毎週通っていては仕事に差し支えると思い今週は参加しないことにしていたのだが、急遽山形に行くことが決まって秋葉原に「寄り道」した。滞在時間は短めだったが行けば行っただけのことはある。未プレイの所有ゲームを遊べたり、気になっていた国産ゲームを遊べたりして大満足。
パラノイア・カードゲーム|取る|ことば博士
パラノイア・カードゲーム(Paranoia Mandatory Card Game / S.ギルバート / ホビースペース, 2006)
パラノイアというコンピュータに管理される世界を描いたTRPGのカードゲーム版。イエローサブマリンが完全日本語版として今秋発売した。秋葉原にはサンプルが置いてあり、4,200円という価格に躊躇する人もまずは遊んでみることができる。
各ラウンドにミッションが1つ指定され、みんなでアクションカードをプレイしながら達成を目指す。ミッションは特定のチップを集めるものだったり、逆に取らないものだったりとさまざま。成功すればリーダーを中心に階級昇進などの報酬が与えられる。最も高い階級にいた人が勝者。
ミッションの内容によっては仲間を裏切って失敗に導いてもかまわない。自爆や誤爆もし放題。本来の目的を忘れて滅茶苦茶やり始めるあたりからが、このゲームの醍醐味のようだ。それをお膳立てするように無茶なミッションやアクションもちりばめられている。
カードテキストを淡々と読むだけではつまらない。元ネタの世界観と、TRPGのノリで楽しむゲームだ。8人まで遊べるが、いったいどうなってしまうんだろう……。
取る(Toru / 作者不明 / ハズブロー, 2005)
『Tsuro』『Oshi』(ウィズキッズ)などの日本語そのままのゲームタイトルをこのところ耳にするが、これはかなりストレート。チップを交換していって揃ったら中央のドラゴンを「取る」。誰かが取ったらほかの人もチップが揃っていなくても取ってよい。でもドラゴンの数は人数マイナス1。誰が悔しい思いをするのか?
チップの交換は1枚を左どなりの人に左手で渡し、代わりに1枚を右どなりの人から右手で受け取る。その時「ト!」「ル!」「ト!」「ル!」と怪しげな掛け声をかけるのだ。そのうち揃ったらドラゴン争奪戦。揃っていないのにフェイントをかけて、間違って取ってしまった人を失点にするのもアリ。
あらかじめ配られているドラゴンチップがあって、それと同じ色のドラゴンを取れればポイント2倍だが、ほかに狙っている人がいるかもしれないし、第一選んでいてはドラゴンを全部取られてしまう。ぎりぎりのところでの判断力が試される。
みんな慣れるにつれてチップを回すのもドラゴンを取るのも高速化していく。そのレベルアップについていけず最下位。豪華コンポーネントをお馬鹿なリアクションゲームに使うのが何とも楽しい。
ことば博士(Kotoba Hakase / 馬場雄二 / 学研, 2006)
盤上にある文字から言葉をつくって自分の短冊をめくり、早上がりをめざす日本語ワードゲーム。学研の頭のよくなるシリーズは健在だ。
盤上にはつねに9文字が並んでいて、ここから2文字以上(大人なら3文字以上がよし)を組み合わせて言葉を真っ先に言う。言えたら自分の色の短冊を1枚めくって重ねると9文字のうち3文字がチェンジ。こうして4人が4方向から次々と短冊をめくって重ねるたびに盤上は次々と変わる。めまぐるしいような中でいち早くことばを探し出し、短冊を全部めくったら勝ち。
『ワードバスケット』のようなスピード感があるが、みんなが共通の9文字から言葉を作るのはなかなか容易でなく、焦りながらにらみ合うところに楽しさがある。「湯煎」「祟り」「野焼き」などの怪しげなワード続出で笑った。
サラマンカ(Salamanca / S.ドラ / ツォッホ, 2006)
スペイン西部にあって世界遺産にも登録されている旧都サラマンカ。ここを舞台に自然豊かで肥沃なエリアを開拓するボードゲームだ。私のお気に入りデザイナーであるドラの最新作。オーソドックスな作りに見えていたるところに工夫が凝らされている。
まず手番の決め方が斬新。手札から順番に1枚ずつ出して数字の大きい人からプレイし、出したカードを左どなりに渡す。自分が使ったカードは次のラウンドで必ずほかの人の手に渡るので、先読みや微妙な協力など、ゲームにアヤが生まれる。
さて、手番が決まったら行動。3つの中から1つを選んで行う。1つ目はタイルの配置、2つ目は見張りコマの配置、3つ目は妨害コマの配置。
タイルの配置では、建物タイルならば農場主コマを置いて所有することができ、その建物の周囲に同じ色のタイル(村なら畑、城なら森、修道院ならブドウ畑)を並べてエリアを広げれば広げるほど価値がアップ。建物を売却すればその時点でのエリアの広さや建物の種類によって収入が入る。ちなみに最後に一番お金持ちの人が勝者。
建物の売却は1つ目の行動を行うときならいつでもできるがタイミングが大事。畑や森などの地形タイルは、隣接していれば複数の建物で共有できるので協力できるが、ときおり混じる豊作タイルは誰かが売却すると同時に消えてなくなってしまう。地形が広がるのを待っているだけでなく、豊作タイルを先取りすることも必要だ。このあたりのにらみ合い、駆け引きがたまらない。
2つ目の見張りコマは、ほかの人の建物に置く。その建物が売却されたとき、地形の利益を受け取る便乗商法。売れそうな建物に置いて収益率を上げたい。
3つ目の妨害コマでは、他人の建物を廃墟にしたりネズミ・イナゴ・毒を使って地形の価値を損ねたりすることもできる。肥沃な土地はどんどん狙われるだろう。建物を高い値段で売却したいならば、こうした邪魔をうまくかいくぐらなければならない。
全員が行動を終えたら出したカードを左どなりに渡し、この時点で7点以上の建物にボーナスが入る。次のラウンドはタイル置き場にタイルを補充して、前のラウンドの最終プレイヤーからカードを出し始める。タイルがなくなったらゲーム終了。
手番順を決めるカードのシステムが、協力も妨害もありの盤面の駆け引きとマッチして、悩みどころの多いゲームになっている。
FRTSさんと私が修道院をおさえてブドウ畑の開拓に協力関係を築き、よたろーさんとプラティニさんが城から森を広げるのに力を合わせ、つなきさんがそれぞれの美味しいところを狙うというような展開になった。FRTSさんが高価な地形をうまく売り抜け、ほかの人が妨害しきれずダントツ。私はFRTSさんのおこぼれに預かるかたちで辛うじて最下位を免れた。
ドラにしては細かいルールがいくつかあるが、その分バランスが取れていて、何度も遊びたくなるよい作品だと思う。エッセンの新作で今のところナンバー1。面白いが4人までというボードゲームが多い中、5人まで遊べるのも重宝する。