山形とつくばを日々往復する毎日、スケジュールを確認したらぽっかり空いていることが分かった。ということでテーブルゲームフェスティバルの前日に急遽、妻の実家にてゲーム会を企画した。今日の明日という急な日程の中、都合を無理につけて駆けつけてくださったお三方に感謝。おかげで長いこと遊びたかった時間のかかる新作をじっくり遊ぶことができた。
アフター・ザ・フラッド(After the Flood / M.ワレス / ツリーフロッグ, 2008)
洪水の後のチグリス・ユーフラテス川沿岸が舞台である。肥沃になった河岸にはメソポタミア文明が発達した。1ラウンド350年というスケールの大きいスパンで、王国の衰亡を描く。
『ブラス』と同様、各ラウンドの独立性が高い。1ゲームに3時間かかるが、初期条件を変えながら行われる5ラウンドは、まるで5ゲーム続けて遊んでいるかのよう。はじめに資源が配られ、それを元手に各地で交易し、ジッグラトの建設に必要な資材を集めると共に、適当なタイミングで建国して兵士で領地を侵略する。ジッグラトと領地で得点したら、兵士を全て取り除いて次のラウンドへ。労働者と資材は次のラウンドに持ち越されるが、兵士が全部いなくなって「国破れて山河あり」という状態から始めるので、劣勢でも十分立て直せるというわけだ。
手番には労働者の配置、交易、建国、侵略などから1つだけを行い、誰かがパスをすると『アミティス』のように残りの人はコストが高くなる。したがってどれだけ効率よく手を進めて早めにパスできるかがカギだ。特に交易は1手番で連鎖的に行えるので非常に頭を使う。こちらで布を金属に、その金属を道具にして、さらにその道具をあちらで瑠璃に。ジッグラトの建設に必要な資材は揃うか。兵士の増員に使える資源はどれくらい調達できるか。
その一方で、誰かが建国するとゲームが一気にダイナミックになる。兵士が入ってくると、ほかの人は交易ができない。そこで対抗して建国し、領地の奪い合いが始まる。戦闘解決は、な、何とダイス。装備力によって強さが少ししか変わらない(強いと2D5以上で成功、弱くても2D7以上で成功)のと、1つの領地に兵士が2人までしか置けない(最高でも2対2で戦う)のとで、運の要素は絞られているが、それでもダイスの生み出す爽快感がいい。
第1ラウンドでジッグラトを建設できなかった私が、残った資材を有効に活用して第2ラウンドでトップに躍り出る。次のラウンドへの元手をいくらか残しておくことも重要なのである。しかし次のラウンドに油断して建国が遅れ、国がつぶされてしまう。替わってふうかさんが大量の兵士で領地を占領し、兵士の数に任せてやられてもやられても次を出すという強さで逃げ切った。序盤で後退したkarokuさんは、最後の領地ボーナスでも追いつけず。
緻密な資材交換とダイナミックな戦争がミックスされ、総合的に楽しめるゲームだった。
ル・アーブル(Le Havre / U.ローゼンベルク / ルックアウトゲームズ, 2008)
フランスの港を舞台に、数多くの資材を数多くの建物で効率よく交換して得点にする。ローゼンベルクは『アグリコラ』がストラテジックな作品であるのに対して、『ルアーブル』はタクティックな作品であると言っている。場に出ている建物と、ほかの人の選択に応じて臨機応変に行動しなければならない。
プレイ時間は長いが、説明は『アグリコラ』ほど長くない。手番には毎回どこかに資材を補充して、好きな資材を1種類取るか、集まった資材で建物を建てるかである。建物は実にたくさんあるが、ほとんどがアイコン表示されており、また場に出てくるたびに説明できるので覚えることは少ない。時間がかかるのは、後半になるにつれて建物がどんどん建てられるので、どれを使ったらいいか大いに迷うからだ。
作った建物を、ほかの人が使うと使用料が入る。使用料はわずかなものだが、積み重ねれば馬鹿にならないので、状況に応じてみんなに使ってもらえそうな建物を選ぶ目も試される。苦労して資材を集めて建てた建物をたくさん利用してもらえるのは嬉しい。もちろん使うほうにもメリットはあるわけで、こういう随所で協力関係が生まれるゲームは大好きだ。
『アグリコラ』と同様、食料調達の苦しさがこのゲームにも引き継がれている。全員で7手番終了すると、全員必要な食料を払わなければならない。なければ借金。食料調達を楽にするカギは、造船所で作る船だ。これで毎ラウンド一定の食料が運ばれてくる。造船所は引っ張りだこなので、建てた人には相当のアドバンテージがあるだろう。
エッセンで評価がいまひとつだったのは、長期的な戦略がほとんど立てられない(その割に長い)という理由があるようだが、大量に仕入れた魚をどうさばこうとか、余ったレンガを何に使おうとか、その場その場の判断力が試されるよいゲームだと思う。
造船所を作り、船も3隻作ったkarokuさんが食料調達の労力を節約し、その分高価な建物を建てて1位。終盤まで資材を極力使わず、最終ボーナスで一気に追い上げたつなきさんは及ばず。牛肉だよりの私と、魚だよりのふうかさんはほかの建物に力を振り向けられなかった。建物の重要度がだいたい把握できたし、全然使わない建物もまだまだたくさんあるので、何度か遊びたいと思う。プレイ時間がネックだけれども。
自由都市(Municipium / R.クニツィア / バレーゲームズ)
手番には自分の手下を移動してカードをめくり、指示に従う。基本は多数決の陣取りで、得点計算が起こったところで手下を一番多く置いている人が市民コマを獲得する。4種類集めるとチップを1枚もらえ、はじめに5枚集めた人が勝つ。ポイントは得点計算が起こるタイミングだ。
ひとつは知事が巡回してきたときで、知事は時計回りに動いているのである程度予想できる。次に知事が訪問するところには手下を集めておきたいが、知事が通過してしまうとしばらくやってこないので、集めすぎてもいけない。
もうひとつは市民コマがいっぱいになったときで、いつどこで起こるかわからない。市民コマが3つになり次第なので、2つのところには手下を寄せておいたほうがよいだろう。
知事が回るか、市民を引くかはカードの指示だが、ある程度先を見越して行動しておくことはできるわけである。
さらに、各エリアには特殊能力がある。同数タイのときに勝てるとか、1つの手下が2つ分になるとか、ほかの人から市民を奪うとか、どれもうまく使えば逆転も不可能ではない。ただし特殊能力を取るにも最多であることが必要なので、こちらでも手下の振り分けがポイントになるだろう。
序盤から月桂冠を集め、同数タイでも勝てるようにしたkarokuさんが有利に進めたが、ふうかさんが無駄な市民を取らずに1位奪取。私はといえば同じ色の市民しか集まらず全く振るわなかった。
特殊能力が多いのはクニツィアらしくないが、変化に富んでいて楽しさもある。ボードの並びはさすがクニツィアという感じで悩ましい。