人生の賭けに勝利〜年間ゲーム大賞のデザイナー

(アウグスブルグ・アルゲマイネ誌 7月11日)
ライナー・クニツィアはゲームデザイナーである。彼との電話インタビューはまるでカヌーに乗っているかのようだ。彼は話しているうちにアイデアを秒単位で出してくる。「ボードゲームはシンプルで、ルールが短くなければなりません。目的とハードルがすぐに分かって、それでいて深いゲームにしなくては……」口角泡を飛ばす勢いだ。ライナー・クニツィアはアイデアの泉である。1年に50のボードゲームをデザインする。生まれはイラーティッセン、今は世界で最も有名なデザイナーのひとりである彼は、今回2つのヒットを飛ばした。彼のボードゲーム『ケルト』が2008年の年間ゲーム大賞を、電子機械を使った謎解きゲーム『誰だったでしょう?』が年間キッズゲーム大賞を受賞したのだ。

ライナー・クニツィアに受賞のお祝いをするのは電話だって容易ではない。数学博士の彼はロンドンのウィンザーに住んでいるが、職業柄世界中を旅行している。ちょうどオハイオ(アメリカ)の大きなゲームフェアから帰ってきたところだ。「4万人の訪問者がそこで新しいボードゲームを遊び、メーカーは新作を発表するのです。」とクニツィアはいう。

アメリカに旅行中だったため、年間ゲーム大賞の授賞式には残念ながら出席できなかった。ワシントンDCで乗り換えた後に帰りの飛行機が遅れて、彼に年間ゲーム大賞が手渡されるはずのベルリンに行く飛行機に乗れなかった。


『ケルト』はライナー・クニツィアのこれまでで一番成功したゲームである。人生一番のゲームといってもいいかもしれない。51歳の彼はこれまで何度も年間ゲーム大賞にノミネートされたが、今回ようやく大賞を射止めたのだ。「太鼓が鳴るような気分でした」と彼はいう。彼は人生の賭けに勝利したのである。80年代半ば、彼は銀行の仕事がうまくいっていたのにゲームデザイナーになるため辞めてしまう。当時彼はロンドンのハイポ銀行の子会社で取締役を務めていた。意図的に彼はこのキャリアに終止符を打ったのだ。中途半端を知らない彼である。「答えはひとつ、銀行かボードゲームか。」振り返れば答えは正解だった。「私は自分の仕事を楽しんでいます。人生を満たしてくれるものです。」という彼に、聞く人はみんな納得する。

ライナー・クニツィアは人生をボードゲーム世界に賭けてきた。その意味でボードゲーム中毒患者である。彼の家のキャビネットには世界中のダイスがいっぱいだ。6面、9面、12面、20面、50面といろいろ。何千ものコマは赤、緑、青、木製、プラスチック製とさまざま。アトリエではコンピュータとレーザープレインターが動いており、秒速で厚紙にゲームボードを印刷している。そして毎晩ゲーム友達がやってきて新しいアイデアをテストし、ルールを破っては作り直し、クニツィアが発売したいものを試している。「この友人グループがなかったらうまくいかなかったでしょうね。」

ボードゲームを発売するには、企画、ルーチン、チームワークが必要だ。まずは創造的なアイデアから。そしてルーチン化された仕事が始まる。アートデザイナー、イラストレーター、メーカーと一緒にライナー・クニツィアはボードゲームを制作する。それから友人グループで200〜300回のテストプレイ、議論と変更、最後にメーカーとの交渉となる。ゲームが発売されるまでは2〜3年かかる。

イラー川での孤独からアイデアを生み出す
チームでの仕事があるにもかかわらず、新しいゲームのアイデアは孤独から生まれる。かつて地元クラブの選手でもあった彼がアイデアを思いつくのは、緑色のアリーン川に沿ってウィンザーからアスコットまで長い散歩をするときだ。あるいは故郷シュヴァーベン地方でジョギングすることもある。というのも彼は年に2〜3回、イラーティッセンの両親とイェーデスハイムの姉を訪ねるからだ。イラー川のほとりを走って楽しんでいる彼は、クロスカントリーをしていた子ども時代に戻っている。

コンピューターを仲間として認める
ライナー・クニツィアはそれ以外普通の人と同じく仲間とおしゃべりして時間をすごすのが好きだ。コンピューターゲームとの競争にもかかわらず、ボードゲームの将来は不安ではないという。「人々はほかの人と一緒に同じテーブルにすわってワインを飲むのが好きなものです。」と彼はいう。人々は遊ぶことにのみ楽しみを見出す。この楽しみを喚起するため、クニツィアはコンピューターを仲間として認める。彼は任天堂DSソフト『論理コーチ』を開発した。プレイヤーはシドニーのオペラハウス、リオのカーニバル、アステカの遺跡で問題を解く。そうすることによってこのゲームは好奇心を喚起し、記憶力と思考力を鍛える。

電話口でライナー・クニツィアは慌て始めた。秘書がコンピューターをタイプする音が聞こえる。クニツィアはオハイオのゲームフェアの情報を片付けたいようだ。それから友人が新しいアイデアのテストプレイにやってくる。「食事は合間に済ませます。我々は簡単な料理をアトリエで作るのです。」最後に早く寝たいと願う。「時間の後れを取り戻すためにね。」彼は疲れた様子で、でも楽しげに語る。彼が朝4時に起きると―よくあることだ―、再びコンディションが整っている。新しいアイデアのためのコンディションが。

ミヒャエル・ケルラー イラーティッセン/ウィンザー発
Augsburger Allgemeine:Gepokert und gewonnen: Der Erfinder des Spiels des Jahres

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