いつもつくばにお越しくださっているmoonさんのゲーム倉庫でゲーム会。ブログでは拝見していたが、実際に入ると棚にずらりと並んだボードゲームに圧倒される。ざっと見て1500ぐらいあるだろうか。さらに驚くことに、ゲームはメーカー別などに整理されていて、ちょっと探せばお目当ては見つかるようになっている。ゲームが増えるとどうしても棚の奥につめてしまい、その存在を忘れてしまうことも少なくないが、全てのゲームが可視化されているところが素晴らしかった。
参加者はmoonさんのほか、今回は八王子から来た米出さん、近所にお住まいのストーンRさんと私。貴重なコレクションの中から予めリクエストして、最近話題のゲームを遊ばせていただいた。
ブラス(Brass / M.ワレス / ウォーフロッグ, 2007)
産業革命が始まったイギリスを舞台に工業を発展させるゲーム。昨秋の発売以来大きな反響を呼び、ポルトガル年間ゲーム大賞、インターネット投票のミープルチョイス賞3位、ドイツのゲーム会で人気投票2位とフリークに支持されている。ドイツゲーム賞に入る確率も高い。
ゲームはカードを出して、対応する都市に建物を作ったりそこから線路を延ばしたりするのが基本。カードを出すだけでなくお金もかかるので、収入と支出のマネージメントもある。序盤は資金が少ないので、借金はどうしてもせざるを得ない。どこで借金体質から抜け出せるかがひとつの鍵だ。
作れるのは港、紡績工場、船、炭鉱、鉄工所の5種類。港は紡績工場から綿製品を輸出するのに必要で、船は建設が難しいが高得点になる。炭鉱と鉄工所は石炭と鉄の供給に使われる。これらは建てるだけでは得点にならず、使ってもらわないといけない。ほかの人にも利用してもらえるよう、先に立地のよいところに作っておきたい。
建物以上に大事なのが線路(前半は運河)だ。これがあると自分の建物を作りやすくなるだけでなく、隣接する街に建物が増えれば増えるほど得点になる。建物も線路も先着順なので、ほかの人の動向を見ながら先手を取ることが必要だ。
ゲームは前半の運河時代と、後半の鉄道時代に分かれる。前半の得点計算が終わると運河と古い建物は除去されてしまい、本格的な産業革命を迎えることになる。前半から後半に引き継げるものは数少ないが、重要な布石になるかもしれない。
前半はほとんど練習ラウンドという感じで均衡したが、後半になってストーンR(赤)さんがいきなり船を2隻建造。船を作れる場所は3箇所しかなく、逆転不可能という空気が漂った。船争いに敗れたmoonさん(黄)は鉄道に集中する。これが奏功して1点差で逆転勝利。米出さん(紫)と私(緑)は借金体質から早めに抜け出して紡績工場を地道に作っていたが地の利が悪くて及ばず。もっと思い切った経営が必要ということか。
いくつかの得点パターンがあり、うまく連携させながらバランスよく取っていく方法もあるし、ひとつに集中して特化する手もある。それを毎手番ごとに、財布と相談しながらああでもないこうでもないと考えるのが楽しい。これ以外にも資材の運び方・買い方、前後半別の建築制限、遠方取引などたくさんの要素があってルール分量は多い(説明に45分要した)が、ゲーム愛好者の快楽ポイントをしっかり押さえてある。
パンデミック(Pandemic / M.リーコック / ズィーマンゲームズ, 2008)
世界中に蔓延する感染症を、協力プレイで撲滅するゲーム。品薄ということもあり、あっという間に売切れてレアゲームになっている(今秋再版予定)。『レース・フォー・ザ・ギャラクシー』と共に、アメリカ発のゲームが世界から注目されるという新時代の象徴と言えよう。
プレイヤーは世界各地を移動して、移動先のウィルスを除去していく。1マスずつ移動していってもいいし、カードを出して一気に飛んでもよい。うまく手分けすることが大事だ。
一方、一手番が終わるたびにカードをめくってその都市にウィルスが増える。3つを超えると大発生(Outbreak)してしまい、近隣の都市に拡散する。これが8回起きるとゲームオーバーだ。
どうして同じ都市に立て続けにウィルスが増えるかというと、大流行(Epidemic)カードが時々出てくるたびに、今までめくったカードが再び山札に戻されるからだ。このルールが秀逸である。大流行が立て続けに起こると、感染が起こりそうな都市を絞って対策を練らないと次から次へと大発生が起こってしまう。大発生の連鎖が一番怖い。
