新作を追いかけるだけでもたいへんなドイツゲームだが、未プレイの旧作にさかのぼっていくとそのたいへんさは倍増する。中古業者のリストやネットオークションで数え切れないゲームに出くわしたとき、買うかどうかのひとつの基準になるのがメーカーと、デザイナーだ。今回はそんな風にして購入したやや昔のゲームを持ち込み。ゲームを単体としてみるだけでなく、メーカーやデザイナーの系譜に配置してみると、ひとつの歴史が見えてきて面白い。
サル仲間(Affenbande / A.トリープ / ハンス・イム・グリュック, 1988)
サルの数で果物を奪い合うゲーム。今年で創立25年を迎えるハンス・イム・グリュック社が、創立5年目に作ったゲームである。資金繰りが厳しかったのか、イラストもしょぼいし、チップの型紙もすこぶる抜きづらい。だが、シンプルなルールが生み出す駆け引きは現代に通じるものがある。
はじめに5種類の果物からほしいものを1つずつ選んで宣言する。ほかの人とかぶらないほうが手に入れやすいのは確かだが、あえてかぶらせなければならないこともある。
3つの果物が決まったら、手で隠してサルをビッド。それぞれにいくつ配分するかを決める。全員がビッドしたらオープンで、果物の種類別に一番たくさんサルをビッドした人がその果物をゲットする。その代わり、ビッドした半分のサルは捨てなければならない。その分後のラウンドのやりくりは苦しくなる。
最後には、種類を一番多く集めた人が1位になる。数を集められなくても、着実に全種類集めれば勝機があるというわけで、最終ラウンドは計算と読み合いが熱い。
序盤から順調に集めた月斎さんが、最終ラウンドでタナカマさんと私の猛追をかわして1位。終盤に集めなければいけないものがはっきりしていくにつれ、それをめぐる攻防が激しくなっていくのがいい。でもサルの数は減っていく一方。思い切った配分や、意表をつく配分が求められる。
コープ(Coup / W.クラマー / ASS, 1975)
名作で名高い『ホリデイAG』のもとになった作品。ゲーム内容はこちら。ルールはほとんど変わらないが、チップは無料ではなく購入できるところ(なので、儲からないと思ったら買わなくてもよい)が異なる。タイルに色と数字が書いてあって質感があるのもいい。余談であるが『ホリデイAG』のコマはすごく粘土臭いことで一部には有名である。
6人プレイ。人数が多いのであまり先の先まで考えることはできないが、短期的にはタイルの出し方を考える場面がある。同じ色を集中的に出せればその色のチップの価値が上がるが、早くから出していくとほかの人も同じ色のチップを買ってしまう。かといって出し惜しみしているとほかの人も置いてくれないというわけで、適度に誘いながら出していくことが必要になる。
最後にタナカマさんが置いたタイルで緑の大チェーンができあがり、緑のチップをがめていた私が大勝。終盤は相手のチップを見ながら得点の勘定を始めてしまうので重くなりがちだが、それならばチップを隠してやってもよいだろう。
バイキングの来襲(Die Wikinger kommen! / A.ランドルフ / ASS, 1996)
2人1組になって、エリアの占領をめざす陣取りゲーム。作者のランドルフはこのゲームを何度もリメイクしている。はじめに出たのが1976年の『トーナメント(Turnier)』、そして1984年に『クレーム(Claim)』、そしてこのゲームと続く。実に10年に1度は再販されていたというわけだ。
これは運の要素のない完全公開ゲームである。はじめに全部のコマを配置してから、敵に4つずつ取り除かれてスタートする。手番にはコマを移動して、敵のコマをはさんだら除去できる。こうしてコマが減っていって、1つのエリアに敵がいなくなったら塔を立て、規定数の塔を建てたら勝ちになる。
移動は縦横に1マスずつ移動するか、隣にコマがあれば飛び越えていくこともできる。連続ジャンプもできるので、思わぬ遠くから敵が飛んでくるのにも注意しなければならない。
はさんで取るときは、味方同士で相手のコマ1つをはさむか、ボードの縁に追い込んではさむかである。塔を使ってはさむこともできるが、逆に塔がはさまれて消えてしまうこともある。取るには相手のコマに接近しなければならず、したがって返り討ちにあう可能性も高い。先の先を読まなければならないというわけだ。
しむしゅさん+ふーさんと、月斎さん+私というチーム。月斎さんが好手連発する一方で、私はうっかり連発。鉄壁のフォーメーションで被害を最小限に抑えたしむしゅさんチームが終盤に数に物を言わせて勝利。プレイ時間90分。60分過ぎたあたりから目に見えて私の集中力が切れてしまったのが敗因か。ここまで頭を使う心地よさが残った。