秋葉原水曜日の会 07/11/28

秋葉原水曜日の会 07/11/28

エッセン国際ゲーム祭から約1ヶ月。25日に開かれたテーブルゲームフェスティバルを経て、主な新作がどんどん国内に入り出した。ドイツ語圏外で、新作を一般発売でこの時期に入手できるのは日本くらいではないだろうか。これはメビウスゲームズ、ゲームストアバネスト、そしてホビージャパンの功績の賜物で、たいへん幸せなことである。年内中にさらに続々と期待の新作が入り、さらに年が明ければニュルンベルクも待っている。これから約半年、ゲーマーが嬉しい悲鳴を上げる季節がやってきた。

オービットダージリンドラゴンイヤーリトルイタリー

オービット(Orbit / A.ランドルフ / フランクコスモス, 1993)

オービットわずか5秒間で試される判断力

ダイスを見ながらコマの位置を予想して、早い者勝ちで奪い合う判断ゲーム。同じ作者が6年後に発表した『ハイパーロボット』のテイストである。
 6色のコマを並べ、6色のダイスと特殊ダイスを一度に振る。ジャララ~。そしてゲームスタート! ダイスで示された方向と順番と出目でそれぞれのコマを1つずつ動かしたとして、同じマスに3番目に入るコマをいち早く探し出すのだ。コマは全員の予想が終わってから動かす。それまで頭の中で1、2、3、1、2、3、4、1、2……死ぬ~!
 最初はもうどうしたらよいか分からないくらい戸惑うが、次第に慣れてくるのが頭脳の素晴らしさである。正解した人はチップ総取り。ハズれた人でも、ほかのコマがいるマスに後から入ればチップをもらえる。先に入ると取られてしまうけれども。
 月斎さんが天才的なひらめきで2連続正解し1位。私はコツをつかむまで時間がかかって当てずっぽうになってしまいビリ。ボードを裏返すと『コロナ』というゲームが遊べるようになっているが、そこではさらに自由度が上がり、サイコロを自由に割り振って最高得点できる組み合わせを1分以内に探すというハードなタスクが与えられる。これは頭よくなるぞ~!

ダージリン(Darjeeling / G.ブルクハルト / アバクスシュピーレ, 2007)

賞味期限が切れないうちに

インド全土を回りながらお茶を集め、ほかに先駆けて出荷し得点を得るゲーム。カードゲームが多いブルクハルトの、大人向けボードゲームを国内発売されるのは『カイロ(2002)』以来のようだ。変態なくらいに風変わりな作風を抑え、堂々としたドイツゲームに仕上がっている。
 ボード上に並んだタイルはインド亜大陸を表している。手番にはまずバイヤーを移動しながらほしいタイルを集めよう。タイルによってお茶の種類と量が違うので、どれを取れば一番有利かをよく考えて。
 タイルは同じ種類を2枚以上集めて絵柄を揃えると出荷できる。揃った絵の数だけ自分のコマを船に置き、そのときの価格で得点。お茶の価格は坂道になっているコマで示されており、長いこと出荷されていなかった種類ほど得点が高い。
 さて出荷して船に乗せたコマだが、ここから毎手番のはじめに得点が入ってくる。苦労して買い集めたお茶が、世界の人々に愛飲されているのだ。しかし! その得点も長くは続かない。新しい出荷があるたびに前のお茶は価格が下がっていき、最後は賞味期限が切れて手元に帰ってくる。お茶は新鮮さが命。
 そこで過酷な出荷競争が始まる。ほかに出荷する人が何周もの間いなければ、1人にだけ大量得点を許してしまう。だから少量でも出荷してしまって前の出荷の価値を下げにいく。お茶をめいっぱい集めて大量出荷・大量得点を狙うか、こまめに出荷してこまめに稼ぐかは、ほかの人の動向次第。タイミングが命である。
 序盤に大量出荷した米出さんの後に出荷する人がなかなか現れず大幅リード。しかしその後ろから得点を削って必要なお茶を集めるFRTSさんが大量出荷で追い上げる。月斎さんも後を追うように大量出荷。最後まで行方が見えない競争だったが、FRTSさんが頭ひとつ抜けて1位。私はというと、少量出荷作戦がどんどんしょぼくなり、大量出荷に目標を切り替えた時点でゲーム終了。いいとこなし。
 手番のたびに得点計算とタイル補充があるのが煩わしいが、一足先に/一足遅くのタイミングを考えながらの出荷競争はほんとうにワクワクする。

ドラゴンイヤー(Im Jahr des Drachen / S.フェルト / アレア, 2007)

