秋葉原でのいつものパターンは、午後1時ごろから3,4人で軽い短時間ゲームを回し、人が増えてきた3時ごろから2卓で少し長めのゲームを遊ぶという感じだ。今回もそのパターンで遊んだが、ルール説明が終わった頃に新しい人が来ると、その人にはしばらく待ってもらわなければいけなくなるのがちょっと心苦しい。2人ゲームでも何でも、勝手に始めてくれるような経験者ならまだしも、初めての人も多く訪れる水曜日の会では気遣いが大切。
今回はプレイ中の誰か彼かが、後から来て見物している人にゲームの中身をちょっと説明していたが、初見のゲームを眺めていてもおそらくよく分からないだろう。しかしゲームを中断して卓分けするのもそこまで遊んでいたメンバーに悪いし、卓分けしてまた新しいゲームを始めた途端、次の人が来ることもありえる。すぐ終わる短時間ばかりやっているのも燃焼しきれないだろうし、誰かが1人だけゲームに入らないで、接待に徹するというのもなあ……。遅れてきた人はその分だけ遊べないというのは原則だとしても、それだけでは割り切れない悩みである。最低限、見物人には無視せず声がけを(でも、ゲームしている人がゲームそっちのけで会話にのめりこむのもNGだ。その辺の加減がほんと難しい)。
おっとっとラマ
おっとっとラマ(Hoppla Lama / R.フラガ / ゴルトジーバー, 2003)
火山が噴火しているのに、どんどん近づいていくラマたち(故郷が大丈夫か、見に行くらしい)。ゲームの最後に、火山口に一番近いラマが勝者だ。こんなぶっとんだ設定のボードゲームを作ったのは、キワモノ系では代表的なフランス人デザイナー、R.フラガだ。先日会ったマイケルさんによると、国境警備をしている警察官なんだとか。仕事中、ゲーム構想にふけっている姿が想像できる。
一人ずつ袋からラマのエサチップを取り、一斉に公開。スタートプレイヤーが決めたそのラウンドの条件によって、一番多く握った人が進めたり、反対に一番少なく握った人が進めたり、バッティングした人が進めたりする。袋のエサがなくなったときに、今まで引いたエサの数が多い人は3マス進み、少ない人は3マス戻って、一番火口に近いラマの勝ち。
袋のエサは数が決まっていてカウントできるので、終盤に近づくにつれて読み合いが熾烈になってくる。マスの数はとても少ないのでただ進めばいいというものでもない(ゲーム中に火口に突入してしまったら、振り出しに戻る)。「ちょうど○マス進みたい」というときに、ラウンドの条件をどれにして何個握ればよいか、それを他の人の狙いと重ね合わせて計算するのはちょっとしたパズル。でも、当然ブラフもあるし、バッティングすると進めなかったりでハプニングもある。お互い裏の裏をかきすぎて共倒れなんてことも。
今回は3人で遊んだのでなかなかシビアなプレイ。最後の1ラウンドはみんな火口周辺に集まり、ちょっとした加減が勝敗を分ける微妙な争いとなった。狙い通りで私が火口1歩前に止まり勝利。ブラフと正攻法の掛け合いの派手さがテーマのおかしさと相まって、賑やかで楽しいゲームになっていると思う。ルールが簡単で、ゲーム時間が短く、6人まで遊べるという手軽さもよい。
くるりんモグラ(Buddel Company / G.バース / ラベンスバーガー, 2005)
ギミックのあるゲームでファンの多いG.バースの作品。10個の穴に入っているモグラから3匹をひっくり返して、カードに指示された色の組み合わせにするというゲーム。カードには「白モグラ4、青モグラ1」などの指示があり、ボード上のモグラをちょうどその数にしなければならない。
モグラをひっくり返すと、地下から別の色のモグラが出てくる。何色が出てくるかは、記憶に頼らなければならない。この赤モグラの下から出てくるのは白モグラ? いや青モグラ?
