ゲームマーケット直前でテンションが上がってきている今週、個人輸入のゲームを持ち込んで遊ぶ。後半には韓国のメーカーが売り出すゲームが持ち込まれ、さらに盛り上がった。
昼食は代表のタナカマさんと話しながらとる。その中で出たのがボードゲームでしっかりしたディベロッパーがほしいという話。ゲームマーケットなどから光るアイデアを見つけ出し、デザイナーとコンタクトを取りながらチームで1年くらいかけて練りこむ。その間にイラストレーターを探し、ゲームにぴったり合った箱絵やボードを作成。発売したら国内外に売り込む。会計まできっちりと。
モデルとしては実は社員が3人しかいないハンス・イム・グリュック、S.ブリュックが腕を振るうアレア、夜な夜なテストプレイを重ねているというイスタリのような感じ。日本にもグランペールやヤポンブランド、今度ゲームマーケットに出展するゼロページなどがあるが、国内ではボードゲームがマイナーということもあってまだまだ厳しい。
すぐれたアイデアでもイラストがショボかったり、コンポーネントがチープだったり、バランスが十分に練られていなかったり、家内制手工業で小部数しか販売されなかったりではそのまま埋もれてしまう。そんな玉を石の中から丁寧にすくい出して磨いてくれるチームはないものだろうか。
メトロポリィス
メトロポリィス(Metropolys / S.ポーション / イスタリ, 2008)
近未来都市を舞台に競りで陣取りをしていくゲーム。このところアレア以上に高い評判を得ているイスタリ社の最新作で、デザイナーは『イスファハン』のポーションが当たった。
各自持っている1~13の建物を効果的に建てて高得点を挙げるのが目的だ。スタートプレイヤーが好きなブロックに建物を置いてゲームが始まる。次の人はとなりのブロックにより高い建物を置くか、パスをする。その次の人はさらにとなりのブロックにもっと高い建物を置くか、パス。このような競り形式で建物を置き、残り全員がパスしたときに一番高い建物だけが確定する(競り負けた建物は手元に戻る)。誰かが建物を全部建てきるまでこの繰り返し。
ゲームが終わったら得点計算である。建物を建てたときブロックに置いてあるチップと、予め配られたミッションカードによって得点になり、合計が多い人の勝ち。「流行のブロック」と「メトロ」のチップはプラスだが、「発掘現場」のチップはマイナス点になるので注意しなければならない。上級ルールではミッションがちょっと複雑になり、エリアごとの得点計算もあるが基本は同じである。
ゲームが進むにつれて建物が増え、袋小路が生まれる。となりのブロックが全部埋まっている場合、ほかの人はもう建物を置けないので自動的に勝利になる。これを利用して低い建物を使うのだが、その際誰がスタートプレイヤーかがとても重要。1マスしか空いていないところができれば、前の回に無理しても高い建物を建ててスタートプレイヤーを取るのがよい。こうした順番の駆け引きがあって面白い。
序盤は「流行のブロック」を高い建物で奪い合う展開。私はいつも序盤に突っ込んでしまう癖があるので今回は後出しでいこうと思ったら、まともなところに建てられなくてダントツの最下位だった。序盤はいろいろな選択肢があるので気楽だが、後半になるにつれて選択肢が減り、抜け目なく戦わないといけなくなるので皆無口になっていく。詰め将棋をやっているかのような雰囲気が好きかどうかが、このゲームの評価の分かれ目になるだろう。ドイツ年間ゲーム大賞のノミネートは十分ありえる。
チェンジホース(Change Horses / B.ホワイトヒル / エッゲルトシュピーレ,2008)
ひそかに指定された自分の馬を最下位にするというひねくれた競馬ゲーム。エッセンで『ハンブルク』と『キューバ』を出し注目を集めているエッゲルトシュピーレだが、これは軽めのパーティゲームといったデザインである。
まず配られるのが馬のカード。これで自分がどの馬を担当しているのかこっそり確認する。あからさまな行動を取ると皆から邪魔されるのでブラフを使ってうまく隠しておかなければいけない。
3枚カードを選んで手元に並べてから、カードを出す順番を決める。初級ルールではランダムに順番を決めるが、このゲームは順番が非常に意味をもつので、はじめから上級ルールで競りで決めたほうがよいだろう。あらかじめ配られた人参(使いきり)で競りを行う。
全員が1枚ずつカードを出したら馬が走る。カードには2色の馬が描かれていて、全員が出したカードで馬の数を数え、偶数なら進まず奇数なら進むというところがポイントだ。最後の人が出すカードによって馬がたくさん進むか全く進まないかが分かれる。だから順番が非常に意味をもつというわけだ。
馬を進めたらまた順番決め。今度は手元の残り2枚から1枚を出すので選択肢は狭いが、前のラウンドで出したカードに合算するので進み方が激しい。競りも白熱するだろう。
カードを出して、馬を進めたら、手元のカードを3枚まで補充する。場に出したカードを捨ててまた順番決めを行う。これを繰り返すうち、いずれかの馬がゴールに入ったらゲーム終了。13マスしかないので展開はかなり早い。そこで馬のカードをオープンして、最下位だった馬の馬主が勝利となる。
