うららかなお天気に誘われて秋葉原。参加できるか直前まではっきりしない場合や、ふらっと行きたくなった場合などに重宝するのが水曜日の会である。
いつもだと2時過ぎぐらいの早い時間には5~6人しかおらず、3~4人用のゲームがなかなか出せないのだが、今日はすぐ10人以上集まったので珍しく3~4人用のゲームが多く回っていた。
オアシス
オアシス(Oasis / A.R.ムーン&A.ワイスブルム / ウーバープレイ, 2004)
砂漠を舞台にした陣取りゲーム。アメリカのゲームデザイナー、ムーンとワイスブルムのコンビ作である。このコンビ、2001年には3作も年間ゲーム大賞にノミネートされたが、2004年を最後に新作を発表していない。というわけでこの『オアシス』がいまだコンビ最新のボードゲームである。
ボード上で争う地形は砂漠・草原・ステップ・岩石の4種類。タイルやラクダを置いて自分の陣地を広げるが、同じ種類の陣地同士は接することができない。要所を早めに押さえて、広く取れるようにしよう。
しかし広い陣地を取っただけでは得点にならない。それぞれ絨毯・オアシス・馬・石塔を手に入れてこそ、得点になるのだ。しかも2枚あれば2倍、3枚あれば3倍。どこかの地形に特化して広げ、それに対応するものを集めれば高得点を狙えるだろう。
タイルのとり方がとても斬新だ。各自がカードを1~3枚めくって自分の前に並べておく。いらっしゃい、いらっしゃい、お買い得だよ! 1番の人から気に入った人のカードをもらって実行するというわけだ。魅力的なカードを出して先に選んでもらった人は、次のラウンドで先に選ぶ権利を得る。先に選べれば選択肢の幅も広がるし、要所を早く押さえられるので有利なことは間違いない。
でも、カードの補充があまりないのでいつまでも魅力的なカードを並べられるわけではない。どこで下がってどこで出るか、状況に応じた判断が求められるだろう。自分の得点を伸ばすことだけでなく、調子のよさそうな人の手を封じることも考えなくてはならない。
最初から中央にラクダ地帯を広げ、そのほかの地形も競合せずに伸ばすことができたものの、商品の集め方がバラバラで大量得点を上げられず2位。1位は7匹の馬を集めて一挙42点を叩きだしたぢ~ぷさん。考えること・迷うことが多くてすごく濃いゲーム展開だったが、時計を見るとわずか45分しか経っていない。これは充実感たっぷりのゲームだ。
バクシーシ(Bakschisch / K.B.ヘリング / ゴルトジーバー, 1995)
街や宮廷の人々にワイロを送って王座にのぼりつめるゲーム。作者のヘリングとは仮称で、いわゆるTMチーム(K.トイバー、P.ノイゲバウアー、W.リュトケ、R.ミューラー、F.グルーバー)が制作したゲームである。ゴルトジーバーの華々しい1年目を飾る4作品(『1号線でいこう』『ギャロップロイヤル』『十二星座ゲーム』『バクシーシ』)の1つ。
カードをめくって描かれた人物。この人にみんな一斉にワイロを送る。袋から好きなだけコインを握って一斉にオープン。一番多く出した人が、自分のコマをその人物のマスまで進める。また次のカードをめくってワイロの入札。5人目だけは、ワイロを最もけちった人が、その人物のマスまで戻される。
ボード上には同じ人物のマスがいくつかあり、進む(戻る)ときは自分のコマから最も近いところマスに行く。このためゲームが進んで位置が変わると、同じ人物でも5マス進めたり、1マスしか進めなかったりするので、この状況が入札額に微妙な影響を及ぼすのだ。競り負けても出したワイロは返ってこない。ここは一気に進みたい!というところにつぎ込もう。
しかしここで注意。5人の間に1度だけ、コインではなくドロボウを握ることができる。ドロボウを出した人は、その回のワイロを横取りできるのだ。みんなが進む気満々のところにドロボウを出せば、ごっそり稼げるかもしれない。でも、その裏をかいてみんなドロボウを出してくるかもしれない。これでまた、入札額を決めるのが難しい。
ボード最上段の宮殿に入ると、ドロボウが使えなくなる。お金は一応、ラウンド終了時に等分されて戻ってくるが、ラストスパートにかけるお金がないとゴールできないだろう。さらに、同じラウンドに複数の人がゴールすれば持ち金勝負。その前の節約がものをいうだろう。
私は少し早めに神殿に入ってしまったが、ストレートに出したワイロが裏の裏をかいたかたちになってゴール。全員ドロボウを出して誰もお金をもらえなかったり、何も握らずに流れて「たった1金でも出していれば進めたのに~」と後悔したりとドラマが起こるたびに笑う。ゲーム時間はわずか20~30分。軽く楽しめる作品だ。
乗車券ヨーロッパ(Ticket to Ride – Europe / A.R.ムーン / デイズ・オブ・ワンダー, 2005)