プレイヤーの目標はゲームオーバーになる前に特効薬を全種類作ること。そのためには同じ色のカードを集めて研究所に持っていかなければならない。特効薬ができた感染症は簡単に除去できるようになるが、世界中から撲滅させないと大流行の危険はなお残る。プレイヤーはそれぞれ、特効薬を作りやすい、ほかの人のコマを移動できる、ほかの人にカードを渡せる、除去しやすいなどの特殊能力を持っており、これらを相談してうまく組み合わせることが必要だ。
さて今回、最初はスタート地点に近い北米ヨーロッパで流行し始めたので急行するチームと、特効薬を作るチームに分かれた。青の特効薬は早いうちにできあがり、ヨーロッパはすんでのところで危機を免れるる。しかし今度はアフリカと南西アジアで流行の兆し。危険が多い黒の特効薬から作り始め、すぐ黄色の特効薬もできそうな状況になったので勝利の予感が漂う。ところがその直後、それまで大人しかったアジアで大流行。駆除隊はヨーロッパ近辺におり、アジアに向かう前にあっけない幕切れとなった。
moonさんによると勝率は中級(大流行カード+1枚)で25%くらい。ただしみんながゲームに慣れると無駄な動きをしなくなり勝率は上がるという。負けたほうがまた挑戦したくなるものだし、慣れれば勝率が上がるとあってはなおさらそうだ。時間も1時間未満と、繰り返し遊べる長さである。世界中でこのゲームの楽しさに感染してしまった人の多い理由がよく分かった。
ネフェルティティ(Nefertiti / G.モンティアージュ、J.バリオー、T.クエ / マタゴー, 2008)
入れ替わりの激しい市場から王女へのプレゼントを競りで手に入れるゲーム。マタゴー社といえば、『クロノス』、『ユートピア』と注目作をエッセンで発表してイスタリ社に次ぐ注目を集めているフランスのメーカーだ。今度はやや小箱で、ゲーム時間も45分と短め。
品物が並んでいる市場は常時3つ。このいずれかに自分のコマを置いてビッドする。3人がビッドしたとか、三目並んだとか、ビッドの合計が一定値になったとか、サイコロでその目が出たとか、市場によって違う条件を満たしたときに計算。品物がほしければ市場にお金を払い、お金がほしければ市場のお金の半分をもらう。得点計算が起こった市場は閉鎖され、代わりに新しい市場が開くという面白い仕組み。
手に入れた品物は、持っている人が少なければ少ないほど希少価値が上がって得点が高くなる。計算が起こる条件と、みんなが集めているもの、そして自分の持ち金をよく見ながらビッドする必要がある。
さらにゲーム進行を決定付けるのが8種類の特殊カード。これらは、市場で手に入れた紋章チップを使うことで好きなものを使える。その場で品物を得点に変えたり、ほかの人と交換したり、お金をもらったりとさまざまだ。適切なタイミングでこれを使えるかどうかが勝敗のカギになるだろう。
私が独占していた「孔雀の頭」をプラス3点の特殊カードでプレゼントして大量得点。ストーンRさんはこれに対して、品物をそこそこにお金を徹底的に貯め込む作戦に出る。市場のお金は一定だから、ひとりが貯め込むとほかの人はたちまち貧乏になってしまう。そこを見計らって買い叩きに走り、終盤一気に品物を集めた。ただ、私はその影響をあまり受けず、僅差で逃げ切り。こんな展開もあるのかとmoonさんは驚いていた。
コマの配置で競りを遅らせる場面が少なく、どの市場でもあっさり得点計算が起こっていたので市場ごとの特色はあまり出なかったように思う。それから特殊効果の威力が決まるとものすごいことになるあたり、やや大味な印象もある。だが相手の状況によってこちらのビッドも変わるところに選択の幅があり、今回のようなもの以外にもさまざまな展開が予想される。何度か遊んでみたい。
スニップ(Snip / A.ミューラー、M.アーノルト / M+Aシュピーレ, 2002)
自分の色の棒を盤の反対側まではじくアクションゲーム。M+Aシュピーレと言えばゲームの木『アルボス』が有名だが、このゲームも内容と不釣合いなくらいの豪華なコンポーネントが用いられている。
棒をはじいて転がし、平行な溝にはまれば成功。でもちょっとでもセンターがずれると棒は斜めになってボードの外に落ちてしまう。意外な難しさに、最初は笑っていたメンバーも次第に無口になっていく。みんなの棒が出てくると、お互い邪魔にもなる。そんな中をかいくぐってmoonさんが奇跡のショットで優勝。
M+Aシュピーレは今もエッセンに出展しているが、このゲームの後に新作を出していない……。
moonさんのレポート:千歳烏山ゲーム倉庫にて / 平日ゲーム会 (8/6)