3匹ひっくり返さなければならないというのがポイントで、2匹ひっくり返して揃っても、3匹目をひっくり返したときに狙っている色のモグラがさらに出てきて数が合わずNGなんてことも。全部のモグラを覚えることはまずできないから、曖昧な記憶を頼りに「頼む!もう出ないでくれ」と神頼み。
指示カードには難易度があり、はじめは1匹だけから、最後には8匹を揃えるまで難しい課題がある。子どもの年令に応じて難易度を設定してもいいし、モグラの位置が分かるころにはさらに難しくなっていくという、よくできたルールだ。さらに上級ルールでは、出来上がるたびに90度回すというのがあって、もうメロメロ。集中力と観察力が要求される。
序盤快調に飛ばしたつもりが、難易度2になるころから早くもほころびが見え始め、いいとこなしで最下位。おそらく、この記憶の難しさは経験でもカバーしきれないのだろう、経験者のムソウさんもてこずっていた。デザインはちょっと子どもじみているが、子どもゲームだからといって遊ばないのはあまりにもったいない記憶ゲームの白眉である(写真:Reich der Spiele)。
みんなで決めたこと(Das regeln wir schon! / K-H.シュミール / 1994)
ファンが多い割に供給が少ないモスキート・シュピーレの代表作。チップを集めて得点を競うゲームだが、チップの取捨や配点ルールは投票で決められるという、メタゲーム。これをもとに「デモクレージー」という、よりパーティゲームに近いゲームが作られている。
5ラウンド行われるが、まずそのラウンドの最後に自分が何位になるかを予想する。これが当たっていればボーナスが入るが、何しろラウンド中にルールがコロコロ変わるので、当てずっぽうで予想せざるを得ない。
次にルールの上程と投票。順番に手札から新ルールを提案して、みんなの投票で採否を決める。ルールにはチップの配点を変えるもの、投票行動によってチップが入るもの、手番中にしゃべることを禁じたり最初にノックした人にボーナスを入れたりするものなどがある。
投票タイルは無駄にできないので(何枚使ってもいいが、1枚しか返ってこない)、みんなの狙いを読み合って投票する必要があるが、ルールによって裏をかく行動に出る人もいる。それで思わぬルールが採用されたりして大慌て。
投票タイルを全員1枚ずつしか出さなかったら、得点計算に移り、その上で順位を調べて予想にあっていればボーナスが入る。「得点計算後にビリなら20点ボーナス」というルールで、ビリのつもりが上位に浮上したりすることも。ああ、ままならない。これを5ラウンド繰り返して、点数の多い人が勝ち。
ルールの採否は多数決なので、他の人と違う路線でチップを集めるのはリスクが高い。そこで中盤ぐらいまでみんなの方針はさほど変わらないようだったが、得点計算のルールで「チップの点数×色数」が出たころからインフレし、貧富の差が拡大。チップをあまり持っておらず負け組に入った私は、有効な逆転を見出せぬまま、4位に終わった。ルール確認と、得点の累積計算でもたつくのでテンポが悪いが、ルールの組み合わせが織り成す意外な結末が面白く、また朝令暮改の世の中をいかにうまく渡り歩くかのいい勉強になる。
バンパレナ(Cranium Bumparena / 作者不明 / クレニアム, 2005)
神のみぞ知る
パチンコ台で柵を操作して自分のところにうまく玉が落ちてくるようにするゲーム。1回目のレポートはこちら。ここでも持ち込んだつなきさんはヒーローだった。
ボールは決して読みどおりに落ちない。弾力性の高いボールなので、バウンドすると強く反射して、思わぬ方向に飛ぶのだ。ぜったい来ないと思っていたボールが入る嬉しさ! これが金属の玉だったら面白さは半減するだろう。参加者からは、ほしいコール続出。Funagainで買えるけれども、ぜひ日本のショップで扱ってもらいたい。
プラスチック製で、ややチープな感じは否めないが、それも値段の安さだと思えば頷けるだろう。メーカーのクレニアム(クラニウム)は言語依存度が高いゲームもあるが、このゲームがきっかけで注目し始めている。
ノッティンガム(Nottingham / U.ローゼンベルク / アバクスシュピーレ, 2006)
ノッティンガムの保安官の部下たちが、皆から物を取り上げて私腹を肥やすというカードゲーム。このところコミュニケーションゲームに走りがちなローゼンベルク作が、ボーナンザ以外でメジャー発売した久々のカードゲームということで注目される。
山札から1枚ずつ引き、カードを集めて公開すると得点になるというオーソドックスなセットコレクションゲームだが、カードには数字ごとに7種の特殊効果があり、それによって引いてきたカードを他の人と交換できたりする。中でも「待ち伏せ」というカードは、品物かプレイヤーをひそかに指定しておき、それが公開されたときに交換できるというカードで、カードを狙い撃ちできるとともに、他の人にプレッシャーを与えることができる。
どの特殊効果もカードを一方的に奪うのではなく、特殊効果を使ったカードとの交換になっていて、ぬるいかもしれないが不運な脱落者を出さないのはよい点だ。とはいえ、揃いかけたカードを崩されるのはなかなか痛い。最高点の13のカードあたりをあっさり持っていかれると悔しい。
それと誰かがカードを公開するたびに手札が何枚以下の人が補充できるかを指定する執政官は、大役を狙って溜め込むと補充しにくくなるというジレンマを生み出し、ゲームのテンポをよくしている。
こうした細やかな調整で、システムは非の打ち所がないほど完成されているけれども、ローゼンベルクの作品としてみると、何かもうひとつ、驚きがほしいと思うのは贅沢であろうか。どのカードもほのぼのとしているのによく見れば悪事を働いている絵ばかりで、見ていて可笑しい。
ラムと名誉(Um Ru(h)m und Ehre / S.フェルト / アレア, 2006)
アレアの大箱10作品目(このほかに小箱5、中箱2)となるゲームは、これまでの路線とうって変わってサイコロ勝負をメインにしたゲームだ。2時間以上にも及ぶ激戦で使うサイコロは、男らしくたった1個。海賊たちがプライドと名誉をかけてサイコロを振り合う!
