つくば自宅ゲーム会 07/12/20

つくば自宅ゲーム会 07/12/20

先月に引き続きエッセンの新作ゲーム特集。10月に開かれたエッセン国際ゲーム祭SPIEL’07は中・長時間ゲームが注目された。フェアプレイ誌の人気調査の1位には『イスファハン』(2006年)、『ケイラス』(2005年)、『ルイ14世』(2004年)、『サンファン』(2003年)、『看板娘』(2002年)というようにそれなりに手応えのあるゲームが並ぶが、『護民官』『アグリコラ』『ハンブルグム』『キューバ』と2時間超級のゲームが上位を独占するのは珍しい。ドイツゲームは『カルカソンヌ』ショックで00年代前半、ライトなファミリーゲームを主流にしつつあった。しかしフランスから新風を吹き込んだイスタリ社などによって、90年代後半のようなフリークゲームのトレンドを生み出しつつある。世界のゲーマーにとっては楽しみな時代が始まったようである。→moonさんのレポート

フィロー天空の巨人ハンブルグム護民官キューバ

フィロー(Filou / F.フリーゼ / 2Fゲームズ, 2007)

フィロー羊頭狗肉

よく確かめずに買い物をして失敗することをドイツでは「袋の中の猫を買う(Katzeim Sack kaufen)」という。これを日本にも一部に熱狂的なファンがいるF.フリーゼがカードゲームにした。福袋の中に入っているのは宝か、それともガラクタか。
 まずは1匹ずつ袋に入れていくフェイズから。手札から裏返しにして1枚ずつ並べる。全員並べたら、その袋の競りをスタート。全員が並べたカードをひとまとめにして、いくらで買うか値を付ける。
 競りから1人降りるたび、カードを1枚ずつめくっていく。そして袋の中身が当たりかハズレかじわじわと分かるようになるのだ。降りた人は場のお金をもらい、次の競りに備えることになる。残り全員が降りて最後に残った一人は、袋を全部開けて中身をゲット。また新しい袋を用意して、手札がなくなるまで続け、獲得したネコと持ち金の合計で勝敗を決める。
 妙に高い値を付けているからさぞ高価なネコを仕込んだのだろうと思っていると、実はマイナスポイントのドラネコだったり、一番点数の高いネコを追い払ってしまうイヌだったりとブラフが面白い。反対に自信がなく安い値を付けてほかの人に警戒させ、途中から一気に上げる手もある。
 3人で遊ぶ場合はダミープレイヤーがランダムに1枚ずつ仕込む。米出さんもmoonさんもポーカーフェイスを決め込むので全然手がかりがつかめないまま、手当たり次第に引き取っていたら撃沈。簡単なようでいて持ち金のマネージメントやブラフ返しなどゲーマーがニヤリとするポイントも押さえている。かわいいネコのイラストもあって、こんなに気軽に楽しめる競りゲームも珍しい。

天空の巨人(Giganten der Lüfte / A.ザイファルト / クイーンゲームズ, 2007)

黒ダイスで挽回だ

ゲーム概要はこちら。目標カードを手に入れるためのダイスは白から赤へ、赤から黒へとだんだん移り変わっていくので、どのタイミングで設備を変えるかは注意したほうがいい。早すぎても使うチャンスがないし、遅ければほかの人に持っていかれてしまう。設備の入手で出遅れた人も、早めに黒ダイスを手に入れるなどすれば逆転の可能性が残されているのがよい。
 今回は早めに赤ダイス、黒ダイスに手を出し、少ないダイスでどんどん上を狙ってみた。その積極策が功を奏し、怒涛のダイス目でヒンデンブルク号を完成。ダントツ1位。アッサリしすぎている感もあるが、それもダイスゲームの楽しさをダイレクトに残すものだろう。終盤は得点状況や終了条件を見据えての選択もあり、単純すぎず複雑すぎず、ダイスゲームとしてほどよく完成されていると思う。

ハンブルグム(Hamburgum / M.ゲルツ / エッゲルトシュピーレ, 2007)

