ニュルンベルクの新作が一気に発売になった。ニュルンベルク玩具見本市は2月の初頭に開かれ、そこで見本が展示されるが、製品は4月始めまでに発売しないと、年間ゲーム大賞の選考対象にならない。そこで各メーカーが急いで発売するのがこの時期なのである。1年のうちでは、エッセン国際ゲーム祭が開かれる10月に続いて、4月はたくさん発売される時期である。
発売されるや否や、国内の輸入代理店も一斉に動き出す。今回、私はかねてより注目していたタイトルを個人輸入したが、早くも同じタイトルを発売しているお店もある。競争原理がはたらいているためか、数年前よりも速度が上がっているのは確かだ。下記のタイトルも、もう発売されているか、間もなく発売されるだろう。ドイツとタイムラグなしで遊ぶことができるのはとても幸せなことだと思う。
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賽は投げられた(alea iacta est / J.アラーズ、B.アイゼンシュタイン / アレア, 2009)
フリークから人気を集める余り、売り上げが伸びずに親会社のラベンスバーガーに呑み込まれそうになっていたアレアブランド。昨年の『魔法にかかったみたい』が日本ボードゲーム大賞に選ばれたとき、社長のブリュック氏は「これからもライト路線で行きたい」とコメントしていた。フリークは不服でも、ライト路線のほうが数は売れるのが現実である。
社名のアレア(ダイス)を冠したこのゲーム。昨年のエッセンでは珍しく新作がなかったので、1年ぶりの発表ということもあってとても注目された。名言「賽は投げられた」を残したカエサルが、本当にダイスを振る。
自分の番には8つのダイスを振って、5つの建物のどこかに置く。次の番には残ったダイスを振って、またどこかの建物へ。こうしてダイスを配置していき、それぞれの建物で得られるチップやタイルを得点にするというゲームである。
5つの建物は置き方に縛りがある。連番で置く「元老院」、ゾロ目で置く「お城」、小さい順に並べて大きいものは追い出される「フォーラム」など。でもダイス目だけで判断してはならない。それぞれの建物でもらえるものをバランスよく集めていかなければならないからだ。
誰かがダイスを全部置いたら、最後の人まで続けてラウンド終了となる。そして建物ごとに、ダイスを多く置いた人、大きい(小さい)目のダイスを置いた人からチップやタイルをもらえる。建物によっては上位2名しかもらえないところもある。
基本は「お城」で手に入る属州タイルと、「フォーラム」で手に入る貴族を集めること。属州には、同じ色の貴族が男女2名まで入植できる。誰も入植しなかった属州、入植する属州がなかった貴族は点数にならないから、マッチングさせながら集めていく。ほかの人はそれを取らせないようにダイスを配置するから、駆け引きがある。
「元老院」のタイルは、特定のものを集めるとボーナスになるというアレアらしい趣向。先にこのタイルを取って集めるものの方針を立ててもいいし、このタイルばかり狙って、コンボを決めてもいい。
属州と貴族をバランスよく集めていた私だったが、となりでひたすら元老院タイルを集めたPsy+さんがコンボで得点を重ねて1位。チップ・タイルは5種類しかないが、いろいろな集め方ができて、それぞれ戦略が変わってくるのが面白い。また、「誰かがダイスを全部置いたら、最後の人まで続けてラウンド終了」というルールで、たくさんダイスを置いて一気に終わらせるか、ちびちび置いて広く集めるかの考えどころがあるのもよい。「彼はあと2個しかないから、1周か2周か。1周ならここに置いたほうが得だが、2周するなら……」ダイスの出目は運だが、それをどう生かすかは戦略的思考である。
アレアのブランドに期待される切れ味はいまひとつという感じがあるが、ダイスゲームとは思えない駆け引きも戦略があって遊び応え十分だった。
ボンベイ(Bombay / C.デマージ / イスタリゲームズ, 2009)
象に乗って絹のベールを仕入れ、街で売ってお金を儲ける商売ゲーム。アレアと並んでフリークの人気が高いフランスのイスタリ社も、ニュルンベルクではライト路線を掲げる。ただし、このメーカーのライト路線は、『メトロポリィス』然り、ルールが多くないというだけの話であり、決して易しいゲームではない。偶然の要素が少なく、公開情報が多くて、いわゆるガチンコゲームなのである。先の先まで読まなければ勝ち目はないし、終盤は詰め将棋の如くである。
手番には3アクションポイントで移動、購入、売却、建設を行う。まず市場に行って仕入れ。象の背中にキューブを乗せられるというギミックで、2個まで運ぶことができる。街まで運んだら売却。そこで収入を得て、また新しい仕入先へ……これが基本。街に売却しないで、道中で宮殿を建てるという方法もある。宮殿を作ると、ほかの象が通るたびに収入が入るようになる。
面白いのは絹のベールに4種類あって、仕入れ値や売値が変わるところだ。ラウンドのはじめにランダムにキューブを引き、多いものは仕入れ値が安く、少ないものは高く設定される。キューブの総数が少ない黄色と紫は高騰しやすいが、売却するとボーナスがもらえる。
それぞれの街には需要マーカーがあり、需要が高いほど売値も高い。ところが、一度売ると需要は急落して売値も下がるので、同じものを続けて売っても儲からないようになっている。ここがゲームの一番のキモで、ほかの人が売って、需要が上がったところで売りに行くというような手番の後先を計算しなければならない。「あの象が次に青のベールを売るだろうから、その次に紫のベールを売って大儲けできるよう、ちょっと回り道してほかのベールも仕入れていこうかな。いや、でもそうするとこの象に先を越されてしまうか……」
販売するたびに街チップをもらえ、4枚以上集めるとボーナスがある。また、紫のベールを売ったり、需要がないものを売ったりすると顧客チップがもらえ、これと宮殿の数を合計して大きい順にボーナスが入る。これらのボーナスと現金を足して多い人の勝ち。
ほかの象をうまく利用して効率のよい売買を重ねつつ、ボーナスも稼いだPsy+さんが勝利。ほかの象と協力して、相場をどんどん変えるのも大事そうだ。私はそれができなかったためにアクションポイントを浪費してしまい、3位終了。
こちらもイスタリに期待されるオリジナリティはいまひとつという感じがしたが、先の先を読んで行動する深さがあって遊び応え十分だった。
お城でかくれんぼ(Schnappburg / C.フィオーレ、K.ハッペル / ゴルトジーバー, 2008)
7人の登場人物のうち、タイルの絵の中にないものを探してチップを取るゲーム。ゴルトジーバーの専属デザイナーが初めて取り組んだ子供ゲームだという。
お城の絵は、ただでさえごちゃごちゃしているのに、窓とか、隙間みたいなところにちょこっといるから見つけるのはたいへんだ。近視の人にはつらいが、見えるからといって取れるわけではない。人数を数えながら、同時に誰がいないかを把握するという、脳のトレーニングである。
途中で何かをつかんだようで、一気にタイルを集めたぽちょむきんすたーさんが勝利。私は2枚だけ取って、何とか恥をかかずにすんだが、正直頭が全くついていけなかった。