秋葉原ゲーム会 05/07/26
2年間のインド留学を終えて帰国。インドでもキャロムや持参ゲームを遊んではいたが、思う存分遊ぶことはできなかった。偶然にも帰国日が同じになったけがわさんと平日に遊ぼうという話になり、5月にもご一緒したかゆかゆさんとmoonさんをお誘いして秋葉原。遊ぶゲームはフリーク寄りの新作をリクエストした。
ゲーム慣れしたメンバーで、ルール説明からゲーム進行までスムーズでテンポもよく、心地よいひとときを送った。しかし勝敗となると、ブランクのせいか感覚がついていかない。しばらくリハビリが必要なようだ。
キャメロットの影
キャメロットの影(Shadows over Camelot / B.カタラ、S.ラジェ / DoW, 2005)
フランスのメーカー、デカルト出版がアスモデー社に買収されたとき、最後の販売予定タイトルがフランスに本社をもつデイズ・オブ・ワンダー社に委譲された。そのため当初の発売予定日から半年遅れたが、乗車券(チケットtoライド)の大賞受賞で勢いに乗るデイズ・オブ・ワンダー社のラインナップに入ったことで、大市場アメリカでの注目度が高まる。ゴールド・エース賞に発売前にノミネートされ、フェドゥッティはマイゲーム大賞に選んだ。デカルト出版のレーベル、オイロゲームズから発売されていたのではここまでいかなかっただろう。それがこのキャメロットの影(キャメロットを覆う影、シャドウズ・オーバー・キャメロット)である。
このゲームの一番の特徴は、プレイヤーが一丸となって悪の勢力から正義を守る協力ゲームだということにある。協力ゲームにはクニツィアの指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)、同社のテラがあるが、コンポーネントの豪華さとあいまって、それらにはないプレイ感覚を味わうことができる。
アーサー王率いる円卓の騎士たちに課されたタスクは、悪の勢力がしのびよるキャメロット城を守ること。そのためには聖剣エクスカリバーや聖杯など魔法のアイテムを手に入れ、黒騎士など次々と城に攻めてくる敵たちを倒さなければならない。同時進行する6つのクエストを成功させて城を守り抜こう。
ゲームの進行はとてもシンプル。黒いカードを1枚めくって悪の勢力が伸張し、白いカードを1枚手札から出してこれらに対抗する。たいへん辛く、また面白いところは勢力を争う場所が6ヶ所もあり、しかもそれらが同時に進行していくところだ。エクスカリバーを取りに行っている間に黒騎士がどんどん進出し、黒騎士を退治に行っている間に聖杯が悪の手に落ちそうになる。この四方八方から攻め込まれてくるのがとても怖い。
だからプレイヤーは話し合って持ち場を分担し、ときには力をあわせて立ち向かわなければならない。ただし手札の内容を明かすのはルール違反。「今私は聖杯を取りにいきますので、あとの2人でサクソン人をやっつけてください」「でも私にはサクソン人を倒すほどの力がなくて…」「でしたら役に立つカードをあげますよ。」このようなゲーム中の会話が勝敗を分けることになるだろう。
6ヵ所のクエストが成功するたびに円卓に白い剣が並べられ、失敗すれば黒い剣が並べられる。剣が全部置かれたところで、白い剣の方が多ければ全員の勝利だ。先に白い剣をたくさん置けても、後から黒い剣に挽回されることがあるので油断はできない。
これだけでも十分に面白いのだが、さらにバリアントとして裏切り者を入れることもできる。プレイヤーの中で1人、ひそかに悪の勢力の一味がいる。告発されるまで正体を明かさず、ひそかにクエストを失敗に導くイヤな奴だ。こいつの邪魔をはねのけて、キャメロット城を守り通すのは至難の業。一層の協力と深い心の読み合いが必要になるだろう。
