何だかんだと6月は毎週参加できた秋葉原水曜日の会。土日仕事の私にとって、1週間はここから始まるという感じになっている。いわゆる心のオアシス。
先週、個人輸入していたゲームが届いたのでルールを読んで持ち込んだ。新しいだけで価値があるとまでは言わないが、すでに何年もの傑作の積み重ねがあるドイツで出される新作は、後発ならではの新しい仕掛けが必ず施されている。「そうきたか~!」デザイナーやメーカーの狙いが直に伝わってくる瞬間は至福の賜物だ。
ダイスビンゴ|盲目のニワトリ|アッペンツェル城
ダイスビンゴ(Würfel Bingo / H.ヴュッペン / ラベンスバーガー, 2007)
出目を祈ってダイス振り
ゲーム内容はこちら。ソロプレイ色の強いゲームなので人数に関わらず遊ぶことができる。黙々と記入していくのもひとつの遊び方だが、ほかの人のボードもちらちら見ながら、次に何が出てほしいかお互いにコールすると盛り上がる。得点が2倍になる斜めの2列にどういう数字を配置するかが勝負どころ。最高点の「7なしストレート」(2,3,4,5,6か8,9,10,11,12の2通りしかない)にどうしても賭けたくなる。
ダイスの出目は完全に運だが、それを効率よく並べていくところには戦略とひらめきが必要で好評だった。
盲目のニワトリ(Blindes Huhn / H.リシュトハウス / コスモス, 2007)
ブラフしにくい……
ゲーム内容はこちら。ニワトリカードや数字の低いカードがきたときに、ブラフで高い数字をコールするのはどうしても難しい。支払いも手札からなので、高い数字を支払うと得点が減ってしまう。そこで小さい利益のために高値で冒険するよりも、静観して得点を減らさないほうがよいという判断がはたらきがちだ。全員がパスすれば手番プレイヤーの得点が配分されるので、それをもらえるという目論見もある。
一方、中盤以降に数字の高いカードがきたときに、ブラフで低い数字をコールするという手はまだ有効。みんながニワトリだと警戒してパスしてくれれば、うまくいくかもしれない。しかし安すぎれば誰かが落としたときに自分の利益が薄くなってしまう。
そういうわけでいくらポーカーフェイスを装ったところで、高値にも安値にも思い切ったブラフをかましにくいゲームのような気がしたが、それはメンバーのせいだろうか? 現物価格±1,2という正直価格で取引され、後は色の勝負というガチンコなゲームになっていた。
アッペンツェル城(Burg Appenzell / B.ヴェーバー&J-P.シュリーマン / ツォッホ, 2007)
スイスの観光名所アッペンツェル(リンク先:地球の歩き方)のチーズメーカーとタイアップして、お城を舞台にネズミたちがチーズを見つけるゲームが生まれた。『ナイアガラ』など見るだけで遊びたくなるゲームを作ってきたツォッホの面目躍如で、コンポーネントの妙に心奪われる。
箱をそのまま使ったコンポーネントはアッペンツェルの街並みの俯瞰図になっており、ネズミたちは周囲の塔から出発する。屋根をめくるとチーズが隠されており、神経衰弱よろしく同じチーズのペアを見つけて両方に自分の2匹のネズミを置くとそのチーズをゲットできる。最初に4種類手に入れた人の勝ち。さあ、街の中を探検だ。
一筋縄ではいかないのが、チーズはボードの下をスライドして移り変わっていくこと。しかも中にはネズミ捕りの穴があり、チーズを待っていたネズミが穴から落ちてボードの中にポトリ。還らぬ人(ネズミだ)となり、1匹少ないネズミでプレイしなければいけなくなる。4匹のうち3匹がネズミ捕りに落ちてゲーム続行不可能になってもゲーム終了。その場合はチーズを多く集めていた人が勝つ。
今回は序盤からみんながネズミ捕りでお互いを落としあう展開。隅にいるとき、ネズミ捕りのタイルをそこに差し込めばネズミは落ちてしまうのである。特にトップ目が狙われた。しかし最後の1匹を落としてもほかの人が勝つために落とせなくなり、後半はチーズ探し合戦となった。1手番で終了しそうな激戦の中、序盤ノーマークだったFRTSさんが4種類集めて勝利。