恐怖の辰年を乗り切れ

飢饉、疫病、圧政、モンゴル軍の襲来。毎月次々と襲い掛かる災害をやりすごし、豊かな国を築き上げるボードゲーム。『ノートルダム』のS.フェルトの新作で、アレアは『ラムと名誉』以来3タイトル連続で同じ作者の作品を発売していることになる。どうなっているんだろう? しかも今年は秋にもう発売されたのも珍しい(例年ならば秋には試作品で、年明けに発売される)。
 5年後に辰年(遠すぎ)を迎える今年発売されたこのゲーム、まずはじめに辰年の災害カレンダーが発表される。最初の2ヶ月だけは平穏だが、あとは年末までずっと災害続き。でも頭を抱えてばかりもいられない。その順番は分かっているのだから、1つずつ計画的に災害を乗り切ろう。
 毎月はじめにアクションを選んで国の拡充と災害対策を行う。人物ポイントの高い順にアクションを選び、実行する。前の人が選んだアクションをまた選ぶにはお金がかかるから先に選べたほうがいい。でも人物ポイントを上げるには効果が低い人物を雇わなければならず、いきなりジレンマに悩まされる。
 アクションは収入、家、米、花火、人物ポイント、得点、特権の7種類。雇っている人物によって収入や米が増えるなどのボーナスもある。近づいている災害と、自分が雇っている人物を見ながら効果的なアクションを選びたい。
 全員のアクションが終わったら雇用フェイズ。手札からカードを出して10種類の中から新しい人物を1人雇う。収入を上げる税収吏、家を増やす大工、米を増やす農民、花火を増やす花火師、モンゴル軍を撃退する兵士、学識を得点にする学者、疫病を乗り切る薬師、着実に得点を得る宮女、家をお寺にする僧侶。災害の時期とともに、得られる人物ポイントと効果のバランスを考えながら人選したい。
 そしてやってくる災害。飢饉なら米、疫病なら薬師、圧政なら金、モンゴル軍なら兜がないと、せっかく雇った人を失ってしまう。計画的に国づくりをしてきたかが問われる時だ。中には災害のなく、花火比べが行われる辰年のお祭りもあるが、その平和もほんのひととき。来月の災害、再来月の災害と先々の心配をしていなければならない。特に人物ポイントで後れをとり、お金もない人は注意深い準備が求められる。
 経験者の月斎さんが宮女と特権に特化して先行。災害もうまいことかわす。ほかの4人はというと、薬師をみんな揃えるなど安全策。その差が出たか、最終決算で大量得点しても追いつけなかった。災害対策は基本的に得点にならない。どこで見切りを付けて得点にエネルギーを傾けるかが勝敗のカギになりそうだ。得点パターンが多様に用意されているためパワー配分を見極めるのは容易でないが、それがこのゲームの深さである。複雑なパラメータを調節して最適化するというのは、現代ボードゲームのひとつの完成形なのかもしれない。

リトルイタリー(Little Italy / R.クニツィア / プレイルーム, 2007)

この車は協力、あの車は妨害

街の中を車で走り回って、お金を取ったり取られたりするボードゲーム。R.クニツィアのオリジナル作品で、簡素化されたルールの中にも鋭く光るものを感じさせる。
 各自得点源となる車は2台あり、1台は左どなり、もう1台は右どなりの人と共通してもっている。色のついたダイスを振って、進めたい色のダイスを取り車を進める。進める車は自分の得点源となる車でなくてもよい。使ったダイスを取り除いて残りを次の人へ。また振り直して1つ選び、その車を進める。こうして1台以外全部進んだらまたダイスを全部戻して振る。この繰り返しだ。
 そのうちいずれかの車が収入タイルのあるマスに入ったら、その車のオーナー2人は収入が入る。またボード上には逮捕タイルもあり、そこに入った車のオーナーはお金を取られてしまう。収入と支出の額は取られるたびに1ずつ値上がりしていき、どちらかが7になった時点で終了。
 ダイス目によって、自分の車を収入タイルに近づける、逮捕タイルから遠ざける、ほかの車を収入タイルから遠ざける、逮捕タイルに近づけるという多様な選択肢があり、ダイスを振ってから結構考える。一度進めた車は1周の間もう動かないわけだから、逮捕タイルの手前まで進めて、突っ込ませないようにするという手もあるだろう。さらにとなりの人と利害関係があるので、協力を頼むことも考えられる。ちょっと手を加えただけでただの双六が大変化するのはさすがクニツィア。
 ダイス目もあってほかの人の車を積極的に逮捕タイルに突っ込ませる展開。逮捕タイル手前のブレーキ競争が熱い。そのうち収入の目も出てきて最後はわりとあっさり終了。最後の7点を取ったよたろーさんが1位。ルールは易しくプレイ感も軽いが、駆け引きを意識して遊ぶことで楽しいゲームになるよい作品。また遊びたい。

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