裏切り者を入れるならば、6人か7人がよい。それ以下では勝つ確率がかなり下がるだろう。またシンプルながらちょっとしたミスが重大な局面を導くこともあるため、1回目は裏切り者なしで要領をつかみ、その上で裏切り者を入れるとよい。あまりにあっさり負けてしまうとゲームが面白くないものだ。プレイ時間は90分程度で、人数が増えてもあまり長引かないようになっている。7人で遊べる重量級ゲームは少ないので、このゲームは重宝すると思う。
今回は裏切り者をいれず4人でプレイ。はじめはエクスカリバーとランスロットの鎧を手に入れつつ、黒騎士を退治するところから始めた。これらは全て成功したものの、その間に聖杯が侵略されて挽回不可能な状態に。ここに少し抵抗して敗北を回避しつつ、ピクト人とサクソン人を斥ける。と思っている間に城を攻撃する石弓が増えて危機的な状況に陥るも、moonさん扮するアーサー王の優秀な指揮官ぶりでピンチをしのぎ、後半は余裕の勝利だった。
ゲームの過程がエキサイティングで、クリティカルヒットを出して窮地を凌げると嬉しい。協力は協力でも指輪物語のように常に同じ場面で戦うのではなく手分けして戦っていることが多いので、協力ゲームにありがちな気恥ずかしさは感じられなかった。プレイヤーはそれぞれ小さな特殊能力をもっており、それを効果的に使って単独で手柄を上げられたときなど、とてもかっこいい。
パラッツォ(Palazzo / R.クニツィア / アレア, 2005)
アレアの中箱シリーズ第2弾。デザイナーのクニツィアにとってはラー、ロイヤルターフに続いて3作目となる。市場から建物のパーツを買ってきて、できるだけ窓が多くて高い邸宅―パラッツォ―を作っていく建築ゲームだ。
やることは3つのうちいずれか。お金を補充するか建物のパーツを手に入れるか、建てた邸宅を改造するか。建物を手に入れる場合は定価での購入か全員での競りがある。どのパーツがほしいか、そして他の人がいくらお金を持っているかよく見て考えよう。買い残すと次の人が手に入れてしまうかもしれないから、次の人のほしいもの・ほしくないものまで考えておく必要がある。あまりほしくない、でも次の人には買わせたくないというようなものをどうするか悩むのがクニツィアジレンマ。
建物は3階以上になって初めて得点になる。1階だけの建物はマイナスポイントだ。たくさん建てすぎると育てにくくなるが、かといって数を絞れば得点チャンスが減る。どのあたりで手を打てばベストか悩むのもジレンマだろう。さらに、ゲームの終了条件は補充の山から5枚の終了カードが出ることなので、いつ終わるかわからない。最後にもう1つ成長させたい、でもその前に終わったらマイナスというのもジレンマ。いたるところにクニツィアらしさがちりばめられている。
ただ、どの種類のパーツが補充されるかは運次第なので、その分プレイ感はかなり軽くなっている。場合によってはいいタイルが補充されずに取り残されることも。今年一緒に発売されたルイ14世のようにアレアのブランドにそれなりのヘビーさを期待するフリークやクニツィアファンは肩透かしを食らうかもしれない。プレイ時間もバベルの塔と同じく45~60分と実にあっさりしている。クニツィアの競りのエッセンスをちょっと味わってみたいライトユーザーに。
今回はかゆかゆさんが配牌にめぐまれず伸び悩む中、2つの建物で同色ボーナスを狙ったmoonさんと私、そして3つの建物をどんどん高くしていったけがわさんの勝負に。私は同色・5階建て・窓13個(25点)という力作を作ったものの、最後に来て3つともぐんと伸ばしたけがわさんに1点差で及ばず。邸宅の改造(すでに建てたパーツを別の建物に組み入れたり、取り除いたりする)というルールが非現実的だと思った。4階建ての建物に後から3階を入れるなんて、ありえないから!