教会はボクらの夢

中世のハンブルグを舞台に、商売で儲けたお金を教会につぎこむボードゲーム。『古代』と『インペリアル』と評価を築いてきたゲルツの新作は、得意とするロンデル(小円)による手番選択によってドイツゲームの王道である建設・陣取りに新境地を開いたものとなっている。
 中世の重要な商品であるビール、絹布、砂糖を生産し、船に載せて売り、儲けたお金で建築資材を買って、生産施設や教会を建てる。教会を建てるともらえるタイルによって得点を競うという分かりやすい流れになっている。
 ゲームの肝の1つ目はこのタイル選択だ。タイルには、ビール工場など特定の生産施設が得点になるもの、街区の建物数が得点になるもの、船が得点になるもの、そしてタイル枚数が得点になるものがある。どれを取って、そのタイルに合わせて自分の陣営を作れるかが勝負の分かれ目だ。ビール工場のタイルを取ったらひたすらビール工場を作って、ビールで儲けるという体制に。建物数のタイルを取ったら、種類を問わず手当たり次第に建てて街区を埋めるというように。ただし取るタイルは1枚だけではないから、複数の体制作りを同時に進めることになる。さらにほかの人の競合も見据えつつ、どれを優先して進めていくかは頭を使わないといけない。
 もう1つの肝は教会建築。各エリアで同時進行して建設されていく教会はパーツがあり、最初はレンガだけでよいものを、後になるほどコストが上がり、最後の仕上げにはレンガと材木と鐘(本当に鳴る鐘が入っている!)と、さらにお金までかかるのだ。一方資金源となる商品は、生産施設が増えるたび相場が安くなっていくし、船が作られるたび売れる数も減る。お金は計画的に使っていく必要があるだろう。全エリアの教会が建築されたらゲーム終了。タイルの得点を精算して、多い人の勝ちだ。
 中盤から米出さんが建物の独占などで有利に進める。一方、建物の種類を散らしてしまった私はエリアで勝負。なけなしの資材と資金でちびちびと教会を建て、無駄のないタイル選択で追い上げたが、潤沢な資金で先に教会を建てた米出さんが1位。「あ、そうか」「うわ、失敗した」などと独りごちていたmoonさん、エリア制圧の目論見をひっくり返されたヤクルトさんは得点が伸び悩んだ。
 プレイ時間は約2時間。考えるポイントはタイルの選択と、資材を生産施設に回すか教会に回すかの選択に絞られており、ゲームのテンポはとてもよい。それでいてほかの人の動向を見据えた行動選択もあり、インタラクションも富んでいる。やりたいことはいろいろあるのにやれることは限られているという苦しさに悶えて没頭。ボード裏面が英語版のロンドンになっているという芸の細かさにも感嘆した。

護民官(Tribun / K.H.シュミール / モスキート+ハイデルベルガー, 2007)

どの層からも支持されたい

ローマの勢力を支配して、その特権により勝利条件を満たすゲーム。シュミールは昨年のエッセン国際ゲーム祭でモスキートシュピーレのブースで試作品をテストプレイしていたが、それがようやく製品版となって発売された。『アッティラ』(2000)以来6年ぶりの新作である。そのため期待度はすこぶる高く、今年のフェアプレイ人気調査で1位に輝いた。
 ゲームはグラディエーター、パトリツィア、平民、元老議員など7つのグループの支配をめぐって進行する。支配するために必要なカードを入手して、公開し一番多ければ支配できる。支配することによって神の寵愛、地域、月桂冠、お金などが手に入り、予め与えられた勝利条件を満たした人の勝ちだ。
 順番にコマを置いて、カードの補充や公開の予約を取る。補充箇所は7箇所もあり、表になっているものをお金を出して買うところから、競りで手に入れたり手札と交換したりして手に入れるところまでさまざま。まるでデパートめぐりのようなこのバラエティがプレイヤー間の駆け引きやカードゲームならではの賭けを生み出している。
 公開の予約は各グループ2人まで。補充の後で公開になるので、補充は公開で競合する相手を見ながらの駆け引きがある。コマを置くところからもう、駆け引きは始まっているのだ。コマを置いたら、順番に補充して公開して、支配できたら特典を手に入れる。ゲームは勝利条件の数によって時間を調整できるようになっており、初級ルールは護民官、神の寵愛、地域、月桂冠、グループマーカー、お金のうちどれでも4つを先に満たせば勝ち。中級・上級になると獲得の難しい護民官が必修になったりする。ちなみに護民官はまず国書を手に入れ、貴族か元老議員を支配したことがある状態で平民かヴェスタリンを支配しなければならない。条件が幾重にも重なっていて時間もかかる。
 カードを揃えるため溜め込んでいる間に米出さんが速攻で勝利条件を満たして勝ち。最後のラウンドではヤクルトさんもリーチがかかっていたがぎりぎり及ばず。2人をマークしていなかったのであっけない幕切れになってしまったが、お互いに勝利条件の達成状況をにらみ合いながら、どのグループを取らなければいけないか、取らせてはいけないかを考えればもっと面白い展開になるだろう。やや複雑なグループの特典がほとんど頭に入っていなかったのでそこまでには至らなかった。再戦決定。

