山形でぽっかり時間ができたので自宅ゲーム会を呼びかけたところ、参加者は庄内からnagaが1名という寂しい状況。遠いところからいらっしゃるのに申し訳ないと思ったが、ふだんなかなか遊ぶことのできない2人ゲームを片っ端から遊んでみると、これが意外に面白い。2人ゲームに多いアブストラクトゲームばかりでは頭がヒートアップしてしまうので、アクションゲームや競りゲームなどを間に挟みながら7時間。勝ったり負けたりと実力差があまりなかったことも幸いし、大いに楽しめた(2人ゲームの場合、片方ばかり勝つという結果になりやすく、それは勝っているほうでも負けているほうでも白けてしまうものである)。
モールヒル|リトルゲーム・ウマ|ギプフ
モールヒル(Mole Hill / R.クニツィア / ブラッツ, 1997)
ゲーム内容はこちら。庭師はどこまで早めに囲い込んで逃げ道を封じ、モグラはその隙にどこまで逃げおおせるかというアブストラクト(情報完全公開)ゲームである。隅にあって逃げられなくなるリスクの高いところに得点になる花畑が配置しているあたりがニクイ。
先の先までじっくり読めばあっさりと捕獲できるのかもしれないが、スピード勝負で「うわ、止まらねぇ」とか慌てながら囲い込んでいくのもまた一興。写真はそうやって逃げまくった跡である。目の前に置いては斜めに逃げられているところが、後から見るとおかしい。
今回も、自分が前に置いたコマの上を通過できるか問題となったがどっちなんだろう?
リトルゲーム・ウマ(Pferd / 作者不明 / ハバ)
すごろくやで扱っているハバ社のリトルゲームのひとつ。小さい缶のキーホルダーに、小さい木のコンポーネントが入っている。ちょっとした子どもゲームだが、ルールにひとひねりしてあって楽しい。
白いウマと黒いウマのレース。缶の中にコマを入れて振り、自分だけこっそり見る。そしてクローバーと柵の数を申告。相手はその申告がウソかホントかを当てる。間違っていたらその数だけ進め、当たっていたら交替。
ただの当てずっぽうではない。柵のある場所はクローバーだけではダメで、柵がないと進めないから、そこでは出ていなくても出たと言わなければならない。ウソかと思えば本当に出ていて、さらに進められてしまったり。もうひとつは1周してゴールするところ。相手はもうウソといって相手にクローバーが出ていないことを祈るしかない。最後はクローバーを出せるかの運勝負。これも潔い。
コースが短いので大差がつかずデッドヒート。ハナ差で勝ち。ちょっとしたキーホルダーゲームにも、こんなブラフゲームの仕掛けがあるのはさすがだ。
ギプフ(Gipf / K.ブルム / ドン・コー, 2004)
ボードの外周からコマを差し入れて四目を並べ、相手のコマを捕獲するゲーム。アブストラクトゲームの最高峰として名高いギプフシリーズ6作の最初を飾る作品だ。ドイツ年間ゲーム大賞ノミネート。
交互に外周の好きなところからコマを差し入れる。そこに隣接するコマは、どちらの色でも押されてひとつずつずれる。そのうち同じ色のコマが4つ、一直線に並んだらボードから回収。このときその四目に隣接する相手のコマを捕獲できる。回収した自分のコマは再びゲームに投入でき、相手のコマは二度と帰らない。こうして双方のコマが減っていき、投入するコマが先になくなったほうの負け。
コマを差し入れる方向は3つあって、同じマスでもどちらの方向から差し入れるかによって戦況ががらりと変わる。相手の手を予想して、陣形の先の先を読まなければならない。
そして重要な役割を果たすのがギプフコマ。通常のコマは四目に並んだら回収されるが、ギプフコマはそのまま盤上に留まるのだ。これをもとにして新しい四目を作りたい。
相手のコマを取ることばかり考えていてもいけない。自分のコマのマネージメントも大切だ。相手のコマを捕獲できなくとも、投入するコマを確保するために四目並べなければいけない場面もあるだろう。
盤面の状況から打てる手が自ずと限られていて、しかも視覚的に先が読みにくいので、ほどよい選択肢に悩めるのが私は気に入った。2勝1敗。
投扇興(Tosenkyo / 伝統遊戯 / 文扇堂)
前回のレポートはこちら。はじめちょっと練習してから10投4席でやってみた。向かい合って座り、交互に扇を投げる。和室で遊ぶとそれらしい。緋毛氈もしけばもっと雰囲気が出ただろう。
私が前に遊んだのはずっと前だし、日ごろ練習しているわけでもないが、腕がどこか覚えていて40投で90点。澪標(みおつくし、写真)が3度ほど出た。カタンで世界3位になった高橋氏は、大会の前に精神統一のため頭脳スポーツ協会のブースで扇を投げ、蓬生が2回出たと語っているが、それだけでもう70点である。いったい上級者はどういうポイントを会得しているのか、私にはまだ想像もつかない。優雅で、それでいて精神集中が試される素晴らしいアクションゲーム(といってよいものか)。
