平日の午後が空いたので、イエローサブマリン秋葉原店にてゲーム会。しかし平日の昼間から動ける人となると限られてくる。調整が難航したが、仕事を土日にずらしたり何とか都合をつけて参加してくださったのはかゆかゆさん、ファラオさん、るてんしとさん、米出さん、いっかいさん。お目当てはメビウス便でも登場した本年ドイツ年間ゲーム大賞ノミネート作「アメン・ラー」はじめ、ノミネート作品の数々。楽しみにしていたものばかりで、ゲーム経験を積んだ方々と存分に遊ぶことができた。
アメン・ラー|クランス|リシュリュー|ドラゴン島
アメン・ラー(Amun-Re / R.Knizia / Hans im Glueck, 2003)
ゲームは2つの競りを柱に進行していきます。ひとつめが土地の競り。毎ラウンド、プレイヤー人数分の土地が競りにかけられ、よりたくさん金額を出した人が自分の土地にします。ふたつめの競りはアメン・ラー神殿への捧げ物で、一番多く捧げ物をした人から特典が得られます。
土地は全部で15あり、それぞれ特色があります。ナイル川沿岸では耕作がしやすかったり、遠岸では臨時収入があったりします。この土地を競る方法は、トコロテン方式です。スタートプレイヤーからほしい土地に出す金額をビッドしますが、同じ土地でより高いビッドをつけられると、別の土地の競りに移動しなければなりません。その別の土地にほかのプレイヤーがいれば、より高いビッドをしなければならず、今度はそのほかのプレイヤーが「押し出され」ます。こうして各プレイヤーはほしい土地を考えながら各地を経巡り、競り値はどんどん上がっていきます。誰かが妥協して空いている土地を取ったら全員の土地が確定します。「エボ」の遺伝子競りを想起させます。
誰も来ないような不毛な土地に最安値「0」でビッドしておく「ぬるビッド作戦」は、ほしい土地が重ならなければただで土地が手に入りますが、そうは問屋は卸しません。ビッド値は1,3,6,10,15…と累積的に上がっていくので、どのあたりをビッドしておけばほかのプレイヤーに参入をあきらめてもらえるか、読み合いが楽しめます。
さて、手に入れた土地には農民を配置して収入を増やしたり、ピラミッドを建築して勝利ポイントを稼いだり、カードを購入して特殊能力を発揮したりします。いずれもやればやるほどお金がかかるので、その先のことも考えながらマネージメントしなければなりません。カードの引きは運もありますが、戦略的に発展させることが勝利につながるでしょう。考えます。
そして残り金でふたつめの競り、アメン・ラー神殿への捧げ物です。今度は同時公開の競りで、一番お金を出した人が神殿からごほうびをもらえます。このとき捧げ物を盗む泥棒カードを出すこともできますが、みんなが出してしまうと泥棒できないばかりか神殿の権威が落ち、農民からの収入が下がります。捧げ物はあまりしたくない、けれど収入はほしい。このジレンマといい、ゲーム理論のお手本みたいなものです。
こうして土地獲得、発展、捧げ物、収入を繰り返してナイル川沿岸の文明が豊かになっていきますが、3ラウンドが終わると、突如洪水が起こります。それまで育て上げた農民は流され、ピラミッドだけが廃墟のように残る…旧王国の終了です。一旦得点計算をした後、プレイヤーはそれまでの所有権を全て失い、新王国として再び土地の競りが始まります。しかし今度は旧王国とは違って、ピラミッドがそびえています。たくさんピラミッドがある土地は、必然的に競り値が上がるでしょう。この「いったんチャラ」というシステムがゲームをだらけさせません。
新王国が終わると再び得点計算をして、勝利ポイントの多いプレイヤーの勝ちです。この得点方法ですが、すごくたくさんあります。ピラミッド各1点、ピラミッドのトリオ各3点、東西沿岸最大ピラミッド各5点、神殿ポイント1~12点、カードに示された条件達成各3点、終了時のみ所持金額上位6~2点。このそれぞれを睨みながら戦略を組み立てていくには、ゲーム慣れしていることが必要でしょう。このごろ廃れかけているゲーマーズ・ゲームと呼ばれる所以です。
