帰省していたところにいいタイミングでYBGCの例会が行われた。場所は将棋で有名な天童市のインターネットカフェ「Webちゃや」。最近できたばかりのきれいでおしゃれな店内。ここのオーナーがYBGCのmuraさんと知人で、ブースをゲームに使ってもよいということになったらしい。食事を出してもらったり、ヨーグルトをご馳走になったりしたのに料金はmuraさんのコネで超割引。田舎はコネだと強く感じたところでした。仙台から神尾さんら3名、そしてmuraさんと私。5人でも十分ゆとりのある広いブースと、店内貸切状態で、夜遅くまで快適に楽しむことができた。
アベカエサル(Ave Caesar / W.Riedesser / Ravensburger 1989)
どうしてそんなに高値で取引されるほど評価が高いのでしょうか?まず大きいのはコンポーネントの妙です。馬車のコマとコインはプラスチック製ですが造形といい色合いといい、古代ローマの雰囲気がよく出ています。高級感があります。
それからボードのマス目の割り方。同じマスには馬車が1台しか入れないというルールがあり、うまく立ち塞がることで後続のプレイヤーを進めなくするのがこのゲームのポイントです。またアウトコースは遠回りになっています。そのマスの作り方が実にうまくできています。
そしてカードを出してコマを動かすという、運の要素を抑えたゲーム進行。全員同じ内容のカードから3枚取り、1枚出しては補充していきます。ですから他プレイヤーのカード状況がある程度予想でき、それに応じた戦略を立てる余地があります。アウトコースの遠回りを繰り返していると、カードがなくなってゴールできないという事態も起こります。
レース中に1回、ピットに入ってカエサル皇帝に挨拶をしなければなりません。ピットの入り口がまた激戦区です。誰かが塞いだりして入れなかったら、失格になってしまいます。
基本的にみんなお互いにコース取りで邪魔しあうゲームなのでストレスがたまりがちです。ため息を漏らしたり、「くっそー!」「いじわる!」と罵ってみたり、泣きまねをしてみたり、そこに人間性が出ます。でも、他プレイヤーの隙を縫って一気にごぼう抜きしたときの爽快感や、1位と2位との激しいデッドヒートになったときの緊張感は、レースゲームの本質的な面白さを余すことなく伝えます。
またビリでも最後まで1位を取れる可能性が残っているのがこのゲームのすばらしいところ。1位は最高値の6を出せないので、差が縮まりやすいのです。勝負は僅差で決まります。
3レース行いましたが、いずれもスタートダッシュでいいカードが来なかったので常にビリになるという展開。しかし直前にプレイヤーがいるときのカードの出し方に選択肢があることを学びました。あえて小さい値のカードを出して少し距離をおくか、それともスリップストリームで付いていくか。カードの来る順番があるので運の要素も少しありますが、戦略的に考える場面は多々あると思いました。
目には目を(Wie Du Mir… / W.Riedesser / Schmidt 1991)
手番にはサイコロを振って好きなコマを動かします。自分の色のコマでなくとも動かせるところがポイントです。止まったマスではチップをもらったり払ったり、またアクシデントカードでさまざまな効果があります。全部のコマがゴールしたときに一番チップの多いプレイヤーが勝ちです。
ここまではありがちかもしれませんが、チップは11枚以上になるとすぐ4枚に減らされてしまうというルールがあります。つまりたくさんもらえばいいというのではありません。チップを8枚持っているプレイヤーのコマを、「チップを3枚もらう」に入れればバーストするわけです。
みんなが自分にはプラスに、他の人にはマイナスにと考えているので、チップはあまり貯まりません。「やられたら、やり返せ」が原則です。
ですが、進むのはサイコロですし、アクシデントカードには激しくチップをやりとりするものが多いので、運の要素が強いです。狙って勝てるのではなく、終わってみたら勝っていたというような感じです。神尾さんと私が同点1位。実力で勝ったような気がしませんでした。
バケツくずし(Alles im Eimer / S.Dorra / Kosmos 2002)
システムとしてはトリックテイキングの変形で、新しいものはないのかもしれません。しかし、バケツのピラミッドがこのゲームをエキサイティングにします。