キューバ(Cuba / M.リーネック+S.シュタドラー / エッゲルトシュピーレ, 2007)

至るところに悩ましさ

キューバの街で農業を営み、産品を出荷して得点を稼ぐゲーム。2007年のベスト・フリークゲームとなった『大聖堂』の作者コンビが、近年どんどん力を付けているフリークゲームメーカー・エッゲルトシュピーレから発表した作品として注目され、フェアプレイの人気投票では4位に入った。その内容は、フリークが喜ぶシステムを目いっぱい詰め込んだ欲張りなゲームだ。
 各自5つの職業から1つずつ選んで手番を行う。労働者で資源や作物を手に入れ、商人で余った物を売ったり足りないものを買ったりして、市長で船に積み込み得点を得る。さらに建築家で新しい建物を建て、職人で建物を稼動して効率を上げる。これだけ聞くと『プエルトリコ』と間違えそうだが、職業の順番はほかの人に影響されず、自分だけで計画できる。非常に悩ましいのは、まず毎ラウンド4つしか使えないこと。全部使いたいところだが、何を使わなくても問題ないかを考えなければならない。さらに1つ残す職業は選挙で使い、4番目に使う職業は次ラウンドのスタートプレイヤーを決める。次のラウンドのことまで見据えた手番選びが必要というわけだ。何という高度なシステムだろうか。
 職業はたったの5つといっても、選んでから考えることも多い。労働者の場合、コマをマイボードに置いて縦横の列から資源や作物を得る。この位置は、建物の稼動にも関係するので悩ましい。あぁ、こっちにもそっちにも置きたい! 建築家を選ぶと、たくさんの種類の建物から選ぶのがたいへん。自分の方針に合致した建物を選び、さらにその建物に沿って新しい方針を組み立てていく。これぞゲーマーズゲームの悦楽。商人ならば残りのお金と相談しながら品物を売買しなければならないし、市長はほかの人よりも先に得点の高い船に積み込むことが必要になる。いったいどこまで悩ませる気なのか?
 まだある。毎ラウンド使わなかった職業で臨む選挙。これにお金(賄賂)を足して、票数の一番多かった人が法律をいじることができるのだ。法律には、税金の金額、物納の種類、補助金、その他の4種類があり、新しいのが成立すれば上書きされていく。お金が余っているなら税金を高くして貧しい人をいじめるなど、自分の状況にとって都合のいいように変えてしまう。序盤はほかの人と利害を一致させて不利な法律を廃案にし、方針の差が広がってくる後半は自分に有利な法案を通してわがもの顔で振舞う。そんなキューバらしい(?)展開が待っている。
 序盤にタバコ工場を作って葉巻を潤沢にしたところ、葉巻を積み込む船がどんどん入港してきて先行。moonさん、米出さんもタバコ工場で追いかけたが、スタートプレイヤーを取って逃げ切り1位。水コンボで戦ったヤクルトさんも相当効率がよかったが、モノカルチャー経済になりすぎたかもしれない。タバコ、ラム酒、水などに特化したコンボが組めるため、リプレイアビリティも高い。エッセンの新作では今のところ1番。

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