サークルが各地で開催される土日に仕事や家事で参加しにくい私にとって、この水曜日の会は生命線である。つくばエクスプレスを使えば家から1時間(電車は45分)で行けるという利点が大きい。
メンバーはだいぶ顔見知りになってきたが、出入りも多いのでいつも初対面のような新鮮な気持ちである。今回はあのThe Game Galleryの管理人HAL99さんがお目見え。しかも一局遊ぶことができた。水曜日の会は、サークルや自宅ゲーム会ではなかなかありえない、こういう出会いの場にもなっている。
ジャマール|私の世界の見方
ジャマール(Dschamal / T.リーシング / ツォッホ, 2005)
布袋の中から手探りで目当てのコマを探し出すゲーム。コンポーネントの雄ツォッホから昨年のエッセンで発売された。「ナイアガラ」の作者リーシングの作。メビウス便をかりんさんがお持ち込み。
はじめに1つずつコマを配ったらスタート。2人で袋に手を突っ込み、お互いのコマと同じ形のものを拾い出す。相手のコマと同じ形のものを拾い出せたら、そのコマと共に相手がもっているコマも奪える。対戦相手を交替していって7つのコマを集めた人の勝ち。
コマの形は円盤、ポーン、三角柱などいろいろあるが、紛らわしいのも入っている(厚い三角柱と薄い三角柱……私はこれでやられました)。間違って取ってしまったらペナルティに手持ちのコマを取られてしまう。なかなか探し出せなければ、袋に一匹入っているラクダのコマを取ってもよい。ラクダを取った人も、相手が持っているコマを奪える。
2人ずつ対戦していくルール、獲得したコマを積み上げなければいけないルール(シビアだぜー!)、3人ずつ対戦していくルール、子ども用のルールがあったが、今回は3人ずつ対戦で遊ぶ。小さい袋の中に腕をひしめき合わせて、「ない、ない!」と焦っているさまがおかしい。しかしやっている方は必死で、頭に血が上ってしまった。
私の世界の見方(Wie ich die Welt sehe… / U.ホシュテトラー / アバクス, 2004)
テキスト系コミュニケーションゲームの異色を放つU.ホシュテトラーが、アップルトゥアップルをアレンジした。昨年のアラカルトカードゲーム賞3位に入賞している。2日かけて翻訳。
アップル~は形容詞に合う名詞だったが、こちらは文中に入れる名詞。しかも二語入れる問題や名詞に長い形容詞がついていることもある。
主なルールの違いは2点。採用されると、手札が1枚減ってハンデがつくこと、そして全員からカードを集めてから1枚山札から足して、これを親が選ぶと減点になってしまうこと。劇的な変化はないが、アップル~で採用してもいい粋なルールだと思う。
しかし何といっても特筆すべきなのは、出てくるお題と単語のひねくれ方。
「ケンカする子ども?そんなことはもうありません。私は○○で仲裁することを薦めます」……「拷問!」
「困窮した悪魔は○○を食べる」……「名古屋の電話帳!」
「私が孤島にもって行きたいもの。一番役に立つのは○○と△△」…「博士号」と「よいテーブルマナー」!
「○○―人類にとって未解決の大問題」……「このメンバーのレベルの低さ!」
アップル~よりも文学的で、ブラックで、思わず笑ってしまう組み合わせや唸ってしまう組み合わせがどんどん出てきた。スイスのドイツ語なので分かりにくい言葉遣いがある上、日本人には馴染みのない人物・国を日本風(「小泉純一郎」「天皇陛下」「三谷幸喜」など)に変更したので翻訳には手間がかかったが、それに見合うだけひとときを送ることができた。
王の請願(Um Krone und Kragen / T.レーマン / アミーゴ, 2006)
ダイスの力で国民を味方にし、そこで得られた能力でさらに宮殿、ひいては王様に近づいていくゲーム。今年のニュルンベルクで発表されるアミーゴの超新作だ。作者は「マジェラン」のT.レーマン。メビウス便をかりんさんがお持ち込み。
はじめは4つのダイスから出発し、最終目標は7つのダイスでゾロ目を出すことだ。そのため、振るダイスの個数を増やす系と出たダイス目を変える系の味方をつけていく。味方にするには、ダイスで指定された組み合わせを出さなければならない。はじめはワンペアでゲットできる「農夫」あたりから。これでダイスを1個増やして、5個でもっと難しい人物に挑戦だ。全部偶数なら味方にできる「哲学者」で、ダイス目を調整したりしながら、次の難易度へ。合計20以上、5つがゾロ目、5つがストレート、フルハウス……その頂点に7つがゾロ目の王様がいる。
7つ全部ゾロ目なんてありえないと思っていたら、そんなことはなかった。何しろ振るダイスはどんどん増えていって人によっては11個とか振っている。それを振りなおしたり、調整したりしていれば比較的容易に7つ全部ゾロ目になるのだ。しかし本当の勝負はこれからだ。
誰かが王様を取ったら、そのラウンド終了後に全員1回ずつ、それまで取った能力を使ってゾロ目チャレンジができる。より多く、より高く。かりんさんが王様を取ったが、ダイスを2つ増やす「領主」と3つのダイス目を平均できる「錬金術師」のコンボでFRTSさんが逆転。もちろん能力さえあれば勝てるわけではない。ダイス運を能力でさらに伸ばしていくという感じだ。というわけで私は同じ「錬金術師」を持っていたのに使いこなせず敗北。
