ボドゲ五観の偈
『五観の偈(ごかんのげ)』とは、禅宗で食事の前に唱える偈文である。 修行道場では毎日、朝食と昼食の前に、みんなで声を合わせて唱えている。すべてに感謝し、自らの行いを反省し、欲張らず、節制を心がけ、修行に邁進することを誓う。
これのボードゲーム版はできないかと考えた。ボードゲームという趣味の敷居を高くするつもりはないが、この頃ポジティブに臨めないというお悩みをおもちの方は遊ぶ前に密かに心に誓ってから始めてはどうだろう。
一、楽しさを つくってくれて ありがとう
(このボードゲームがどのようにしてできたかを考え、デザイナー、出版社、流通業者、翻訳者、インストしてくれた人たちに感謝をいたします。)
二、今ここで ご一緒できて 幸せです
(一緒に遊ぶことができるのも何かの縁。ここに集ってくれた仲間にも感謝をいたします。)
三、言いません やめようゲームの 好き嫌い
(どんなゲームでも腐ったり文句をいったりせず、最後までめいっぱい楽しむことを誓います。)
四、脳きたえ 心なごます よき薬
(ボードゲームとは良薬なのであり、頭脳とこころの健康を得るためにプレイします。)
五、レッツプレイ 今を大事に 生きるため
(今このボードゲームをプレイするのは、自分の人生を輝かせるためです。)
こんなことを思いついたのは、長年ボードゲームをやっているうちにボードゲームの欠点をあげつらったり、あまつさえデザイナーや、ショップの文句をいうことにボードゲームの楽しみを見い出しているような愛好者の話を聞いたからである。振り返れば自分自身にも知らず知らずのうちにそうなりかけているような気もする。始めたての頃のように純粋な気持ちで楽しもうとするならば、感謝や謙虚な気持ちといった精神面でのコントロールが必要になってくる。
私のボードゲームライフで一番大切なものは一緒に遊んでくれる仲間。そしてすぐれたアイデアと膨大なテストプレイでボードゲームを開発してくれるデザイナー、美しいコンポーネントで製作してくれる出版社、面白いゲームを厳選して輸入し、ルール翻訳を手配し、販売してくれる輸入代理店や専門店といった働く方たち。さらに情報を融通し合う世界のボードゲーム愛好者、どこまでいっても人人人である。ありがとうございます。
イル・ヴェッキオ(Il Vecchio)
待ちぶせでアイテムゲット
得点するために必要なアイテムは、「仲買人」から手に入れる。5人の仲買人は盤上をぐるぐると回っており、同じマスに自分の一族コマがあれば、そのアイテムを獲得できる。アイテムを提供した仲買人は次のマスへジャンプ。同じアイテムを手に入れるには、その移動先まで追いかけるか、そろそろ来そうなのを予期して待ち伏せしておかなければならない。何人かいる一族コマの適切な配備が大事だ。
アイテムを集めたら、盤面の隅にある3つの県(ヴェネツィア、ミラノ、教皇領)か、フィレンツェにコマを移動させて、得点にできる。早く着くほど得点が高く、またもらえるボーナスタイルの選択肢も多い。
アイテムを手に入れた一族コマは横に倒され、復活させるには一手番休まなければならない。また、3つの県とフィレンツェに行ったコマは、もう帰ってこない。利用できるコマが少なくなっていく中でのやりくりが問われる。社員がどんどん退職していくタクシー会社で、配車を考えるようなイメージ。
さて、フィレンツェ付近で力をつけるプレイヤーたちに、イル・ヴェッキオも黙ってはいない。誰かが得点をあげるタイミングでタイルをめくって、アイテムを奪われたり、一族コマを取り除かれたりする。綿密な計画が狂わされることもあって結構手痛い。最後に、ボーナスタイルの得点を加えて勝利点の多い人が勝利。
4人で60分くらい。一手番でできることが小さいため、さくさく進んだ。次の自分の番に仲買人がどこまで来そうか予想するよりも、同じマスにいるほかの人より先に取ることを考えるためである。さらに、特殊能力を軸とした進め方をするので戦略も定まりやすい。私は巻物を手にれやすい特殊能力があったので、巻物が必要なフィレンツェに特化。フィレンツェでは新たな特殊能力か、ボーナスタイルを選べるが、新たな特殊能力に力を入れて、ボーナスタイルを取るのが遅れてしまった。その結果、ボーナスタイルに沿って盤面の状況を整える余裕がなく3位。1位は、得点の高い(しかし集めるアイテムの多い)教皇領に力を入れつつ、ほかのところも手を抜かなかった神尾さん。
一手番でできることが小さいということは、微調整力が問われるということでもある。メインの戦略から外れるリソースを使って、どれだけ細かい点数を集められるかも考える必要があり、時間は長くないがテクニカルという意味で、ゲーマーズゲームといえそうだ。
Il Vecchio
R.ドーン作/ホールゲームズ(2012年)
2~4人用/10歳以上/60分