プレス会合(Presse Konferenz)
今年は24ヶ国から686団体が出展し、新作も350タイトル以上と記録更新したことが発表された。ついでドイツゲーム賞のサンクトペテルブルグ、ドイツ子どもゲーム賞の墓場の吸血鬼が紹介され、最後にゲーム専門委員会から売り上げなどの総合的な情報が発表された。午前11時から1時間。
それから各部屋に用意された新作を記者が順々に訪ねる。アミーゴのように1部屋使って展示するところもあれば、テーブルの一角で紹介している新規中小メーカーも。日本からは頭脳スポーツ協会が出展していた。ここであらかたの新作を目にしておけるのは、4日間を効率的に回る上で非常にありがたい。
写真は墓場の吸血鬼のコーナー。みんなツォッホの社員とその子どもたちだと分かったのは後のことである。
授賞式(Preisverleihung)
ドイツゲーム賞は10位から発表され、デザイナーとメーカーのの人が壇上に上がる。写真は4位までの受賞者。後ろの列左からデイズオブワンダーの方、ムーン、シャハト、アバクスの方、クラマー、カサソラ、ブルンホーファー、クニツィア、手前にコロヴィーニ、フリーゼの各氏。愛好者だったらこのシーンを見て興奮しないはずがない。一緒に来ていた一階さんは席に全く戻らずに写真を撮りまくっていたので、取材に来たテレビに映ったらしい。
1位のサンクトペテルブルグではメーカー兼デザイナーでブルンホーファー氏が登壇。そのほかにもアッティカとゴアが入賞しており、壇上から降りる暇がないほどだった。
それからフェアプレイ誌の記者バルチ氏と語らいながらいろいろな疑問をぶつけていると、次々とデザイナーを呼んできてくれた。ゲームのオリジナリティ問題はカサソラ、SAZ(ゲームデザイナー連盟)のことはマイアー、ゲームデザインの量と質についてはクニツィアに訊くことができた。このところ多作ゆえに質の低下もしばしば指摘されるクニツィアだが、「クニツィア・シュピーレ」は誰かを雇っている訳でもなく、一人でやっているとのことだった。
結局お開きになったのは4時間後。もうすっかりお祭気分である。
カタン世界大会(Catan Weltmeisterschaft)
2日目の準決勝では吉田氏と高橋氏が順位の関係で同じ卓になることに。決勝に進出できるのは各卓1人だけ。熾烈な戦いの中、高橋氏が1位、吉田氏が1点及ばずの2位となった。高橋氏、決勝進出。これによって吉田氏は8位入賞となった。
決勝はイタリア、デンマーク、スコットランド、日本という顔ぶれ。少しのミスも許されず、ダイスが運命を握る非常に高いレベルの戦いとなった。高橋氏は10点まであと一歩と迫ったが鉄1枚の差で及ばずに試合終了。9点でデンマーク代表と並んだが、予選成績で3位。それでも昨年の渡辺氏を超える日本人最高位となった。2位はデンマーク代表のソレンセン氏。
優勝したのはイタリア代表のフェラーリ氏。ミラノの大学で経済学を勉強している大学4年生だ。カタンを買ったのは2年前だが遊んでおらず、ミラノ大会に合わせてルールを覚えたという。それがイタリア大会も勝ち進み、あれよあれよという間に世界チャンピオン。本人も信じられない様子だったが、対戦した高橋氏によれば「押さえるべきところを感覚でわかっている。」ボードゲームはあまり遊ばないが、ブリッジは週3回遊んでいるということで、感覚は研ぎ澄まされている。
高橋氏はモノポリープレイヤーでカタン歴は7年、さすがにゲーム勘が鋭い。しかし予選では手が震えてしまって、頭脳スポーツ協会の投扇興ブースで扇を投げて精神統一、蓬生が2回出たので流れを感じたという。なお、高橋氏は投扇興も浅草・伝法院大会で上位に入る一流プレイヤー。今回のエッセン出展も高橋氏のアイデアによるものだった。「こんなの絶対あたらない」といらつくドイツ人に、その技を大いに見せつけていた。
さてメダリストがカタンのデザイナーであるK.トイバー氏と囲むエグジビジョン・マッチはチャンピオンのフェラーリ氏がまたもや勝利。トイバー氏のプレイは、世界大会上位者と比べるとさすがに見劣りしたという。トイバー氏と3位・4位でつぶしあうという割を食った高橋氏は4位。「そこまで考えてゲームを作っていたんじゃなかったんだなと(笑)。」
「日本には無名ながら私よりもっと強い世界クラスのプレイヤーがまだまだいます。」運に左右されることもあるとはいえ、今後の世界大会も日本人の決勝進出者が出続け、世界チャンピオンが生まれる日も遠くはないだろう。
日本からの出展
日本からは遊宝洞が昨年に続いて2年目の出展。100個用意したフェアリーテール15ユーロは入場者が少ない木金の2日間で全て売り切れ、注目度の高まりを物語っている。今年は前もって英語の紹介ページをウェブに作り、それがドイツのサイトでも紹介されていたことからここを目指してやってくる愛好者がいたようだ。
それから大大阪のホビースペースは、50ユーロという高額の価格設定にもかかわらず20個中半数以上というまずまずの売れ行き。ちょうど隣りのホールで行われていたコミックアクションから流れてきた客が、本場のマンガに触れたくて手に入れたケースもあるという。
スタッフの旅費、ゲームの輸送費、ブース使用料を考え合わせれば日本から出展して黒字になることはほとんど不可能といってよい。しかし世界中のボードゲーム関係者と愛好者が一堂に集まるこの機会にゲームを紹介できることは、お金に換算できないメリットがある。3年は頑張るという長期的視野をもって、今後もエッセンを目指す国内メーカーが増えてほしい。
取材陣ではオフィス新大陸、冒険企画局、ゆうもあなどが取材をし、特にカタン世界大会は日本人のための大会と化していた。メビウス、バネスト、広島も精力的に情報収集をしており、今後少しずつ日本に輸入されてくるだろう。日本からメーカー関係者も視察に訪れていたようで、このゲーム祭を足がかりにした日本ゲームの発展が大いに期待される。