ゲームは2回目のプレイで予め戦略を考えてきたというるてんしとさんが金が尽きるまでとことん捧げ物作戦で旧王国でダントツ。そのアドバンテージを生かして逃げ切り優勝でした。カード勝利ポイントでかせいだいっかいさんの怒涛の追い上げも実らず、最大ピラミッドに全てをかけた米出さんは息切れ。かゆかゆさん・ファラオさんコンビは終盤になって爆発した収入が勝利ポイントに結びつかず。
ゲームフリークの快楽ポイントを至る所でおさえており、プエルトリコ以来といってもよい戦略ゲームでした。プレイ時間が5人で3時間近く(4人でも2時間コースらしい)かかっているのに冗長な感じはしませんでしたが、、システム・テーマ的にどこが新しいのかというと、やや疑問が残りました。もちろんこれは、贅沢な悩みだと思います。
クランス(Clans / L.Colovini / Winning Moves, 2002)
はじめ5色から自分の色を指定されます。これはほかのプレイヤーには最後まで明かされません。明かしてしまうと最初からガチガチの思考ゲームになってしまうので、そのへんを和らげるともにほかのプレイヤーの手から色を推理するという楽しみがあります。
手番には1つのマスにいる家コマを全部、隣接する集落に移すだけ。次第に集落が大きくなり、隣接する集落がなくなって孤立したら、村の完成です。
村が完成したら、その村を構成する家の色に点数が入ります。大きい村ほど点数が高くなりますが、同じ色はいくつ入っていても同じ点数なので、いろいろな村に得点源を得るために家1個だけ入れるのがベストです。しかし全色揃ってしまうと、家1個の村は全部除去されてしまうので注意が必要です。なお、完成させた人はチップを1つもらいます。これが最後に1点になるので、バカにできません。
チップが取られていくにつれて、ゲームが進みます。村を完成させるとボーナスが入る地形、完成させても0点の地形が指示されています。自分の色が入っている集落はボーナスの地形で完成させたり、自分の色が入っていない集落は0点の地形で完成させたりするなど、これを上手に利用しなければなりません。ただあまりあからさまにやると自分の色がばれます。
最後のチップが取られてボーナスが入ると、色を明かしてチップを加算し、得点の多い人が勝ちです。中盤以降からだんだん色が読めてくるので2位以下全員で1位のプレイヤーを叩き落すという共闘が起こりえます。ところがブラフをかまして途中まで利敵行為を繰り返したりすることもありますので油断はできません。4人だとNPCプレイヤー(誰のものでもない色)が出ますので、このプレイヤーのふりをするのも一手でしょう。
ゲームは最初から根拠なく黄色を徹底して叩いたるてんしとさんが1位。その黄色は、かゆかゆさんでした。コマをテキトーに移動させる序盤は一体何をしたらいいのかみんな呆然としていましたが、次第に色が読めてくるとシビアな争いに。「私は白です!」「○○さんは赤だから~」といった根拠のない途中の会話が楽しかったです。
ドラゴン島(Dracheninsel / T.Schoeps / Amigo, 2003)
各プレイヤーは自分の船からスタートします。対応する地形カードを出しながら島を進み、中央にあるドラゴンの財宝に到達します。自分の色のコマはカードを出さないでも進めます。しかし、このドラゴンの財宝は重すぎてひとりでは運べません。そこでもうひとりやってくるのを待ちます。2人になると、やっと運べるようになります。よっこらよっこら、2人のうちどちらかの船に持ち帰ります。
船につくと、船の持ち主が財宝を2等分するか裏切りカードを出すかの選択ができます。裏切りカードが出たら、相棒も裏切りカードが出せます。こうして交互に出し合い、先に裏切りカードが尽きた方は財宝をもらえません。しょぼーんとする間もなく次の財宝をめざします(財宝は次々と中央に補充されます)。
ここでは重要なのは、船の持ち主が2等分することにした場合、相棒はもう裏切れないということです。最後の財宝を除いては、2等分されることが多いようです。
カードには地形カードと裏切りカードのほか、ほかプレイヤーの手番を途中でストップさせるもの、ふりだしに戻すもの、地形タイルを変更できるもの、相手の手札を奪うもの、ドラゴンを投入して通行止めにするものなど、いろいろ派手なアクションカードがあります。手番は手札がなくなるまでいくらでもプレイできるので、回転を早くしていいカードを仕入れた方がよいかもしれません。