舞台は夜の港町。手番には海賊船長(赤)を移動して、その先にあるイベントを実行する。海賊船長が移動すると、その後に自分の子分海賊コマを並べられていく。これぞ、大名行列ならぬ海賊行列! 自分の海賊コマには限りがあり、足りなくなったら移動できなくなるので、どのイベントに移動するかはよくよく考えておかねばならない。もちろん、次に手番が来る下家が得をしないように考えて。ただのダイスゲームと思わせないのは、このコース取りにずいぶん頭を使うからだ。
いかにも海賊らしいイベントは10種類。大きく分けると3つに分けられる。
- 今後の手番で生きてくるもの
- お金……お金を1もらう。お金は、移動や休憩、酒場などで必要。なくてはならないものだ。
- ラム樽……ラム樽を2もらう。サイコロ勝負で目がよくなければ、ラム酒を飲んで振り直し!
- リクルート……子分の海賊コマを1もらう。子分が多いと持久力が上がる。
- フラッグ……ボード上にすでに配置した海賊を回収。
- 名誉ポイントになるもの
- 道具……そのまま持てば得点、売り払って2金にしてもよい。
- 地図……同じ色の地図を2枚集めれば得点に。
- 見張り……めくった見張りの数よりも、手持ちの海賊が多ければ勝って得点になる。
- ランデブー……指示された場所に海賊船長を連れて行けば恋人を見つけたことになって得点。
- サイコロ勝負が起こるもの
- 酒場……他の人も1金を払って参加でき、ダイスでチップを取り合う。
- 宝箱……順番にダイスを振ってカウントアップ、バーストした人がサソリに刺されて-2点。
さて、街を回るのにも飽きたら残った海賊を船に帰して休む。しかしここでも、寝床をかけたサイコロ勝負が待っているのだ。全員、街を回り終えたら、ラウンドの最後に勝負する。寝床はたった3人分、残りは海にドボーン! ここでの勝負は各プレイヤーが1人ずつ出しては1人だけ生き残り、生き残った中でまた1人ずつ出し……というバトルロワイヤル方式。
ここでのサイコロ勝負は船に帰ったのが遅い人ほど後で振ることができ、同じ目なら勝ちになるのでできるだけ街をゆっくり回っていたい。でもいつまでも回っていると船に変える海賊が少なくなってしまうというジレンマになっている。船に帰るタイミングを見計らうはとても重要で、ここもただのダイスゲームとは言わせないポイントである。
寝床に応じて得点チップをもらい、海賊を手元に戻して次のラウンド開始。これを5ラウンド繰り返して、名誉点で勝敗を競う。
序盤でリクルートを盛んにしたヴァイスさんがふんだんな海賊を使って終始有利に展開。私は最初からチップを集める作戦に出たが息切れして2位。Raelさんはお金がなくて苦労していたが、ラウンドが始まってすぐに船に大量の海賊を乗せ、他の人の寝床を絶望的にしていたのには笑った。
肝心の勝負はサイコロなので、いくら頭を使っても仕方のない部分はあるが、ダイス運が全員変わらないという前提で考えれば(本当はそうは思えないほど運不運があるわけだが)、抜け目なく戦う人が強いのは間違いない。コース取りと寝床に帰るタイミングにはゲーム勘が要求される。
でもこのゲームの面白さはシステム云々よりも、数々のイベントやサイコロ勝負の根底にある海賊というテーマを、なりきらなくてもいいからいかに面白がることができるかにかかっていると思われる。端的に言えば、海賊船長が通るたびに、ずらーっと並んでいく子分たちの様子に笑えるかどうか。そこから自然にサイコロを振る腕に力が入り、ラム酒を飲んでもいっこうに1しか出ない情けなさを笑い、6を出して勝ち誇って……というようなドラマが生まれる。
ただノリを楽しむゲームにしては、時間が長いのが惜しまれる。公称は60分だが、長考がなくても2時間近く、ちょっと考えると3時間コースになってしまう。いくらサイコロ振りが楽しい人でも、そんなに長ければだれてしまうだろう。長いゲームは気楽に始められない。4人で4ラウンドというのがちょうどよいくらいではないかと思った(写真:alea)。