前回は「カードは出せても、上の方のバケツなら状況によって崩してしまう」ということを確認しました。これによって無用にカード枚数を減らすことを避けて、戦力を温存します。今回はさらにもう少し戦略を練ってみました。
相手のピラミッドの中枢部分を狙って攻撃していくのは基本ですが、1回目の攻撃ではカードがまだたくさんあるので防御できるでしょう。そこですかさずもう1回同じ色で攻撃です。手札の状況とカードプレイの記憶をたよりに、「このプレイヤーはこの色が弱くなっているはずだ」という予想を立てて攻撃していきます。
それから、隣の隣のプレイヤーを攻撃したいときはわざとぬるいカードを出して、隣のプレイヤーに攻撃チャンスを与えるといった、副官的な出し方もあります。1匹動物を放したら、それがどんどん増えていって遠くの村のバケツに行くころには大群になっているといったところです。ただ、あまりぬるすぎるともう1周する羽目になり、自分の首をしめることになります。
まわり具合でどうしても序盤にがらがら崩れてしまうプレイヤーがいます。その下家は当然無傷であることが多いので、どうやって無傷のプレイヤーを皆で叩くか、あれこれ狙ってみると面白いです。
ゲームは序盤崩れまくりのmuraさんの下家で無傷だった夢さんが後半の集中砲火をかいくぐって逃げ切り1位。夢さんの下家だった私は直接攻撃しずらく、狙っても結局muraさんが崩れたりしていました。
エルフェンランド(Elfenland / A.R.Moon / Amigo 1998)
ゲームはそれぞれのルートをどの乗物で通るか決めるところから始まります。大猪は平原と森しか行けないなど、乗り物によって得意不得意があります。プレイヤーは順々にルートの上にチップを配置していきます。
チップを置いたら、移動開始です。今度はチップに対応するカードを出して街から街へ移動していきます。移動した街では自分の色の石を取っていきます。
他プレイヤーがチップを置いたところでもそのカードを持っていれば、便乗して移動できます。カードは出せる限りだすことができ、8枚あるのでうまくいけば8つの石を集めることができます(石は全部で20個)。
移動が終わったら使ったタイルとカードを捨て、また補充してチップを配置するところから始めます。これを4回繰り返して一番多く石を集めたプレイヤーが勝ちです。
4年ぶりに遊んだのですが、実は前回の評価は最低でした。「インテリアに最適」(ノイエ)という評がゲームとしての面白さがないことを端的に物語っています。単独で移動しようとするとチップが足りないので、みんな団子状に移動するのが基本になります。その中で他のプレイヤーより1つでも多く進みながら、主導権を握っていくことを狙います。しかし結局のところ、チップの配置具合と、手札のカードの状況が一致しているかどうかで全てが決まり、かつそれは運によるところが大きいです。戦略的な要素が低く、努力が実らず、棚ぼたで勝利が訪れるようなゲームはあまりいいゲームとは言えません。
今回はmuraさんがSNE訳付きを持ってきたので折角だからとプレイ。期待しないで始めたのですが、これが意外になかなか面白かったです。その理由を考えると、
- ゲーム終了時にいるべき街が決まっているというバリアントを採用。これによって最終ラウンドがエキサイティングになった。
- 障害物チップの出し方をよく考えた。第何ラウンドで出すか、またラウンド内ではいつ出すか、お互い牽制しあうと考えることが多くなる。ルートが完璧だと思ったそのときに、障害物チップが置かれて計画が台無しにされたり、そうならないようにカモフラージュのルートを作ったり、戦略が増える。
- 移動に必要なカード数が2枚のチップを置いて妨害する。他プレイヤーがいかにも通りそうなところは最初にこのチップを置く。当然恨みを買い、果てしない邪魔合戦が起こる(今回は最終ラウンドだけになりましたが)。余ったチップを邪魔に使うのはもちろん、必要なチップも見切りをつけて邪魔に使っていくことも時には必要。
年間ゲーム大賞を受賞した理由も、「単に絵がきれいだから」ではないのだなと再評価したところです。ゲームは僅差の中でカードを残した神尾さんが1位。同じメンツでもう1回やったらかなり展開が変わりそうです。それからSNE版の訳は原文ルールそのままに日本語を写植したフルカラー版ですばらしかったのですが、箱がそのままなのは中途半端な感じです。