2004年の年間ゲーム大賞を受賞した『チケット・トゥ・ライド』のヨーロッパマップ。
ただマップを変えただけでなく、いくつかのルールが追加された。まず好きな都市に置くことのできる「駅舎」。ここから出ている路線を1つ利用できるようになって、先を越されてつながらないという絶望的な状況を回避できるようになった。入り組んだヨーロッパマップでは必要な措置だったと思う。いっそうソロプレイ色が強まったともいえるが、それよりも中盤でいじけてしまう人がいなくなった点を評価したい。
それから山間部を走るトンネル。まず必要なカードを出してから、山札から3枚引いて、出したカードと同じ色があれば追加で支払わなければならない。保険(追加する分)を用意して手堅く行くか、一か八か行ってしまうかの賭けも楽しい。
あと水上を渡るフェリールート。ここでは必ず機関車カード(オールマイティカード)を含めなければならなくなった。どの色を使って、機関車カードをどこまで節約できるか、手札のマネージメントも必要になっている。
これだけルールは追加されたが、プレイ感は『チケット・トゥ・ライド』とさほど変わらない。引いて、引いて、引いて、引いて、出す! 引いて、引いて、出す! 長考する場面もあまりなく、サクサク進むテンポ感がいい。
はじめに来た目的地カードがどれも近いところでラッキー。しかもロシアから南欧ルートだったので、競争の激しい西欧から比べるとほとんど思い通りに路線を延ばすことができた。北欧からロシアに入る8本路線=21点をものにした娯楽堂さんと競り合いになったが、長めだった中央アジア路線のお陰で勝利。ウォーゲーマーには有名らしいけれども、ロシアをはじめ知らない都市名が多く、確認に手間取るのがややマイナスか。バンダイは、日本語版を作るにあたって舞台を関東にでもすればよかったのではなかろうか?
ドラダ(Dorada / R.ホフマン / ラベンスバーガー, 1988)
後から上がったほうが点数が高いというひねくれスゴロク。かつて日本語版が発売され、『榊涼介/林正之のマルチプレイ三昧』でも紹介されている。傑作の誉れが高いゲームだが、いかんせん20年も月日が経っては入手も難しく、それほど遊ばれていない。
ボード上にある自分のコマが4つ。サイコロを振ってどれか1つを進める。同じマスのコマは着いた順に重ねられ、下のコマは上のコマがどいてくれるまで動けなくなる。途中の穴に落ちるとそのコマは礎となって終了。○マス進む(戻る)というマスは、行き先にほかのコマがいればその先(後)の空きマスまで進ま(戻ら)なければならない。そしていきなりゴールに入ってしまうマスがある。
ボードも素っ気ないほどのデザインで、ルールもこれしかないのに、何と盛り上がることだろう。進みたくないと思っていても、ほかのコマが封じられて選択の余地がなく、泣く泣く穴に落ちてしまう人。その人を踏んづけて悠々と渡っていく人。全部のコマが封じられて、ニコニコしながらパスしている人。ゴール前の穴だらけの道を無事に渡って、最後にゴールに入ったときの快感。中盤で全部が穴に落ちてしまったときの悔しさ(それが今回の私)。
『榊涼介/林正之のマルチプレイ三昧』で紹介されていたように、コマにプリクラのシールでも貼れるような仕様で再版を希望する。
ごいた(Goita / 伝統ゲーム / グランペール, 2007)
石川県能登地方に伝わる伝統ゲーム。将棋のコマで遊ぶところを、点数を表示してカード版にした。さほど難しいルールではないが、カード化によってより手軽に始めることができる。英語でも書かれているので外国人にも遊べるだろう。
カードの構成は実際の将棋のコマにほぼ同じで、王・飛車・角は2枚ずつ、金・銀・桂馬・香車は4枚ずつ、歩兵(このゲームでは「し」と呼ぶ)は10枚。カードは配りきりだから、手札と場札から、まだ出ていないカードをカウンティングすることが大切だ。
ゲームはチーム戦で、対面が味方になる。親から2枚カードを出し、次の人はそのうち2枚目と同じカードをもっていれば出して、また新たに1枚出す。出せない・出したくない場合はパス。自分以外全員がパスしたら、また新たに2枚カードを出す。これを繰り返して、カードを早くなくした人のチームが勝ち。最後に出したカードが得点になる。合計得点が規定点に達するまで戦う。
同じカードを出すと書いたが、王は香車・歩兵以外ならどのカードにも出すことができる。とっておきの王を出そうとしたら、歩兵で攻められて返せないのが面白い。大事なのは、チーム戦であるということ。手札の内容を相談することはできないが、どのタイミングでどのカードが出るかという情報から、お互いに状況を伝え合うことはできる。初プレイではここまでなかなか至らないが、それがまた奥の深さにもなるだろう。
ぢ~ぷさんの強力な打ち回しに敗北。まだまだ修行が足りない。