さて、100ゴールドから始まる財宝は、125ゴールド、150ゴールドというように後になるほど高価になり、最後は300ゴールドになります。それまで協調路線で進んできたならば、これを取るかどうかが勝敗をわけることになるでしょう。ただしそれまでに取った財宝によって、裏切らなければ絶対勝てない人、分配でも勝てる人、財宝を運んでいる人をふりだしに戻して財宝を消滅させる(※持ち主がいない財宝はなくなる)だけで勝てる人などの思惑が絡み合い、ゲームは非常にエキサイティングになります。いい手札が来ることを望みながらサドンデス合戦を繰り広げるのです。
最後の宝までは裏切りの一切ないお見合いプレイ。緑の私が作った森のハイウェイ(船から中央までの4連続を全て森にすれば地形カードなしで往復できる)は、すぐさまドラゴン2匹が常駐してつぶされてしまいました。それでも人の船で分け前を預かったりできるので、勝つチャンスは最後までなくなりません。引き弱な私とるてんしとさん、遠くまでやってきてはふりだしに戻されるファラオさんを尻目に、かゆかゆさんがさっくり分配して1位終了。
「最後の財宝になると終わらない」という評判を聞きましたが、むしろ最後の財宝こそが本番ラウンドでそれまでは準備ラウンドに過ぎないだろうという話になりました。もちろん、本番ラウンドまでにいかによい手札を揃えておくか、ほかプレイヤーとの差をつけておくかも重要なことですが。今度遊んだ時には、最後の宝より前に裏切ったらどうなるのかちょっと試してみたいです。そうすれば展開が変わるかも知れません(いずれにしても最後の300を取るかどうかは勝敗の大きな分かれ目になるでしょう)。カードの引きに大きく左右されるゲームなので、戦略ゲーム指向の人には物足りないかもしれません。
パワープレイ(Power Play / Tom Dalgliesh / AMIGO, 1997)
チームはフォワード3、ディフェンダー2、キーパー1の6枚からなります。この構成はみんな同じですが、キャラクターの強さはそれぞれ異なります。弱いキャラクターは控え選手と交替したり、ほかのチームとトレードしたりしてチームを強化していきます。
ある程度自信があったら、好きなプレイヤーを指名して試合を申し込みます。手札から一斉に1枚ずつ公開して、得点が入ったかどうかを調べます。基本的にカードの数字が大きい方に得点が入りますが、片方にキーパーが出ると得点がが入りません。弱いチームでも、出す順番では強いチームを倒せるのが楽しいです。また、中にはいくつか特殊能力を持ったキャラクターもいてゲームを盛り上げます。
勝っても負けても、チーム構成が公開されてしまうのでトレードの申し込みが殺到したり、つけこんでまた試合を申し込まれたりします。ルールでは誰かが試合に5勝したら終了とありますが、6人だったこともあって3勝でやってみました。
カードが1枚出るごとに一喜一憂、本当にもりあがるよいゲームです。10人までできるというのも魅力ですが、実際には6~7人が限度かもしれません。
結局アメン・ラーで時間を費やしたため数は遊べなかったが、話も面白いプレイヤーばかりでとても楽しかった。
おの「ところで『ビルだら』のビルって何ですか?」 かゆかゆ「ビルディっていうファミレスです」
情報を得た我々はイエサブの店員さんに場所を聞いてビルディで夕食。カワサキさんの日記で知った「プリンバナナサンデー」を頼んでみた。しかし何でも知っているかゆかゆさんおそるべし。
るてんしと「それ、うまいですか?」 おの「評価は後でさせてください」
プリンバナナサンデーは普通だった。そこから食事の話になり、そして健康の話へ。最後はどうやったら自分が寝たきりにならないかという話になっていた。年寄りじみている。
そんな話をとめどなくしているうちに22時。
米出「これからではもう帰れない。今日は宿を取ります」 いっかい「どこかカプセルホテルでもとるつもりです」
