ニュルンベルク玩具見本市2008~ゲーム編(2)
魔法みたい!|ホルス|バタヴィア|ブロックス|ミイラの呪い|ヴィネタ|サメ警報|ウィンドリバー
魔法みたい!(Wie verhext! / A.ペリカン / アレア, 2008)
アレアの最新作はこれまでにないシンプルさを出したという小箱のカードゲーム。作者は『魚河岸物語』のペリカン。例年ならここで大箱が発表されるのだが、ドイツ販売がハイデルベルガーに移された影響からか『ドラゴンイヤー』は昨年のうちに発売されている。一般大口が主な対象であるニュルンベルクでは仕方のないことかもしれないが、アレアの影がやや薄い気がした。
各自12枚の職業カードから自由に5枚を選んで手札にする。目的は魔法のレシピを作って得点を挙げることで、職業には材料を取る、材料からレシピを作る、そのほかの魔法の道具を取る、呪文を唱えるなどさまざま。
これらを1枚ずつ出して行動を行うのだが、ポイントは職業がほかの人とかぶった場合。後から出した人が優先され、前に出した人は効果が小さくなってしまう。後手番の人は前の人の心理を読んで、つぶしに行こうとするだろう。そうなると前手番の人はほかの人にかぶらせられないよう、裏をかいて出さなければならない。お互いが今どの材料をすでに集めていて、どれが足りないのかを考えながら出すのだ。
職業カード・呪文カードにはテキストも多いがアイコンで見分けられるようになっている。アレアらしく読み合いの熱いゲームだ。
ホルス(Horus / J.ヴァネーゼ / アミーゴ, 2008)
タイルを並べながら陣取りをするゲーム。『カルカソンヌ』のように袋からタイルを引いて並べ、自分のコマを置いて領有を主張する。タイルは4種類の地形と川からなり、地形を広げたり川で区切ったりしながら土地を広げていく。
『カルカソンヌ』との違いはタイルを半分ずらして並べてもいいところ。これによって複雑な地形が生まれる可能性がある。また隣接するタイルによって土地の肥沃度が変わるので、得点が増える土地を作れるかがポイントとなる。そしてドイツゲームの王道とも入れる多数決方式の陣取り。戦略的な戦いが楽しめるだろう。
バタヴィア(Batavia / D.グリム、G.レヒトマン / クイーンゲームズ, 2008)
ジャンボの『モダンタイム』のリメイク。もともとスウェーデン人のグリムの作品だが、『ウボンゴ』の作者であるポーランド人のレヒトマンが協力してテーマとルールともに作り変えた。スウェーデンとポーランドというと遠い国のように思われるが、お互いの家は車で12時間かければ行けるという。
変更点はタイルは10枚が表になっており、少し進むごとに5枚ずつ表になる点。適度に先が読めるようになり、戦略性が高まっている。タイルとカードの二重の多数取りに競りが花を添える寡作だったが、評判はいまひとつだった『モダンタイム』。コンポーネントも豪華になって、魅力的に生まれ変わったといえよう。
ブロックス(Blox / W.クラマー, H.ラガン、J.グルナウ / ラベンスバーガー, 2008)
建物を建築したり破壊したりしながら得点するゲーム。クラマーの作品で、シンプルなゲームに属する。テーマを設けていないのも、軽いゲームであることを強調するためであろうか。
手順は簡単。カードで対応する色のマスにコマを移動し、カードで対応する色の建材を建築する。うまくカードの色が建材の色と合って建てられれば得点。
破壊も同様にコマを移動し、対応する色のカードを出して行う。建築も破壊も高いほど得点が高い。
最初は1~2段の制限があるが、ラウンドが進むにつれて高い建物も建築できるようになっていく。カード運次第の面もあるが、建築しやすい場所、破壊しやすい場所の位置取りが勝敗を分けるだろう。
ミイラの呪い(Fluch der Mumie / M.A.カサソラ / ラベンスバーガー, 2008)
ミイラ1人とほかの人が探検家で、位置を探りあいながら追いかけっこをするゲーム。ゲームにはテンションが大切だと説くカサソラらしい、ドキドキワクワクのゲームだ。
ボードを箱に立てミイラ役の人はあちら側、探検家役の人はこちらにすわる。マグネットのコマがボードにくっつき、お互い同じ迷路を行ったり来たりする。
ミイラの位置は探検家に分かるようになっているが、探検家の位置はミイラに分からない。ミイラ側は探険家の移動を推理しながら探し回る。一方、探検家はミイラの移動パターンを読みながら裏をかいてピラミッドから逃げ出す。どちらの側でもアナログゲームならではの盛り上がりを味わえるだろう。
ヴィネタ(Vineta / F.オンサ、M.ギブリン、M.ミヤジ / ウィニングムーヴズ, 2008)
街区が次々と沈んでいく都市で自分の民を守る大箱ボードゲーム。ブラジル人のトリオがフランスのゲームコンテストで賞を取り、そこに国際的に展開するウィニングムーヴズ社が目をつけて製品化されたという。作者の一人ミヤジ氏は日系。
『ドルンター・ドリューバー』のように予め担当する街区が定められ、そこをひそかに守ることがゲームの目的になる。外側の沈みやすい街区ほど得点が高い。沈んだ街区はボードから取り除かれ、残った中で海に面した部分が次の標的になる。
ほかの人の街区を推理しながら、また自分の街区を悟られないように人を配置していく読み合いが面白い。
サメ警報(Hai Alarm! / J.ゼメ / ドライマギア, 2008)
『ごきぶりポーカー』のゼメによる新しいブラフゲーム。目標はほかの人より3枚多くサメを公開するか、7枚のイルカを公開すること。
手番には手札から1枚裏にして出すか、裏にして出したカードを表にする。相手のカードをめくってイルカだったらゲットできる。どちらの勝利条件を狙っているかがブラフのかけどころ。どんどんサメを仕込んで一気に勝つか、イルカを集めて勝負するか。
『ごきぶりポーカー』もそうだったが、ルールを聞いただけでは何が楽しいかよく分からない。遊んでみて初めて駆け引きとブラフがあることに気づく。
今度も絵柄が1枚1枚違っていて楽しい。手軽に遊べるカードゲームだ。
→メビウスおやじさんのブログ:サメ警報
ウィンドリバー(Wind River / D.リーケンス / アルゲントゥム, 2008)
数少ない小企業からの参加となったアルゲントゥムが、今年の秋に発売を予定している作品。牛の群れを進めながら、適切な位置にテントを建てて食料を確保するゲームである。
牛は前にしか進めない。そしてテント1つにつき牛1つが必要。余分に牛を確保できれば食料としてストックでき、テントに牛が来なかったときに調達できる。牛も食料もないテントは除去。こうして牛がボードを全部渡り終わったときに、残ったテントの数で勝敗が決まる。
牛はやがていなくなるから、それまでにどれくらい余分な食料を確保できるかがテント維持のカギ。牛の進め方を交渉して、共存共栄の道を探らなければならない。そのためほかの人とうまく絡めるようなテントの位置取りを考える。ダイナミックな陣取りゲームである。