タイルは動くし屋根はすぐフタされるしで覚えづらい。「この辺にあったはずなのに……」と思うととんでもないところまで流れていたり。でも記憶しないと勝てないかというと、偶然ほしかったタイルが流れてくるという棚ボタも起こるから分からない。ドイツゲームも進化しているのだ。
フォレヴォレ(Volle Wolle / A.ズッキーニ / ツォッホ, 2007)
『ひつじパニック』のテーマをモチーフにしたダイスゲーム。デザイナーは『ルッカチッタ』や『ヴァルハラ』などを手がけたズッキーニ。
まず場に並べるのはヒツジカード。プラスになるもの、マイナスになるもの、集めれば得点になるものなどさまざまある。これを見ながら、3つの多面ダイスを振って合計いくつ以上出せるか賭けをする。自分のボードにミニ洗濯ばさみではさんで一斉公開。一番大きい数字を賭けた人からダイスを実際に振る。
振るダイスは8面、10面、12面。だから最大で合計30になるわけだが、最低は3であることも忘れてはいけないだろう。一投目で賭けた数字以上を出せたら、場札を3枚もらう。失敗したらダイスを1つ残して残りで二投目、成功したら2枚。さらに失敗したらさらにダイスを1つ残して三投目、成功したら1枚。それでも失敗したら次の人の番になる。
マイナスのヒツジカードは、三投しても14に満たなかった人の取るペナルティ。ほかに牧羊犬カードは、1枚持っていないとヒツジカードが逃げてしまうが、ほかの人よりたくさん持っているとマイナスになってしまうというジレンマがある。ヒツジカードの中にはダイスの合計にプラスしたりマイナスしたりする効果を持ったものもある。こうしたカードの並び方で駆け引きが生まれ、賭ける数字も微妙に変化していくのが面白い。
月斎さんがあり得ないダイス目で次々とカードを集め1位。弱気だった私には運も味方せずビリ。多面ダイスで極端な出目になるたび盛り上がっていた。
ケイラス・マグナカルタ(Caylus Magna Carta / W.アティア / イスタリゲームズ, 2007)
昨年のドイツゲーム賞にも輝いたフランスのボードゲーム『ケイラス』。日本でも高い評価を得ているが、問題は約3時間というプレイ時間にあった。18XXシリーズなどの長時間ゲームを好む人には問題のない長さだが、長くて90分というドイツゲームのスタンダードからすれば気軽に手を出せない。そこでイスタリ社は今年、短時間でプレイできるカードゲーム版を発売した。フランスのゲームだけにドイツで発売されるまで時間がかかり、発売が6月にまでずれ込んでいる。
ボード版からの変更点は、まず特別な建物と王の恩恵と中間決算がなくなったこと。建設施設がなくなり、新しい建物は手札から置く。プレイ順はつねに時計回りで、城の建設はパスした順。パスされても支払は上がらない。こうした変更は全てゲーム時間の短縮につながっている。
手番には①手札を増やす(1ドニエ)、②手札の全交換(1ドニエ)、③職人を置く(1ドニエ)、④建物を建てる(カードに指示された資源)、⑤パスするの5択。1つずつ時計回りで行い、全員がパスをしたらお金で監督を移動して建物を上から活動させる。監督のあるカードまで活動させたら、城の建築。必要な資源を出した分だけ城チップをもらい、このラウンド一番貢献した人には金が与えられる。監督を2マス進めて次のラウンド。
『ケイラス』の醍醐味だった建物のグレードアップはなくなっていない。弁護士を使って邸宅にすれば収入が1増え、さらに青の建物にすれば高得点になる。城に貢献してチップを稼ぐ方法と、大きい建物を作って高得点を狙う方法のせめぎ合いは健在だ。
4人で約1時間。ジリ貧だと思っていたがほぼ毎回城の建設に参加していたおかげで同点優勝。職人の選択の悩ましさ、建物の順番を考えた見切り、勝ち筋の読みなどプレイ感はいささかも減じておらず、濃い時間を過ごすことができた。