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ボードゲームの盗作判断をめぐる4つの立場

国内外共に新作ボードゲームのリリース数が急増する中、時折盗作疑惑が浮上している。

当然のことながら作者・出版社が故意の盗作を認めるわけはないが、故意でなくても酷似した作品が発表されると、既存の作品の作者・出版社に抗議されたり、ボードゲーム愛好家に批判されたりすることになる。そのため問題は故意にアイデアを盗んだかどうかではなく、「どれくらい似ていると盗作が疑われるか」というところだ。

著作権的にはイラストも含めて全同(つまり海賊版)でない限り問題ない。また、既存の作品のメカニクスを一部用いたものもまず批判されることはないだろう。問題は類似性が相当高い場合で、あるボードゲームが既存のものに結構似ていても、「盗作/剽窃/パクリ」といわれる場合といわれない場合がある。この境界線は曖昧で、愛好者が恣意的に判断している様子はしばしば「学級会」などと揶揄される。「冤罪」を防ぐためにも、できるだけ客観的な判断基準がほしい。

ゲーム探険隊』では、すでに死滅したゲーム、外国のゲーム、古いゲーム、マイナーなゲームなどでルールがはっきりしない場合、正しいルールの決め方として①現地主義(実際にやっている人たちが採用しているルールが正しい)、②合理主義(整合性のあるものが正しい)、③功利主義(一番面白いルールが正しい)、④文献主義(文字通り本に書いてあるルールが正しい)が挙げられている。この4つの立場を応用して判断してみてはどうだろうか。

  1. 現地主義:実際にどちらも遊んだ人たちが盗作と感じたらアウト
  2. 合理主義:そのゲーム固有のメカニクスが使われていたらアウト
  3. 功利主義:似ている前作から面白くなっていなければアウト
  4. 文献主義:ルールを同じ内容で記述できるならばアウト

このうち①は、どれくらい似ているかは感じ方が人によって異なるため、相当多く人が遊んで、その多数意見を取らないと確定しにくい。この点は面白くなっているかの判断に委ねられる③も同様である。また④については、完全一致でない限り盗作と判断することはできず、海賊版に対してしか適用できない(法的・著作権的はそのような判断になると思う)。

というわけで、客観的で一番信用性が高いのは②合理主義となる。他のゲームにはない独自のメカニクスやギミックを流用していれば、たとえテーマやキャラクターが代わったとしてもプレイ感は変わらず、盗作判断は妥当と考えられる。例えば『Toc Toc Woodman』は、「プラスチック製の樹皮を叩いて剥ぐ」というメカニクス・ギミックがこのゲーム独自のものであり、『Bamboo Bash』はこれを流用している点で、他にどんな要素を付け加えても盗作というべきである(同じ関係者が発表したという事情も加味されるだろう)。

しかし現代のボードゲームは、必ずしも独自のメカニクスをもたないことも多い。『ゲームメカニクス大全』を見れば分かるように、ワーカープレイスメントもデッキビルドもプレイヤージャッジも数多くのゲームで使われている。例えば「ハゲタカもどき」(一斉にカードをオープンして数値を比べるアレ)は『ハゲタカのえじき』の盗作とは言われないし、「ドミニオンクローン」を『ドミニオン』のパクリということもできない(この表現はかなりそれに近いニュアンスがあるけれども)。

その場合は単一のメカニクスではなく、「そのゲーム独自の複数のメカニクスの組み合わせ方」を流用しているかどうかで判断できるだろう。例えば『ジャストワン』は、「ヒントによるお題当て+協力+キャンセルあり」というメカニクスの組み合わせが独自のものであり、この組み合わせで別のゲームを出せば、たとえお題カードを大きく変更しても盗作と呼ばれやすくなるだろう。逆に言えば、そこに含まれる汎用性の高い個々のメカニクスを取り上げても盗作ということはできない(実際そのようなゲームはごまんとある)。

愛好者諸氏におかれては、「既存のゲームと似ているな」と思っても、多くのゲームで用いられている汎用性の高いメカニクスであれば、他にどのような要素があって、どのように組み合わせられ、そのゲームの独自性を生み出しているか分析してからご判断して頂きたい。一部だけの類似性で批判するのは早計である。

近頃はゲームマーケットだけでなく、クラウドファンディングでボードゲームを制作する方が増えてきた。中には知ってか知らずか、既存のゲームに酷似するものを作ってしまう方も少なくない。毎年1000タイトル以上の新作が出ている中で偶然の事故は仕方ない面もあるが、有名作品とかぶっていれば、盗作とまでは言われなくても評価が下がり、売れ行きに悪影響を与える。製品化を考える前に、お近くのボードゲームカフェなどに相談して、少なくとも既存の有名作品に似たようなものはないかリサーチしておくとよいだろう。

珍ぬ:Table Games in the Worldのエッセイ「ボードゲームの盗作判断をめぐる4つの立場」を読んで、いろいろ考えてみる。

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数字が分からないトリックテイキング『luz-ルイス』4月12日発売

東京・上野のボードゲームカフェ「コロコロ堂」は4月12日、トリックテイキングゲーム『luz-ルイス』を発売する。ゲームデザイン・新澤大樹(倦怠期)、アートワーク・高畑慧、3~4人用、10歳以上、30~45分、2200円(税込)。ゲームマーケット2021春ではEngames&コロコロ堂(A05)で先行販売される。

トリックテイキングゲームを専門に発表しているサークル「倦怠期」がゲームマーケット2014秋に発表した作品をリニューアル。手札の数字がわからない状態で何トリック獲得できるかを予想するインディアンポーカー風のビッド式トリックテイキングゲームだ。

配られたカードは数字をみんなに見えるように置き、自分からは色しか分からない。各色の数字はとなりの人に昇順に並べ替えてもらい、ゲーム中に少しずつ強弱が分かってくる仕組み。その中で自分が予想した通りにトリックを取るようコントロールしなくてはならない。

トリックテイキングゲームはゲームマーケットで人気のジャンルで、毎回数多くの新作が発表されているが、数年経って別の会社から発売されるものは少ない。色褪せない魅力を堪能しよう。

内容物:カード 54枚(57mm×88mm)、チップ 19枚、説明書(日本語・英語)

コロコロ堂:luz-ルイス