秋葉原水曜日の会 05/12/21
今日で第25回を数えることになった秋葉原水曜日の会。始まったのが今年の7月6日で、何と毎週欠かさずここまで来ている。会場を予約する必要がなく、連絡もミクシィで容易にでき、入退場・出欠席自由であることなどがこうして続いている理由だろうが、それだけではなくて、マナーやゲーム選択でゲーム経験の少ない人に配慮したり、名札を作って交流を広げたり、メンバーがそれぞれに傑作・新作ゲームを持ち込んだりと、皆で楽しむための努力が常にあったことも見逃してはなるまい。平日に時間のある人の需要を確実に捉えた水曜日の会、年内はあと1回。
ティル・オイレンシュピーゲル|フェットナップ
フェットナップ(Fettnapf / R.シュタウペ / アミーゴ, 2005)
天才肌の若手デザイナー、シュタウペが発表した新作はシンプルにして切れ味抜群、昨年のゲシェンクに似たインパクトがある。
3枚の手札から1枚場に出して、カウントアップしていく。30を超えたらカウントダウン。10より下回ったらまたカウントアップ、30を超えたらカウントダウン。これを繰り返していく。数字は0~9だけなので、非常に単純な作業だ。
しかし、10~30の間にはフェットナップ(えんがちょ)カードというのがあって、NG番号が指定されている。途中この数にしてしまった人は、地雷カード(またはウンコカード)を受け取らなければならない。4枚受け取ったら負け。
はじめのNG番号は4つで、フェットナップカードはそれぞれのプレイヤーがもっている。自分が持っているフェットナップカードのNG番号を言うのはセーフだ。だから他の人が何番のフェットナップカードをもっているか覚えておくのだが、これがゲーム中どんどん増えていく。ゲーム終盤ではほとんどの数がNG番号となり、他の人が何番のフェットナップカードをもっていないか考えなければいけなくなる。「その辺りって、もう言えるのがないよ~」という事態に。
記憶力のいい人が有利といえばその通りだが、覚えておく番号が10枚以上を超えたあたりから必ず記憶の抜けが出てくる。大丈夫だと思っていたのがドキュンだったり、死ぬ覚悟で出したカードが通ったり。そこで1つ1つ覚えるという作戦が通用しなくなり、何とな~く覚える路線に変更せざるを得ない。ここからがゲームの真骨頂で、ワイワイと盛り上がれるだろう。
今回のメンバーは記憶力が優秀で(普通そうなのかも)、うっかりミスよりも出せるカードがなくなって地雷を踏むというパターンが多かったように思われる。ビリが決まるゲームなので、途中つらくなってもプライドが頑張らせてくれる。それも盛り上がる理由なのかもしれない。
魔法のほうき(Zauberstauber / H.グルンプラー / コスモス, 2005)
エアルケーニヒ出版で独創的な作品を発表しているグルンプラーが、コスモスから発表した作品。今年のニュルンベルクから発売予定になっていたが、エッセンにも追いつかず、最近になってやっと売り出された。開発にかける時間を短縮してバランスの取れていないゲームが多く発売されるようになった最近では珍しいことで、時間をかけただけのものが盛り込まれていると感じた。
基本は簡単で、魔法のほうきの飛行ルートをタイルでプロットして、それを並べてほうきを飛ばすというだけだ。手番に1つずつ、タイルを取って手元の「魔法の本」に並べていく。実際に置いてみたりしてはいけない。あくまで目算でというところがこのゲームの面白さだ。
6枚までプロットすることができるが、全部プロットする前に途中でスタートしてしまってもよい。よしと思ったらそれまで並べておいたタイルを順番につなげて、魔法のほうきを飛ばす。
飛行ルートには街や他のプレイヤーなど障害物があり、これらをよけていかなければならない。ぶつかってしまったら手番終了で、せっかくプロットしたタイルが台無しになってしまう。だから入り組んだところでは小まめのプロットがポイントになるだろう。もちろん、自信があるならば一気に行ったほうが早いのは間違いない。タイルは全部かたちが微妙に違っているのでどれを使うかは慣れも必要だろう。
シナリオは操作方法を覚えるための初級編から、レース、鬼ごっこなど4つが入っている。このほかにウェブサイトでも新しいシナリオが発表されている(現在はチーム戦のシナリオ「空中戦」が公開中)。今回は初級編で慣れたあと、折り返し地点まで行って帰ってくるレースを遊んだ。最後はバックでゴールに入らなければならないという捻りがある。スタートダッシュはウィリアムさんが先行し、残りはだんご状態。お互い邪魔でなかなか進めない。そのうち折り返し地点でも華麗なターンを見せたウィリアムさんがゴールに突進。しかし最後のバックでこけたところを、後続のpuppiさんが見事さした。かりんさんと私はお互い邪魔しあって自滅。
ルールは簡単だが、ほうきの操縦はかなり難しい。慣れるまではもどかしくてしかたなかった。もっと習熟して上級シナリオを遊べるようになりたい。
ファンタジーパブ(Fantasy Pub / E.オルネッラ / ティルシット, 2005)
トロール、オーク、ドワーフ、ゴブリンが集まる酒場でたくさんビールを飲んで帰ってくるゲーム。イタリアのマインド・ザ・ムーヴ社のエッセン初発表作で、この後オルトレマーレ、君主論を発表してすっかり注目株となっている。オリジナルはとうに売り切れ、フランスのティルシット出版が再版した。ルールブックは仏・伊・独の三ヶ国語。そこまで英語が嫌いなのかとおかしくなる。
各プレイヤーは、同じ色のトロール、オーク、ドワーフ、ゴブリンを担当する。酒場の入口から入り、ダイスで酒場をぐるぐる回っていく。同じテーブルに2匹以上集まると飲み会が始まり、所持金でビールを買うのだ。カンパーイ!