ダイスロールは一瞬だが、味方の能力のどれを、どのタイミングで使うか、そしてどれを残してどれを振り直すか、考えることは思いのほか多くてうんうん悩む。振るたびにパズルを解いているかのようだ。多くのダイスゲームがもつテンポや爽快感は薄れたが、その分思考性が高まったゲームである。
ディアボロ(Diabolo / M.シャハト / アミーゴ, 2006)
M.シャハト作、今年のニュルンベルクで発表されるアミーゴの超新作カードゲーム。天使と悪魔の力比べをして、その結果手札がプラスになったりマイナスになったりする。メビウス便の翻訳で頂いた品。
テーブルには五色の列。自分の番には対応する色を並べていく。右に置けば天使ポイントで、左に置けば悪魔ポイントだ。1列におけるのは5枚までで、2列が埋まったら得点計算になる。
まず各列で天使ポイントと悪魔ポイントを比較。ここからが真の勝負だ。天使が勝っていた場合、全員手札からその色を出して、数字の合計が一番多かった人がその分だけ得点できる。悪魔ポイントが勝っていれば一番多かった人がその分だけマイナス。同じなら得点計算は行われない。
場の天使ポイントを上げておかないと手札で得点できない。でも先に場に出してしまうと手札になくなってしまう。どこまで出せば天使が勝って自分が得点できるのか? また逆に、手札に少ない色は悪魔ポイントを増やしてほかの人を妨害したい。しかしその後からその色を引いてきてしまったらどうするのか? カードゲームのもつハンドマネージメントと運の要素をここまで面白いものに高めたゲームはクニツィアの数作品と、同じ作者のコロレットぐらいではなかろうか。ドイツカードゲームかくあるべし。
4人で4ラウンド遊ぶ。はじめはみんな手探りで天使ポイントばかりが伸びるが、邪魔することを覚えると悪魔ポイントも成長。さらにマネージメントが難しくなった。場には自分で出さず、ほかの人の思惑にうまく便乗することがポイントだが、みんな同じことを考えているのでにっちもさっちも行かない。1枚1枚が緊張と陰謀の一手。カワナさんの思惑に便乗して一挙36点を叩き出した私だったが、かりんさんの手堅い打ち回しに及ばず、最後に妨害を企てたが自分の首を絞めるだけ。FRTさんも大量得点で逆転を狙ったが一歩及ばず、かりんさんの勝利となった。
トレンディ(Trendy / R.クニツィア / W&L, 2000)
5種類のブランドについて、流行を仕掛けるカードゲーム。クニツィア作のライトながらピリリとからいシステムが効いている。
手番には自分の前に1枚ずつ出していき、場全体でカードに書かれた数字分(「7」なら7枚)だけカードが出ればそのブランドはブレイクして得点。一気に手番を早めるスーパーモデルカード、流行の兆しを潰すアウトカードがある。
3枚置かれただけですぐにブレイクするユニクロのようなブランドから、7枚置かれるまでブレイクせず、絶えずアウトカードの脅威にさらされる海外ブランドまで、流行を読むことがコツ。7のブランドはブレイクするまで何周か要するため、先に置いてリードしていればブレイクした場合得点が高い。
ひたすら7に打ち込む職人プレイをしていたが、ブレイクしないわアウトカードでつぶされるわの展開。6が今回は来ていた。クニツィアが得意のフリンケピンケ・システムに流行というテーマをうまくかぶせた佳作である。
パラティヌス(Palatinus / A.ズッキーニ / ダヴィンチ, 2005)
昨年のエッセンでイタリアのダヴィンチ社から発売された新作。作者は「ルッカ・チッタ」のズッキーニ。イタリアというと「バン!」や「コヨーテ」のようなノリのゲームが主流かと思ったら、ドイツゲーム顔負けの戦略性の高いゲームもあることがわかった。FRTSさんのお持ち込み。
4人で遊ぶ場合、農夫、商人、戦士からなる手下8人を、1枚ずつローマにある七つの丘の周囲に配置していく。たった8人だから、いくら長考しても1ゲーム30分とかからない。しかしそうとは思えない濃密な思考が要求される。
全員が置き終わったら、丘ごとに勢力勝負だ。まず、戦士が隣接する農夫か商人で多い方をばっさり狩る! そして残った農夫と商人で勢力を計算。農夫は隣接する土地、商人は隣接する人から勢力を得て、多かった人がその丘を制覇する。こうして7つの丘の勢力勝負が終わったときに、丘で得られたポイント(3~6点)と、狩りで得られたポイント(1人1点)の合計が多い人が勝ち。
戦士の狩りは勢力を激変させるが、万能ではない。隣接する農夫と商人が同数ならば戦士は何も狩れずさっさと帰ってしまうのである。また、丘の得点計算には順序があり、先に得点計算が終わっていれば戦士に狩られても痛くない。
ここまで見越して手下を配置するわけだから、選択肢がそれほどないといっても考えることは多い。ここに置いたら狩られるだろうか? この周りは人が集まるだろうか? この丘を取るはどれぐらいの勢力が必要だろうか?
