカフェは中間のBランク居住区にある。Aランクではボードゲームは子供のものと考え、Cランクはせっかちだから遊ばないというように、各居住区の様子がボードゲームの見方を通して巧みに描写されている。
小説アクア・ステップ・アップ』(安田均ほか、2001年)、『スコットランドヤード・ゲーム』(野島伸司、2006年)、『放課後の魔術師』(土屋つかさ、2008年〜)など、ボードゲームが登場する小説が少しずつ出てきた。ドイツの『小説カタン』や『カルカソンヌ運命の車輪』のように、ボードゲーム自体をモチーフにした小説が出てきてもよいと思う。

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