1つのテーブルに着くキャラクターは全部同じか、全部違わなくてはならない。全部同じ、例えば全員ドワーフだったら、再会を喜んで皆仲良く飲む。和気藹々として和むひとときだ。ところが、全部違うときは、ファンタジー界のヒエラルキーが発動する。ゴブリンはドワーフに、ドワーフはオークに、オークはトロールにビールを奢らなければならない。ゴチソウサマ!!
ではゴブリンはいつも損ばかりか、トロールは得ばかりかと言うと、そうではない。うっかり者のトロールは移動するたびにお金を落とし、抜け目のないゴブリンは移動した先にお金が落ちているとちゃっかりネコババするのだ。このサイクルに感心。権力をある者はお金に固執せず、権力のない者はせめてお金に抜け目がなくてはいけない。人間の世界以上に現実的な社会だ。
しかしたくさん飲めばいいというわけではない。お家に帰るまでが飲み会。十分飲んだらちゃんと出口まで行って、プレイヤーのところに帰らないと得点にならないのだ。しかし1杯飲むごとに足取りは重くなっていき、出口までたどり着くのも容易ではない始末。オイ、このオッサンを何とかしてくれー! ちなみに、お金がなくなってビール代が払えなくなっても追い出されて家に帰れる。今回はみんなそればっかり。
と、忘年会のこのシーズン、やけに人間社会をシミュレートしていて恐ろしいぐらいなのだが、酒場が混雑してくるにつれ、どのキャラクターを動かせるのか、どこに動かせば得なのかを考えるのが結構たいへんで、その分テンポがやや損なわれるような気がした。
こんな飲んだくれの世話を一生懸命している我々って、何なんだろう。
アイスタワー(Ice Towers / A.ルーニー / ルーニーラボ, 2003)
禅道などでも用いられているアイスタワーを使ったゲームのひとつ。今日たけるべさんに教えてもらったのは自分の色のピラミッドを一番上になるよう積み上げるゲームだ。
自分の色のピラミッドを、他の人のピラミッドの上に重ねていく。重ねていいのは、自分の色以外で、同じ大きさかより大きいピラミッド。他の人のピラミッドに乗られてしまったら、ピラミッドの重ね順によって自分のピラミッドを脱出させたり分割したりもできる。
ここからが驚く。このルールを同時手番で行っていくというのだ。順番にだったら、ゆっくり考えることもできるが、同時では瞬時の判断力が要求される。これは今までにないプレイ感覚だった。2回やって2回勝ってしまったが、勝因はいまひとつ飲み込めない。
アイスタワーにはまだまだルールがたくさんある。アブストラクト寄りではあるが、もっといろいろ試す価値がありそうだ。
トランプ・トリック・ゲーム(Trump, Tricks, Game! / G.ブルクハルト / ファランクス, 2005)
ファランクスから発売されたブルクハルトのトリックテイキングゲーム。ドイツ語のタイトルは「Aufder Pirsch(忍び猟にて)」となっている。英語の題はいまひとつインパクトがないような気もするが、ゲーム自体のインパクトは十分で、トリックテイキングの奥深さを思い知らされる。
このゲームにおけるトリックテイキングの特徴の1つは、獲得トリック数が制限されていることだ。12回中3トリックだけ。3トリック取り終わったら、ただカードを出すだけで全部持っていかれてしまう。どこで取っておくか、引いておくか。
これに付随するルールとして、獲得したトリックが気に入らなければ他の人に押し付けることができる。3トリックしか取れないのだから、点数の低いトリックは取りたくないというわけである。これに対して押し付けられたほうは、数字の低いカードを出せば拒否できる。
この特徴がトリックテイキングを熱くする。低い得点のトリックを押し付けられないようにするにはどれくらいの数でリードするか、どれくらいの点数を仕込んでおくか、どの低い数字を温存しておくか。手札と順番に応じた柔軟な判断が要求される。
もう1つの特徴は、最後の1枚を温存できるというもの。マストフォローでは、その色がなくならない限り切り札になる他の色は出せないものだが、このゲームでは最後の1枚を公開することによって、他の色を出せるようになる。これによって選択肢がさらに広がり、どのカードを最後の1枚にしておくか、そしてその1枚をいつ出すか、また頭を悩ませることになる。
そしてゲームの進行は、同じカードを使いながら2種類の得点計算がある。最初の3ラウンドは獲物追跡ということで、獲得したトリックに書かれた足跡(×動物の種類)の数が点数、最後のラウンドは狩猟で獲得した動物に応じた点数(オオカミ1点~クマ4点)が入る。最後は大きい数字と切り札をいくら持っているかという、オーソドックスな展開になるが、足跡の方は中間の数字に入っているためなかなか獲得が難しく、独特の打ち方が必要だ。
作者のブルクハルトのカードゲームは、改めてみるとマニトウ、ケープからカイロまで、デルフィ、ピサ、ウィリーなどどれも切れ味がある。他のゲームも、また遊びたくなってしまった。