自宅ゲーム会 05/10/26
米出さんのところにエッセンの話題作が入ったという情報を聞きつけて、急遽ゲーム会を開催した。とはいっても平日につくば、前日の連絡、しかも秋葉原で行われている水曜日の会の裏番組だ。これだけ厳しい条件では誰も来ないのが普通だろうなあ、と一時は思った。しかし奇跡は起きるもの。かゆかゆさん、moonさん、Raelさんのお三方が仕事を無理やりずらしてつくばエクスプレスで駆けつけてくださったのである。
ゲーム会はふつうまずメンバーを募って、集まったメンバーに応じて期日やゲーム選択をする。だから今回のようにゲームと期日が先にあって、それに合うメンバーを集めるというのは同好の士でなくてはできない。今回集まってくださったメンバーは、私と同じようにゲームに魅せられた人たち。感服した。
遊んだゲームは2005年のエッセン・シュピール’05で発売され、ドイツのゲーム情報誌『フェアプレイ』が現地で行った人気調査で上位に入ったボードゲーム。その実力やいかに。
君主論(Il Principe / E.オルネッラ / マインド・ザ・ムーブ, 2005)
イタリアのメーカー、マインド・ザ・ムーブの三作目。第一作の「ファンタジーパブ」、第二作の「オルトレマーレ」はいずれも大好評で、フランスとドイツのメーカーからすぐにリメイクが発売されるという異例の事態となった。そのためこの第三作も注目を集めないわけはない。マインド・ザ・ムーブ社もそれを意識してか今年からドイツメーカー顔負けの頑丈な大箱を使い、コンポーネントも豪華にしてきた。ダヴィンチ、キダルトと並ぶイタリアのメジャーメーカーになる日も遠くないだろう。『フェアプレイ』人気調査で7位。
マキャベリが著した『君主論(イル・プリンキペ)』。君主は獅子のように勇猛であり、かつキツネのように狡猾でなければならないと説いてセンセーションの起こした。プレイヤーはルネッサンス期に栄えた豪商の一家となり、イタリア中部を自分の勢力化において名声を獲得しようとする。そのためには各地に都市を建設し、建物を揃えて職業を牛耳り、地方に紋章を広げて勢力を増やさなければならない。
まずは建物を競りで集め、その建物を出して都市を建設しよう。ペルージャとかシエナなどの小都市なら少ない建物でできあがるが、フィレンツェやミラノといった大都市は、指定された多くの建物を集めなければならない。しかも早い者勝ちだから、競りでどの建物を手に入れるかは重要だ。大きい都市はできあがると実入りも大きいから、手札が揃いそうだったら競りで奮発してもよいだろう。
建物が建ち終わると職業の取り合いだ。緑の建物なら1位に親方、2位に弟子。白の建物なら1位に司教、2位に伝道師など。職業を持っていると、勝利点が入ったり収入が入ったりするだけでなく、ほかの人がその種類の建物を使って都市を建てたときにも勝利点がつくので都市の建設と並んで重要性が高い。
都市を建設したり、職業のアドバンテージが入ったりすると、ボードのイタリア地図に自分の紋章を置くことができる。これは各地方における自分の勢力を表し、最後に一番大きな勢力を築いた人に勝利点が入る。どの地方で勢力を固めていくべきか、ほかの人の動向を見ながら戦略的に考えよう。
システムは『オルトレマーレ』と同様、いくつかの要素が複合的に重なり合っている。都市の建設、建物のセットコレクション、地方の陣取りの3つが主軸。どれも得点に結びつくが、さらに都市の建設が地方の陣取りに利したり、建物のセットコレクションが都市の建築に利したりと主軸が絡み合っていて、一番お得な道筋を見つけるのは容易ではない。何が決定的に勝敗に結びつくのか判然とせず、そのため建物カード、都市カード、お金、紋章チップ、職業タイルと見ておくものがたくさんあってやや繁雑に感じる。そういう意味でフリーク向けのゲーマーズゲームである。
