シュピール’13:スカウトアクション
ボードゲーム専門誌「フェアプレイ」は、シュピールで発表された新作の人気投票「スカウトアクション(Scoutaktion)」を現地で行い、結果を発表した。この投票は重複投票を避けるため記名式で行われ、1~5の5段階で評価する(1が最高)。結果は以下の通り。
1位はハンス・イム・グリュック社(ドイツ)が「ここ数年で一番重いゲーム」という触れ込みで発表した『ロシア鉄道』。2位にはM.ゲルツがロンデルシステムから脱却した新作『コンコルディア』、3位には『テラミスティカ』の出版社による『グラスロード』が入った。3位まで全てドイツの出版社で、全体的にも非ドイツゲーム人気だった近年の傾向を打ち破って、ドイツゲームが再び人気を集め出している。
また規定票数には届かなかったが評価の高かったものとして、『アタカマ(Atacama)』、『ブレーマーハーフェン(Bremerhaven)』、『カヴェルナ(Caverna)』、『シトラス(Citrus)』、『エッベス(Ebbes)』『ルイス&クラーク(Lewis & Clark)』、『マイス&ミスティクス(Maus & Mystik)』、『ネーションズ(Nations)』、『プロスペリティ(Prosperity)』が挙げられている。票数は、各ブースが用意したテーブルの数に大きく左右される。
【フェアプレイ・スカウトアクション】(40票以上)
1位:ロシア鉄道(Russian Railroads/ハンス)1.73/85票
2位:コンコルディア(Concordia/PD出版)1.84/64票
3位:グラスロード(Die Glasstraße/フォイヤーラント)1.91/65票
4位:ブリュッセル1893年(Bruxelles 1893/パールゲームズ)2.12/49票
5位:カシュガル(Kashgar/コスモス)2.13/63票
6位:ロココの仕立屋(Rokoko/エッガート・ペガサス)2.15/41票
7位:スパイリウム(Spyrium/イスタリ)2.21/72票
8位:マデイラ(Madeira/ホワッツユアゲーム)2.22/58票
9位:ラブレター(Love Letter/ペガサス)2.24/97票
10位:ウゴ(UGO/プレイジスワン)2.3/44票
11位:アメリゴ(Amerigo/クイーンゲームズ)2.35/85票
12位:炭鉱讃歌(Glück Auf/エッガート)2.4/55票
13位:雲南(Yunnan/アルゲントゥム)2.44/40票
14位:ギルドマスター(Guildhall/ペガサス)2.48/42票
15位:ノーティカス(Nauticus/コスモス)2.48/42票
16位:サンスーシ宮殿(Sanssouci/ラベンスバーガー)2.61/59票
17位:タシュカラル:伝説のアリーナ(Tash-Kalar:Arena of Legends/チェコゲームズ出版)2.75/48票
・Fairplay Online:Tagesergebnisse der Scoutaktion 2013
シュピール’13:ヤポンブランド(2)
(前回のつづき)ヤポンブランドで続いてお話を伺ったのは『トレインズ』の林尚志氏。AEG社(アメリカ)が配っている大きなバッグには、『トレインズ』が大きく乗っていて力を入れていることが分かる。
Q:今回のラインナップの売れ行きはいかがですか?
林:『Sail to India』が完売して、『Patronize』『ひもサバンナ』も好調です。かつては『ひも電』など「飛び道具」が注目されていたのですが、今は「飛び道具」でなくても売れるようになってきました。初日はヤポンブランドの前に長い行列ができて、となりのブースに迷惑をかけないか心配したほどで、まるでゲームマーケットでしたよ。
Q:『トレインズ』も注目されていますね。
林:AEG社が、宣伝コンテストをしたんですよ。優勝者には『トレインズ』がもらえるという。それで『トレインズ』をもっていないのに宣伝してくれた方がいらっしゃって(笑)、その様子がYoutubeにアップされています。
Q:ゲームマーケットでも新作『江戸屋敷』を準備していて、精力的に制作されていますね。
林:ゲームデザイナーには1つの作品をじっくり売っていく人と、新しいのを次々と出す人がいて、私は後者のほうだと思います。だからどんどん作りたいですね。日本では小箱が受けますが、ドイツでは箱が大きいほうが注目されます。いつかコスモス社やハンス・イム・グリュック社から大箱の作品をリリースしたいと思っていますよ。
お次は有限浪漫の藤田氏。『Donburiko』で初出展となる。ブースの前で通りかかった人たちにパンフレットを配っていた。
Q:初出展していかがですか?
藤田:言語の壁には苦労しましたが、遊んで下さった人はたいてい買ってくださったのが自信になりました。ただ、ドイツの方は箱が大きくて長時間のボードゲームを求めるので、物足りないということもあるかもしれません。
Q:ゲームマーケットも出展されますね。
藤田:実は新婚旅行も控えておりまして、新作は来年の春になりそうです。来年のシュピールにもぜひ参加したいですね。
Q:おめでとうございます!
同じく『赤ずきんは眠らない』で初出展の佐藤純一氏は、薫風から独立したJunias(ユニアス)という団体名で参加していた。
Q:初出展はいかがですか?
佐藤(純):楽しくてしょうがないですね。面白いって言ってもらえるし、サインを求められたりもしました。日本と比べて、規模の違いに驚きましたね。「ここに来ている人みんながボードゲーム好きってホント?」と思うくらいで。
Q:海外の人にも楽しんでもらえたというのは次につながりそうですね。
佐藤(純):子どもが大人に勝つ場面があって、そのときにちょうど売り切れたというニュースも入ったので嬉しさ倍増でしたね。次のゲームマーケットでは『ワリトリペンギン』という作品を用意していますが、来年のシュピールにどうやって来ようか、今から思案中です。
Q:この時期に1週間休むのはたいへんですものね。
最後にお話をお聞きしたのはconceptionの佐藤慎平氏。『タマゴリッチ』で初出展である。
Q:初出展はいかがですか?
佐藤(慎):受け入れてくれる層が一気に広がって、チャンスが増えたと思います。もともと私は子ども向けに積み木などの創作活動をしてきたので、こちらでも子どもに手応えがあったのは収穫でした。
Q:今年はたくさんの方が参加していましたが、よいことがありましたか?
佐藤(慎):デザイナーが飛行機で12時間も一緒に乗っていると、やはり新しいゲームの制作会議のようになりましたね。その中には製品化できそうなものもあって、ヤポンブランドとして新しいゲームを出そうかなんて話になっています。
Q:それはすごい。ぜひ実現して下さい。
ほかにもたくさんの方からお話を伺いたかったが、ブースが当番制になっていて皆さんお忙しそうだった。デザイナーだけでなく、コーディネーターの健部伸明氏をはじめ、通訳やインスト担当の外国人スタッフが東奔西走しており、多くの人に支えられていることを感じた。
今、日本のゲームマーケットに海外の出版社の熱い視線が注がれている。早くからスカウトを送っていたAEG社(アメリカ)やカクテルゲームズ社(フランス)の成功に、ほかの出版社も追随しようとしている。エッセン・シュピールの新作は約800タイトル。これに対してゲームマーケットの新作は今や180タイトルに達し、独創的な作品が次々と発表されている。ヤポンブランドの活躍とゲームマーケットの成長によって、今後も日本は世界的な注目を浴びていくことだろう。