「メンバーに合ったゲーム選択」をすることはとても大事なことだが、不特定多数の人がばらばらと集まってくる水曜日の会では何よりもまずさまざまなプレイ人数に対応するラインナップが重要だ。ドイツゲームには面白いけれども3~4人用というゲームが少なからずあるが、こういう場ではなかなか出番がない。特に5人以上で遊べ、ルールがあまり多くなくて30~40分で遊べるゲームは重宝する。
メビウス便を持ち込む方が何人かいて、新作を遊べるのも水曜日の会の魅力だが、私のほうでは少し古い未プレイのゲームを持ち込んでみた。中には面白いかどうか分からないゲームもあるが、皆さん果敢に挑戦して下さって、そういう中から意外な面白さに出会ったりもした。
マウアーバウアー|クフ王|火種
マウアーバウアー(Mauerbauer / L.コロヴィーニ / HiG, 2006)
アレアと並んで愛好者から注目度の高いハンス社。イタリアのゲームデザイナーであるコロヴィーニを採用したのは昨年の「カルカソンヌ:新たな地」に続いて2回目だ。シャングリラの橋、クランス、マグナグレキアなど、アブストラクト風の大人向きゲームを作るコロヴィーニにしては少ない。しかも今回は一転してカード運・ダイス運が強い、ハンスらしくもコロヴィーニらしくもないゲームだ。
壁を一本置き、ダイスを振って出た色の塔と家を建てる。壁で囲まれた街ができたら得点計算。「その街の緑色の家は1点」とか「まだ街になっていない白い塔は2点」などの手札を出して得点する(得点計算の後補充)。
終盤に引いたカードがどれもダメなものばかりでビリ。最後は得点計算が起こらないまましむしゅさんが逃げ切った。
壁の両側に建てる塔のうち、片方の色は自由だし、家もダイスで「?」が出れば好きな色を建てられるから、ある程度選択の余地はある。だから序盤は手札に沿って、得点が高くなるように塔や家を配置することになるだろう。
しかし中盤以降になると、ダイス目の偏りやほかプレイヤーの思惑が絡んでコマが散り散りになり、自分で得点を伸ばす努力をするよりもその場で高得点を狙えるカードを引けるか否かに勝敗がかかってくる。終盤では、カードによって4~5点しか入らないものもあれば、いきなり15点も入るものもある。カードの種類は多く、また割と頻繁に得点計算が起こるので、特定のパターンを狙ってカードをとっておくというのも難しい。
それならば純粋に運を楽しむゲームかというと、カードの種類が多くて1枚1枚の検証がやりづらく、期せずして入った大得点に戸惑うばかり。何度も遊んで、カード構成が飲み込めてくるとほかの人の狙いをつぶしにかかったりしてもっと楽しめるのかもしれない。
クフ王(Cheops / K.パール / HiG, 1998)
ハンス社がエルグランデの大賞受賞に沸いていた90年代後半の作品。実は1977年に発売された同タイトルのリメイクで、かれこれ30年経っていることになる。
クフ王のピラミッドに残されたカラフルなスカラベを集めてお金をもうけるゲーム。下の段から取っていって、取ったらすぐに売るかゲーム終了までもっておく。すぐに売れば10ピアスター、最後までもっていれば40ピアスターになるかもしれないし、0になるかもしれない。
最後までもっていた場合の価格は、ゲーム中にその色のスカラベを誰かが売るたびに変動する。つまり売るということは価格を変動させるということ。ここに自分の財産の価値を高めたり、ほかの人のスカラベを無価値にしたりといったせめぎあいが起こる。またピラミッドの中から出てくるイベントタイルで、価格を操作したり売却を制限したりすると、またせめぎあいに変化が生まれる。
今回は中断までいかないうちにスカラベが売り終わってゲーム終了。リスクを承知で入手した2色のスカラベをただ同然にされた私は負け。あっけない幕切れだったが、スカラベが少ない中にも駆け引きがあって面白かった。これだけ軽いと、2、3ゲームやってみたくなる。
火種(Zündstoff / M.キースリング / 1×1, 1995)
ボードは円盤が16枚。これを回転させてロケットの行き先が決まる。黄色いロケットなら黄色の方へ、青いロケットなら青い方へ。端まで行くと反対側から出てくるようになっている。場合によってはループになっていて同じところを行ったり来たりするだけということも。ロケットの迷走ぶりがおかしい。
プレイヤーの目標は3色のロケットのうち、2色のロケットでゴールである太陽に飛び込むこと。太陽に突っ込んだら死んでしまうだろ!とツッコミたくなるが、それがコイツらの栄誉なんだからしかたがない。ロケットに太陽に突っ込むと、その色のロケットはまた地球から出直す。
太陽や惑星、ロケットはカードで操る。太陽カードを出せば太陽、惑星カードなら惑星を回転させる。3色のマッチカードで、一番多くマッチをすった人がその色のロケットの操縦権を得る。そしてこれらのカードは1回に2枚ずつ、裏にして出して一斉公開。笑える設定とは裏腹に、ここはなかなか心理的駆け引きが熱い。例えば赤のロケット路線が太陽まで開通していたとして、赤いマッチを大量にすって一気に突入するか、あるいは様子を見て後から狙うか。一気に突入しようとすると、誰かが円盤をいじって邪魔するかもしれない。様子を見ていると、ほかの人に先に入られてしまうかもしれない。