1回目はちんぷんかんぷんだったが、1度遊んでみてゲームのアヤが分かる。そうなると皆置き方がシビアだ。農夫と商人の中には裏向きに置いてカモフラージュできるものもあり、敵の判断を迷わせることもできる。息もつかせぬ戦いを制したのはしむしゅさん。私は丘を1つ取るだけで後は全く及ばなかった。頭はフル回転しっぱなしで痛くなるほどだったが、時間の短さがこれを緩和させ、陣取りゲームとして最高の水準に仕上がっていると思う。
ロタンドコレクター(Rotundo / J.ソアレス / アドルング, 2005)
世界各地の珍しい玉を集めているコレクターたちがいた。彼らの世界のルールでは、3つ1組でないと価値が出ない。オークションでちょうどいい玉を狙おう。アドルングが昨秋発売したライトテイストなカードゲーム。
3つ組みになるのは1-2-3など、麻雀でいうところの順子と、1-1-1などの刻子。色は全部同じか全部別でなければならない。手札の中で3つ組みが作れれば自分の前にオープンして得点になる。なければ山札から1枚めくってオークション。支払いはオープンしているカードからなので、採算に注意だ。
さらに注意しなければならないのが、終了時の手札がマイナスになること。無駄なカードを引かないようにして、終了のタイミングを見極めなければならない。
昨年の11月に遊んだ印象は、運の要素が強いことだった。最初から手札に3つ組が揃っていれば序盤から有利な展開になる。また3つ組を公開できたときに捨て札から3枚拾えるのだが、捨て札はそれほどないため、公開のタイミング次第で拾える人と拾えない人が出る。しかし、2回目になってその印象はずいぶん変わった。手札の待ちを多くして、幅広いカードに対応しておくこと。2-3の両面待ちを作っておけば1にも4にも対応できる。そこまで考えてオークションに参加すると、このゲームの立体感が出てきた。
今回は最初の手札で刻子が作れない2ばかりがきた。それで序盤は苦しい展開だったが、2は順子が作りやすいカードなのでそのうちだんだん皆に追いついていく。最後の手札はカンチャン待ちだったが、これが入らずそのまま2位。
1回遊んだだけでは素通りしてしまいそうなゲームに新しい魅力を発見できると嬉しい。
綱渡り(Drahtseilakt / R.クニツィア / ASS, 1999)
トリックで勝つともらえる青い棒、負けるともらえる赤い棒を帳消しにして、バランスのよい綱渡りをするカードゲーム。クニツィア作で、一昨年「タイトロープ」というタイトルでリメイクされた。
得点カードをめくると1~9の数字。手札を1枚ずつ出して一番高い人がその数字だけ青い棒、一番低い人が赤い棒を取る。また次の得点カードをめくってこれを繰り返す。青い棒1本は赤い棒1本で打ち消すことができるから、例えば青い棒8本を取った人は、3と5でそれぞれ負ければ0になる。しかしそんなにはうまくいかないもの。9回終わったところでもっている棒の数だけマイナスになる。
メビウス訳では訳出されていないが、ちょうど0で終わると、前に取ったマイナスを1回分チャラにできるというルールがある。これで1位を取ることができた。できるだけ皆の中間の数を出し、青い棒も赤い棒も取らないようにできれば一番。しかし取ってしまったら必死に調整だ。そのさまはまさにフラフラしながら綱を渡っていく感じにピッタリ。最後の最後に9が来たりするなど、得点カードの並び順で思わぬドラマも生まれる。軽めながらクニツィア魂の感じられるカードゲームだ。