5人だと山札がなくなるのがものすごい速さで、まだ序盤かなと思っていたらもう終わりだった。そのためカードのめぐりがよかった私が運よく1位。毎回配られる手札で必要な建物に恵まれないとなかなか都市が建設できず、勝ち目がない。人数が減ればもっとたくさんのラウンドできるので、こうした不運は勝敗に響かなくなると考えられる。
ケイラス(Caylus / W.アティア / イスタリ, 2005)
昨年のエッセンで「イス」を発表、高い評価を得たフランスのイスタリ社による第二弾。『フェアプレイ』の人気調査でダントツの1位を獲得した。その秘密は、「プエルトリコ」のように1回遊んだだけでは出きらない豊富な建物のコンビネーションが織り成すゲーム展開の妙にあるようだ。
偏狭の村ケイラスにフェリペ王が城を建てようとしている。プレイヤーはこの城の建設に貢献し、手柄をたてようとする建築家だ。自分の手下を村に派遣して食料や資材を調達しなければならない。そこで順番にお金を払って自分の手下コマを好きなマスに置いていく。お金を手に入れる「郵便局」、木材を手に入れる「森」、お金で資材を調達できる「市場」、新しく建物を建てられる「大工」、順番を上げられる「馬小屋」、安く手下を置ける「宿屋」……どことどこに置けば組み合わせが効果的になるかをよく考えて手下を派遣したいもの。しかし派遣できるのは1マスに1人だけで、もちろん早い者勝ち。ああ、そこは置こうと思っていたのに先を越された!
「大工」が発動すると道に沿って新しい建物が建つ。こうしてお城バブルに盛り上がる村は街に様変わりしていく。はじめに建つ建物は木造シリーズで、効果もさほどではない。ところがその中に「石工」と「弁護士」があって、これが建つと今度は石造シリーズや住居を建てられるようになる。効果は木造の家の2~3倍だ。さらに石造の建物の中に「建築士」があり、最もゴージャスな建物シリーズが建てられるようになる。ゴージャスな建物は必要な資材が多くて建てるのがたいへんだが、見事建てられればものすごい名声になるのだ。「大聖堂」なんかいつか建ててみたいなあ。この心浮き立つグレードアップがゲームを引き締める。
ただし、こうした建物は手下を派遣すれば必ず使えるわけではない。街の端っこをうろうろする白いコマ。これが行政官だ。手下を引き連れ、「ここから先はまだ開店許可を出していない!」と威張っている。この行政官より街の外側にある建物は、手下がいても使えない。賄賂を払って動いてもらおう。
もちろん街づくりにばかりうつつを抜かしていてはいけない。一番大事なのは王様のお城。街にばかり目を奪われてお城に貢献しないとペナルティもある。はじめは基礎から作り始め、城壁、本丸というように進めていく。もちろん、貢献できればものすごい名声になるだろう。これもまたほかの人より早く、たくさん建てることが大事だ。王様のひいきをもらえれば、お金や資材が手に入ったり、安く建物を建てられたりする。
このゲームの面白さは数多く用意されている建物にある。建物を建てるとき、シリーズの建物ならどれを建ててもよい。そのときの状況によって建物は変わるから、毎ゲームごとに違う街ができていく。その中でほかの人の動きを見ながら、どの建物なら取れそうか、どれとどれを取ればお城やゴージャスな建物が建てられるのか考え悩むのは、深いし面白い。
初回プレイということで建物を取ったのに条件を満たせなくて使えないというポカ連発だったが、ゲーム中から「これはいいゲームだ」と絶賛連発。勝敗はかゆかゆさんが相変わらずクレバーな回し打ちで勝利寸前までいきながら、終盤でお城を建て忘れるという大ポカで後退、途中から要領をつかんだらしいmoonさんが僅差で勝利を収めた。奇手をうった米出さんとRaelさんが後に続く。私はというと、いつも一手先を越されるビハインドが積もり積もってビリ。時間はかかったし(5人で実プレイ150分)、頭を使いに使ってヘロヘロになったが、でもとてもいいゲームだ。