邪魔するつもりが助けてしまったり、開通したルートを自分でいじってダメにしてしまったりというハプニングの中、僅差で2つ目のロケットを突入させた私が勝利。笑えるところあり、ゲームとして唸らせるところありで、なかなかやるなキースリング。また、単独で何かアブナイ作品を発表してほしい。
ハステ ヴォルテ(Haste Worte / W.クラマー&M.キースリング / シュピールツァイト, 1997)
そのキースリングとクラマーが組んで大賞コンビを結成、ティカルはじめ「怖い顔三部作」やトーレス、マハラジャ、勝利への道など傑作は枚挙に暇がないが、このコミュニケーションゲームはあまり知られていない。
フラッシュというパーティゲームがある。お題が出されて、制限時間内に連想する言葉を書き、他の人とかぶっていればそれだけ点数になるというゲームだが、ハステ・ヴォルテではかぶってはいけない。
まずお題が示される。「『車』で終わる言葉」「1000万円以上するもの」「ダンスの種類」など。そして砂時計が落ちるまでにできるだけたくさん書く。制限時間になったら、今度は数字カードを出していくつ言えるか賭ける。賭けた分だけ言えれば、その数だけ自分のコマを進めるというわけだ。
しかしここで、かぶってはいけないというルールがある。賭けた数が小さい人から発表していって、同じものを書いているのはもちろんのこと、その言葉が入った言葉も消されてしまう。例えば「ジャンプ」と言われたら「ヤングジャンプ」「月刊ジャンプ」など全部ダメになる。だから、小さい数字をかけた人は、できるだけ一般的な言葉を言って、後続をつぶしにいく。コミュニケーションゲームなのに、こんな戦略性があるのはさすがだ。
さらに、後半の「ハンディキャップゾーン」に入ると、毎回トップには「お題が発表される前に数字を賭ける」「必ずナ行かンを含む言葉を書く」などのハンディキャップがかけられる。これでトップがつまづけば、思いつきの苦手な人がいても混戦してくるだろう。
今回は3人が同時にゴールして、しかも同じ数だけ進んでいたので全員同点1位。このゲームの欠点は、カードのテキストがドイツ語であるということ。お題も「ベネチアといえば?」「ドイツの女性政治家」など日本人には1つか2つしか答えられないようなものが多い。日本風にアレンジする必要があるだろう。
レイジ(Rage / 作者不明 / アミーゴ, 2000)
アミーゴ社の製品だがタイトルは「激怒」という意味の英語。「ラーゲ(Lage)」とは読まない。トランプに「オーヘル」というゲームがあるが、それをもとにしていると思われる。
マストフォローのトリックテイキングで、手札が配られたらそのラウンドに何トリック取れそうか予想する。予想通りなら10点、外れれば-5点。予想通りになるように、うまくカードを使いまわしていく。
ラウンドの始めに配られる手札だが、「オーヘル」では1枚から始めて13枚まで増やしていくが、レイジは10枚から始めて1枚まで減らす。これがゲームのテンポをどんどん上げ、よりエキサイティングにしていると思う。
それと切り札をなくしたり変更したり、トリックを取った人に献上する±5点というアクションカード、さらにスートが6色あって色が切れやすいという作りも、レイジならではの面白さを引き立てていると思う。
控えめな予想でほとんど全ラウンド正解のよりめさんが1位。私も結構予想が当たっていたのだが、予想を外さないために-5点を含むトリックを取ったりしていたせいか2位に終わった。6色スートやアクションカードで読みきれない分、最後の1枚がわくわくする。
モグラトロッコ(Buddel-Wuddel / W.クラマー&R.ウルリヒ / ハバ, 2003)
今度はクラマー&ウルリヒの子どもゲーム。この2人からは、「エルグランデ」「フィレンツェの匠」などが発表されている。2台のトロッコにモグラを乗せて、ノームに奪われた宝を奪還に行くという双六ゲーム。でも途中にはノームが待ち構えていて、モグラをトロッコから引きずり落とすぞ。
サイコロを振ってトロッコを進め、移動が終わったらトロッコを90度回す。それがノームのいるマスに面していたらモグラ1匹捕虜。捕虜になったら、次のトロッコが来て交替するのを待つか、コボルドさんに助けに来てもらわなければならない。コボルドさんはサイコロの目で登場する。
こうしてモグラを途中途中で引きずり落とされながら、一番奥にある宝箱にたどり着いたとき、一番前にいるモグラは宝2コ、脇と後ろにいるモグラは1コもらえる。そしてトロッコはまたスタートへ。これを繰り返して宝がなくなったとき、一番多く宝をもっていた人の勝ち。ざくざく。
子どもらしくデタラメに自分以外のモグラを振り落としながら進んでも楽しいが、大人だったら当然、一番宝を持っている人のモグラを振り落としていく。それがわかると、誰が次にどのモグラを落とすか予想できてきて、宝2コを取るには、どこで止まって、どちらに回転させるかまで考えることもできるだろう。20分足らずだが、深みの感じられるゲームだ。