ウボンゴ(Ubongo / G.ライヒトマン / コスモス, 2005)
昨年クニツィアの頭脳絶好調(天才一直線)で成功を収めたコスモスが、パズルライクなボードゲーム第二弾として発売したゲーム。雑誌の広告ページではこの2作を並べて宣伝しており、今年のラインナップの中でも力を入れていることがわかる。実際、年間ゲーム大賞トトではナイアガラ、80日間世界一周に続いて3位に入っている。おそらくドイツゲーム賞も入賞するだろう。
小学生のとき、知能テストというものがあった。図形の認識能力などが問われるもので、先生が時計をもって制限時間内にいくら解けるかをはかる。問題は時間内に解けないぐらいたくさんあり、先生の「やめ!」という声にいつもビクリとしていた。このゲームはそんな感覚を蘇らせる。
まず全員にお題シートを配る。このシートはたくさん枚数があり、経験者がパターンを覚えられないようになっている。サイコロを振って砂時計を返したらスタート。サイコロの目で支持された4つのパーツを使って、お題シートの白いマスを埋めるのが課題だ。サイコロの目によって使うパーツが異なり、ここでも経験者がパターンを覚えられないようにしてある。
4つのパーツを取って、あっちに置いたりこっちに置いたり。砂時計が落ちる前に解くことができれば、「ウボンゴ!」と言って宝石をゲットできる。砂時計が落ちるまで解けなかったら宝石はもらえない。そして次のお題。これの繰り返し。
これだけならば単なるソロプレイになってしまう。他の人よりも早く解くメリットは、宝石の取り方にある。このゲームの勝敗は同色の宝石をいくつ集めるかで決まる。先に解いた人は何色の宝石を取るか、選択肢が増えるのだ。宝石の選択も砂時計が落ちる前にしなければいけないからのんびりしていられないが、自分が集めている色の宝石を取り、2位の人には取らせないといった瞬時の判断が要求される。ここにも第二の知能テストが待っているわけだ。
ハイパーロボットでもそうだが、この種のゲームは得意不得意がわりとはっきり表れる。それを知能指数の違いと言ってよいのかどうかはわからないが、時間の制約というプレッシャーに負けずに冷静でいられるかも試されるだろう。結果はけがわさんが数学者の意地を見せて(?)1位、苦手だと言うmoonさんと私は何度も解くことができなかったが、moonさんは同じ色の宝石をうまく集めていった一方、私は焦っててんでばらばら。完全に冷静さを欠いてしまった。
得意不得意がはっきりわかれるのと同時に、好き嫌いもはっきり分かれるゲームだと思った。ゲーム中に会話をしている余裕がなくて寂しいので、中だるみしたときなどの気分転換にちょっと出すのがよいのかもしれない。
あたしら鶏だけ(Nobody But Us Chickens / K.G.ヌン / ダンシング・エッグプラント, 2003)
ニワトリが小屋から出てきた。影からこっそり狙っているネズミとキツネ。でも小屋には番犬がいて…というカードゲーム。メーカーは月間最優秀社員のダンシング・エッグプラント(このゲームではダイエット・イーヴィルとクレジットされている)。
カードの構成は全員同じで、1枚ずつ選んで一斉にプレイ。キツネやネズミを出していれば場のニワトリを取れるが、犬とバッティングすると犬が全部横取り。しかし犬はキツネもネズミもいないとニワトリを取れないということになっている。
ニワトリも手札から出てくる。誰も取るものがいなければ次のラウンドに繰り越し。点数の高いニワトリは自分で取りたいから、どのタイミングで出せばいいのか悩ましい。
ほかにもニワトリカードはたくさんあり、手札の大部分を占めていて処理に困る。中には取ればマイナスになる病気のニワトリも※。取りにいくか、取らせるか、取るならネズミで取るのがいいか、誰かがキツネを出していると予想して番犬で行くか。裏をかいて、裏の裏をかいて、その裏を…。
はげたかのえじきでも思ったことだが、このようなバッティングゲームは根拠のない読み合いを存分にして、その結果に一喜一憂するところが面白いのであって、淡々と遊んでは面白さを引き出せない。今回の遊び方はちょっとノリが悪かったかもしれない。いろんなボードゲームを遊びすぎた弊害だろうか?
※「病気のニワトリは-1点」というのが中途半端に感じた。1点のニワトリがたくさんおり、また「病気のニワトリを取らなかったボーナス」が1点にしかならないため、トータルで見ると取ってもあまり痛くないのである。マイナスをもっと大きくするとか、鳥インフルエンザで今まで取ったニワトリが全部パーになるとか、「うっわー取っちゃったよー(泣)」と盛り上げるためにそれくらいしてもよかったのではないか。
クレタ(Kreta / S.ドラ / ゴルトジーバー, 2005)
寡作にして傑作の多いドラ。ブクブク、バケツくずし、ユカタン、マラキャッシュ、メディナ、七つの印など、傑作は枚挙に暇がない。私の最も好きなデザイナーだ。だから今年発売されたアマゾン探検とクレタは特に注目していた。