それなら柏木にでもと言ったのは誰だったろうか。生活時間の乱れを矯正したいるてんしとさんと、ファラオさんはお帰りに。残り4人はワイワイしゃべりながら新宿のゲームスペース柏木に向かうのだった。かなりハイテンション。ちなみにいっかいさんは二夜連続だそうで、ほとんど寝ていないようだった。
新宿の改札でいっかいさんが切符を見当たらなくしてしまう。気づいたかゆかゆさんが歩いていって改札越しに
「切符なら、胸のポケットに入れてましたよ」
すごい観察力だ。「だって、これがそういうゲームだったら」…これがかゆかゆさんがゲームに強い理由か。
そのかゆかゆさんの道案内(地図なしではとても行けなさそう)で初めて行った柏木は、週末でなかなか賑わっていた。カワサキさん、ハセガワさん、さとーさんなど知り合いも何人か。賑わっていたといっても、ゆったりしたスペースとオシャレなインテリアでいい雰囲気だ。店主の久永さんとは初対面。エプロン姿が似合う魅力的なおじさんだった。
そして「Number2」をリリースしたGames Bondこと久居さんとも初対面。開発中のカードゲーム「ナイスミドル」を遊ばせてもらう。バッティングを避けてナイスミドルをめざす3人用のカードゲーム。かゆかゆさんと米出さんと私とで遊び、ああしたらこうしたらと好き放題進言した。テーマが決まればとっても面白いゲームになりそうだ。
そして真夜中の1時から始まるブロックス(Blokus / B.Tavitian / Beverly, 2002)大会。8人がエントリーして3戦、マイナスポイントの少ない人を競う。結果はかゆかゆさんが優勝。「1年ぶりなものでお手柔らかに」と言いつつ強い。私は下から2番目だった。
途中で久永さんからブロックスの奥義を教えていただく。キーワードは「共存」。となりのプレイヤーと共存して置く場所を確保していけば、あとの2人に対してアドバンテージとなる。言われてみるとかゆかゆさんも、上位に入ったいっかいさんも共存の手を打っている。最初からケンカっ早い私に、マイナスがたまるのがよくわかった。しかしその実際となるとまだよくわからない。ブロックスの奥の深さを垣間見た。ブロックス
大会が終わると再びゲームへ。ハセガワさんが軽めをリクエストしてスロットブラザーズ(Slot Brothers / Shogo Toda, Shigesato Itoi / APE, Nintendo)。ここではトリプルセブンで1000点をたたき出した私が勝ち。言っておくが私は「ギャンブル好きの坊主(ハセガワさん)」ではない。ギャンブルは嫌いな方がツキがいいというのが私の持論。私は酒・タバコ・ギャンブルを全くといっていいほどやらない。「それで人生、何が楽しいの?」と言われたことがある。
そしてダイスゲームつながりでロイヤルターフ(Royal Turf/R.Knizia/alea, 2001)。ハセガワさんとカワサキさんの(話の)コンビネーションが絶好調で、暴走しまくっていた。「トラスト・ミー!(ハセガワさん)」「赤いキツネガンバレ(カワサキさん)」
あとは久居さんとゲーム開発や販売のことを話す。「Number2」は無事アレックス・ランドルフに献呈できたとのこと。カバンを空けるとごっそり自作ゲーム。伝説のアニマルオークションを遊びたいと思った。
そしていっかいさんとゆうもあのことなどを話す。「人材は集めるよりも、育てること」という話になった。そういうしているうちにMerryniceさんが6月上旬に発売予定のゆうもあ情報誌「シュピール」の校正原稿を届けにいらっしゃる。すばらしく美しい。特にプレイスペース広島の広告が見ものだ。ぜひ皆さん買って下さい。580円。
こうして午前8時に柏木を辞す。米出さん・かゆかゆさん・カワサキさんはアメン・ラーからダンジョニアと重量級ゲームをまだ遊んでいた。心身ともにタフであるといわざるを得ない。帰り際になって、ずっと別卓で盛り上がっていた人がたかのさんの日記でおなじみ田中風太郎さんであったことが判明。「おのさんがいるというのはブロックス戦績表でわかっていたが、誰がおのさんなのかわからなかった」という。こういう出会いもまた嬉しいものだ。私はよくバンダナをかぶっていますよ(ボーパラ1号参照)。
ゲームを通して人のつながりがどんどんできてくる。また楽しからずや。