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奥野かるた店ゲームデザイン討論会

3月14日、東京・神保町の奥野かるた店2階にて、ゲームデザイン討論会の公開ディスカッション「奥野の百年、ゲームデザインの千年」が行われた。定員40名は満員となり、3時間半にわたって熱い議論が繰り広げられた。
パネリストはデジタルゲーム界から『ゼビウス』『ドルアーガの塔』の遠藤雅伸さんとAI研究者の三宅陽一郎さん。アナログゲーム界からはゲーム研究家の草場純さん、ドロッセルマイヤーズの渡辺範明さん、当サイトの管理人小野が務めた。コーディネーターは遊戯史学会の蔵原大さん。
はじめに奥野会長と草場さんから奥野かるた店について説明があり、100年にもわたってアナログゲームを供給し続けてきた歴史に参加者一同、思いを馳せた。遊戯を商いにすることに後ろめたさがあったという会長の回顧が印象的である。今でこそ、伝統ゲームは社会的な地位を獲得しているが、賭博の道具という見方もあったことだろう。
第1部は草場さんによるアナログゲームの歴史、第2部は遠藤氏と三宅氏によるデジタルゲームの歴史、そして第3部は参加者のアイデアによるフリーディスカッションという構成。第1部は1万年の歴史を1時間足らずで振り返るのにさすがに無理があったが、草場さんは興味深いエピソードをはさみながら駆け足で説明していく。そして伝統ゲームの作者性について議論が行われた。作者はいたけれども忘れ去られたのか、それとも自然発生的に生まれ改変されて今日に伝わっているのかは、確かめようのないことではあるが考えてみるのも面白い。
第2部は主にアナログゲームとデジタルゲームに本質的な違いがあるのか否かという論点だった。ゲームセンターの衰退によって、アーケードゲーム愛好者がボードゲームを遊ぶようになっているという話や、遠藤さんが教えている東京工芸大学の授業では、アナログとデジタルの両方を使うという話も出た。そこから、デジタルゲームにおけるブラックボックスは、アナログゲームでもTRPGのゲームマスターや、S.フェルトの複雑なシステムなどで近いものが見られるという指摘や、デジタルゲームの即時性も、ミクロに見ればターン進行でなされているという指摘がなされた。ゲーム好きも極まるとデジタル・アナログの区別は意味をもたなくなるようだ。
第3部は参加者からの提案で、普及(特にボードゲームミュージアムの必要性から、アーカイブの話)、プレイヤーの想像力(ストーリーとナラティブの違いについて)などが議論された。終了後もパネリストと聴衆で懇親会が行われ、夜遅くまで盛り上がっていた。
討論会の様子はYoutubeで見られるほか、togetterにダイジェストがまとめられているのでご覧頂きたい。
USTREAM:ゲームデザイン討論会―公開ディスカッション
togetter:ゲームデザイン討論会―公開ディスカッション2015.03.14

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カタンの開拓者たち:古代エジプト(Die Siedler von Catan: Das Alte Ägypten)

ナイルを渡ってピラミッド建設
カタンの開拓者たち:古代エジプト
『カタンの開拓者たち』シリーズの最新版。スタンドアローン(拡張でない独立作品)ものとしては、ウィーン(2013年)やドイツの州バーデン・ヴュルテンブルク(2012年)など、ルール変更のないご当地ものが近年発売されてきたが、この作品はルールに変更があり、プレイ感に変化を持たせている。
追加されるルールはパピルス船と、ピラミッド建設と、神カードである。マップ中央にはナイル川が走っており、ここを渡るにはパピルス船を作らなければならない。パピルス船は『航海者版』と同様に街道に含まれるが、建設コストは街道より1枚多い。そしてこれを作らないと、ピラミッド建設ができない。
ピラミッド建設は直接得点にはならないけれども重要な要素だ。資源を支払ってピラミッド石材タイルを置く。一番最近建設したプレイヤーが「大臣の好意」というカードを受け取る。このカードは強力で、手札の上限が9枚に増えるほか、毎手番1回だけ、1:1交換ができる。資源が揃っていなくてもどんどん建設できるので、「大臣の好意」はずっともっていたいのだが、ほかのプレイヤーがピラミッドを建設するともっていかれてしまう。
さらに、ピラミッド建設に最も貢献していない(建設した石材数が最下位の)プレイヤーは、「ファラオの呪い」を受けなくてはならない。これは-1ポイントになる。最下位でなければ「ファラオの祝福」となり+1ポイント。つまり2ポイントの開きが出るわけで、「ファラオの呪い」をもったまま勝つのは難しい。
最後に神カード。最初から1枚ずつもっており、使ったらもう1回使うか別の神カードに交換できる。効果は次のとおり。いずれもかゆいところに手が届く効果だ。
ホルス:資源をほかのプレイヤーと強制的に交換する
プタ:牛車(街道)の建設で資源1枚を代用できる
アトゥム:資源が手に入らなかったとき資源1枚を取る
オシリス:先端の牛車を移動する
アムン:2:1交換できる
イシス:「7」が出たとき資源を失わない。枚数以下ならば資源1枚を得る
トット:発展カードを取るとき資源1枚を代用でき、3枚から選べる
ハピ:兵士(騎士)を捨てると開拓地や都市が安く作れる
バステト:盗賊を砂漠に返し、移動元から資源1枚を得る
マート:ポイントがより多い1人から資源1枚を取る
4人プレイで60分。パピルス船を作る資源が品薄ですっかり出遅れる。何とか交換してパピルス船を作ったときには、その先の街道はすっかり埋まっていた。仕方なくピラミッドを建設して「大臣の好意」で開拓地を都市に変えるところまではできたが、発展カードを買うところまで行かず、そのうちにbashiさんが発展カードのポイントで一気に片をつけた。
『カタンの開拓者たち』の面白さを損なわず、勝ち筋をちょっとだけ増やして展開の多様性を生んでいる。都市のコマがピラミッドだったりスフィンクスだったりして雰囲気がよい。
Die Siedler von Catan: Das Alte Ägypten
K.トイバー/コスモス(2014年)
3~4人用/10歳以上/75分