この新作についてドイツゲーム専門誌『フェアプレイ』の記者バルチ氏はこう述べる。「両方とも第一印象はとてもよい。けれどドラ氏のベストゲームの水準には達していないだろう。」バルチ氏は住まいがドラ氏と同じハノーファーということもあって親交が深く、彼の作品を試作段階からよく遊んでおり、高く評価している。それだけに新作に期待するところも大きいのだろう。
氏のベストゲームの水準に達しているかはともかく、また私の贔屓目を差し引いても、クレタは完成度の高い作品と言える。
地中海沿岸に浮かぶギリシャ最大の島クレタ。東西に400キロほどの細長い島で、14世紀を舞台に勢力争いが行われる。得点計算の行われるエリアが開示され、そのエリアを中心に建物や船を建てたり、民族や修道院長を派遣したりして覇権を争う。得点計算が起これば次のエリア。こうして所定のいくつかのエリアを転戦して得点計算を行い、点数の多かった人が勝ちという典型的な陣取りゲーム。
陣取りゲームのポイントは限られた人員をいかに効果的に配置するかにある。一ヶ所に集中させすぎればほかが手薄になるし、かといってばらばらに配置しては勝てない。また次に得点計算が行われるエリアに先行投資しておくことも必要だ。そのあたりのバランス感覚とマネージメントが勝敗を大きく左右するだろう。
このゲームの特徴を挙げるならば、機能の異なる陣取り要員をいかにうまく扱うかという点にある。塔は複数のエリアに影響力を及ぼすことができるが、一度建てたら動かせない。1つで2点分になる街も同じ。修道院長はそのエリアで他人の建設を防ぐことができるが、1人しかいない。民族は移動能力が高いが、作物を収穫するという別の仕事に拘束される。船は修道院長のいるエリアでもよいが港がなければ入れない。それぞれの特徴を把握し、どの順序で投入するかをよくよく考えておかなければならない。
ゲーム時間は今回1時間ちょっと。得点計算の行われる順番によってはもっと長引くというが、前半はどんどん投入していくだけなのであまり選択の余地がなく、後半は有利な人がどんどん得点計算を起こしていくので、よほどの長考プレイヤーでもいない限り、そうはだれないだろう。手番でやるべきことが見えやすく、すっきりした印象を持った。
今回はスタートプレイヤーとなって最初のエリアを塔で制したけがわさんがそのまま逃げ切って勝利。スタートプレイヤーが初手番で塔を建てればかなり有利なので、残りのプレイヤーはまずスタートプレイヤーの阻止を考えなければならないようだ。その中から協力や敵対関係が生まれれば、ゲームはもっと面白くなる。毎回多様な展開がありえるので、繰り返し遊びたい。ルイ14世でも思うことだが、陣取りゲームという使い古されたテーマでありながら同工異曲にならないのがドイツゲームの深さであり、魅力だろう。
シンペイ(Simpei / シンペイ / バンダイ, 2005)
バンダイから新発売の純国産ゲームは、複合的な三目並べだ。上の世界(灰色の○)または下の世界(内側にある穴)で3つのコマを並べたら勝ち。
はじめはコミカルなかたちのコマを1つずつボード上に配置していく。相手をけん制しつつ、先の先まで読んで置いていこう。4つのコマを置き終わったら好きなコマを1つずつ移動。コマは斜めに1つしか移動できず、上の世界にあるコマは下の世界へ、下の世界にあるコマは上の世界に行く。相手のコマをブロックしておくのも大事な戦略だ。
さらに、相手のコマを上の世界または下の世界ではさんだら好きなところに飛ばすことができる。そのときどこに飛ばすかも大事なポイント。1手のミスが勝敗を決するのだ。
けがわさんと3回ほど戦って五分五分。最初はいつの間にか揃っていたり、相手の王手を見逃したりしていたが、だんだん目が慣れてくると面白くなってきた。単純なようでいて考えるところが多い。それでいて1ゲームに10分もかからず、慣れるほどに先の先が読めてきて楽しいので、繰り返し遊ぶことができる。発売元もメジャーなので、これはぜひ売れてほしい国産ゲームだと思う。
ブロックス デュオ(Blokus duo / B.タビシャン / ビバリー, 2005)
一世を風靡したフランス産ボードゲームの2人専用バージョンが今年発売された。色もオレンジと紫の渋好みでかっこいい。4人用と違って協調の場面は一切ないので最初から相手のルートをどんどんふさいでいく殴り合いが始まる。
ルール説明は1分で終わり、視覚的にわかりやすく、しかも2人専用で時間もかからないので、年令や経験を問わず誰でも遊べるのがいい。恋人、親子、子ども、お年寄りなど、広い場面で活躍しそうだ。4人用よりもコンパクトになり、気軽な気持ちで持ち運べるのもメリットと言えるだろう。
しかし結果はけがわさんと対戦して大敗。実力差があると、後半どこにもタイルが置けなくなって泣きたくなってしまうのが玉に瑕かもしれない。