メディチ対ストロッチ(Medici vs Strozzi / R.クニツィア / リオグランデ, 2006)
ゲーム内容はこちら・2回目のレポートはこちら。ルールは引いて競りの繰り返しで至極単純だが、値付けは非常に悩ましい。自分の相手もほしい品物の状況は絶えず変化しているし、相手の出方にもよる。そんな中で損得分起点を直感で見出す。値段は1度しか言えないから、思い切りが必要だ。言われたほうも買うか買わせるか大いに悩む。通常、3人以上のボードゲームで用いられる競りというシステムが、2人ゲームでも十分成り立つということを示した傑作だと思う(これまでにもなかったわけではないが)。
第1ラウンドでお金をケチってボーナスをほとんどもらわなかったのがずっと響いて負け。でも勝者のnagaさんも原本割れしていて、商売としてはどうかという話になった。お互い足を引っ張り合うわけだから、しょうがないのかもしれないが、もっと何ゲームも遊べば相場観がつかめてきて利益も出るのだろうか。
デュボン(Dvonn / K.ブルム / ドン・コー, 2001)
赤いデュボンコマから離れないようにコマを積み重ねていくゲーム。ギプフシリーズの第4弾で、ドイツ年間ゲーム大賞ノミネート作品。ギプフシリーズは6作中(『タムスク』と『ピュンクト』を除く)4作が年間大賞にノミネートか推薦されているという、優秀作品ばかりなのだ。ブルム氏はこのたび、『タムスク』を新作『ツァー』と入れ替えることを発表しているが、これが推薦リストにまた入ったら……。
『デュボン』は明らかに、1981年に年間ゲーム大賞を受賞した『フォーカス』を基にしている。1つだけのコマは1マス、2つになったコマは2マス、3つで3マス……というように重なれば重なるほど移動距離が伸びる。ゲーム終了時には、自分のコマが一番上にあるスタックの高さ総計で勝敗を決める。ボードが横に広がって大ジャンプもできるようになったという違いはあるものの、ここまでは『フォーカス』そのものと言っていい。
しかしこれにブルムが加えた要素は画期的なものであった。盤上に3つある赤いデュボンコマ。このコマから隔離されたものは全て死滅してしまうのである。ときには島ごとごっそりとなくなることも。そこでデュボンコマ周辺の攻防は自ずと熾烈になる。リンクを断ち切られないように、その上で自分のコマが最終的に上になれるように。さまざまな手が考えられ、どこから手をつけたらいいか分からないほどだ。
ゲームの最後は、移動できるコマは必ず移動しなければいけないというルールがある。すでに大きなスタックになっていると行き先がないものだが、中小のコマがちょこちょこと動いた結果、戦況ががらりと変わってしまうこともある。終盤の詰めは大事だ。
私が要領を得ないうちにnagaさんはゲーム中に何かをつかんだようで完敗。難しいがやりがいがある。
ゴウワンストライク(Gowan Strike / 作者不明 / グラパック, 2003)
ピッチャーとバッターの一対一勝負に絞りこみ、配球の駆け引きを楽しむ異色の野球ゲーム。後にコンパクト版も出されており、エアロノートシリーズの代表作と言えるだろう。
カードを9枚選んで打順を並べプレイボール。攻撃側は1番バッターから、守備側はピッチャーをマウンドへ。まずピッチャーが速球かスローボールかを決め、セットポジションにボールを置く。ピッチャーはそれぞれ2~3種類の球種を持っており、ボールがどう変化するかをバッターは読む。そしてそこにバットを置く。振ってもいいし、見逃してもよい。バントもできる。
そしてピッチャーは球種をオープン。ダイスを振って変化の度合いを決める。思いっきり変化してバットを空に切らせればしめたものだが、甘く入ると痛打される恐れがある。ボール球でもそのコースにバットが出ていれば飛んでいく。
打った結果がどうなるかはバッターの能力とダイスで決定。ゴロから特大ホームランまで。出塁したらコマを置き、次のバッターが出てくる。盗塁と牽制はない。ピッチャーはバッターとひたすら対決するのみ。バッターにはそれぞれ苦手なコースがあるから、そこを丁寧についていきたい。
1球1球がこのような駆け引きなので、じっくりやれば1イニングで1時間くらいかかるだろう。スポーツはスピード感が大事だが、野球に関してはこんな遅さでもシミュレートしているような気がする。
1回表、ノーアウト満塁から何とか1点で抑えたnagaさんがその裏、バッターを2人置いて特大ホームラン。渾身のハイボールが強打者の絶好のコースに入ってしまった。サヨナラ負け。野球好きにはたまらないゲームだろう。