このほかにゲームを左右するのがジョーカーカード。各自2枚もっており、出されたカードを無効にしたり、コースを変えて後ろの馬を進めなくしたり、後ろの馬を進めたりできるが、このゲームのタイトルにもなっているチェンジホースで馬のカードを替えられるのが最大のポイントだろう。自分の馬がゴールしそうになったらチェンジホース。
ほかの人のカードを見ながら順番を考えたり自分が出すカードを考えたりという面はあるが、ジョーカーカードの効果からも分かるとおりアメリカンなパーティーゲームといった趣きである。序盤に自分の馬を思いっきり進ませておいてノーマークにしたしむしゅさんが、最後の手番でカードをうまくつかって勝利。私も同じようにノーマークにする戦術だったが、最後の手番まで人参を多く使いすぎてラストスパートがきかなかった。
魔法にかかったみたい(Wie verhext! / A.ペリカン / アレア, 2008)
12のキャラクターを使って魔法の材料から飲料を作り点数にするカードゲーム。昨年中に『ドラゴンイヤー』を出したアレアが発表した久々の中箱サイズで、難易度もアレアにしてはかなり低く、家族向けでも差し支えないぐらい。
12のキャラクターは5種類に大別される。3つの材料を集める者、その材料から飲料を作る者、材料とお金を交換する者、皆から材料やお金を盗んで点数にする者、呪文で得点にする者。カードにはテキストがあるが、すべてアイコンで示されているので問題はない。
これらの12枚から5枚だけを選び、手札にする。そしてスタートプレイヤーから好きな1枚を出していく。ここからトリックテイキングのように、同じキャラクターをもっている人はカードを出さなければならない。そして権利を奪うか、半分の権利で妥協するかを宣言する。権利を奪う場合、さらに下家から同じキャラクターが出るとその権利を奪われてしまうが、半分の権利で妥協すればすぐに行使できる。
カードを出すときは「私は○○です。△△します。」と宣言して出すのがルール。「私は狼使いです。狼の血3つくだせえ」「私が狼使いです。狼の血1つでもええです」「パス」「私が狼の使いです。狼の血3つくだせえ」というように。後出しが勝ち。手番が最後なら堂々と権利を奪えるが、その前だと奪うか妥協するか悩ましいところだ。
そういったわけでほかの人とバッティングしないように、キャラクターの選択からすでに悩ましい。そしてバッティングしても最後の手番で権利を奪えるように、カードを出す順番も悩ましい。ほかの人のお金と魔法の材料をにらみながら、次に何をしそうか予想して行動しなければいけない。
私は裏目に出ることが多くてなかなか得点を集められない。ずーあーさんも厳しい場面でつっぱったり、折角取った権利を活用できなかったりして苦しんでいた。とはいえ権利の奪い合いがゲームを盛り上げ、腹の探りあいが面白さを引き立たせる。リソース交換と秘密職業選択というドイツゲームの粋を、トリックテイクというシステムを使って非常に分かりやすくまとめてある。これはすごい作品だと思う。
ジェムブロ(GemBlo / J.オー / DGゲームズ, 2005)
自分の色のコマをできるだけ多くボードに敷き詰めるゲーム。韓国でゲーム賞を受賞しており、エッセンにも出展された作品だ。
基本は『ブロックス』と同じ。マスが六角形なので角で接することができないから、一辺だけ離しておくというルールになっている。そこにほかの人が通り抜ける余地ができるというわけだ。ややこしそうなポイントにコマがピッタリ収まったときの爽快感がいい。
でも後半には置けないパターンがどうしても多くなる。そこで各自2枚の特殊カードを持っており、自分のコマがとなりあってもよいとか、一辺ではなく1マス離れてもよいなどの置き方もできるようになっている。
タナカマさん(透明)があちこちに広げて置ける場所を増やし1位。難易度の違いだけで『ブロックス』とプレイ感は変わらないが、最大のメリットは6人でできるということだろう(3~5人でもできる)。六角形のボードに角から6色の宝石が広がっていくさまは見ていて美しい。
アキランティス(Akillantis / ? / ダンシングバオバブ, ?)
宝石を売買してお金を儲けるボードゲーム。ゲームマーケットで出展する韓国ブースの筆頭に挙げられている。メーカーのページでは楽しそうに遊ぶ親子の動画を見ることができる。アクションカードの記述が韓国語だが、アイコンで識別できるだろう。
はじめにカードを1枚ずつめくって競り。競り落とした人はカードに描いてある宝石やカードをもらう。これが手持ちのリソースとなる。各自2枚ずつ競り落としたら売買開始。島に置かれたカードを1枚ずつめくると、宝石の額が描いてある。これを見ながら手持ちの宝石を握って一斉に公開。指定された宝石では一番多く出した人にボーナスがある。宝石を売って、次のカードへ。アクションカードで宝石を追加したり、宝石を売った人から手数料を取ったりもできる。これを4回行ってお金の多い人が勝つ。
手持ちのリソースを決める競りではカードにずいぶん差があるため、初期条件に極端なくらいの開きが出る。宝石が少なくても4回の売買でうまく配分すれば勝ち目はあるだろう。1ゲーム20分くらいなので、何回か遊んでトータルで競うのがよさそうだ。