2021年年明けの新作:アミーゴ
例年1月下旬に行われているニュルンベルク・シュピールヴァーレンメッセは新型コロナウィルス感染拡大の影響で7月20~24日に延期された。しかしドイツ年間ゲーム大賞などの選考は従来どおりの日程で行われることもあり、各出版社は年明けの新作を発表し始めている。邦題は直訳で、国内流通時は別のものになる可能性がある。
小箱で楽しいカードゲームをリリースしているアミーゴ社(ドイツ)から。
ゲームデザイン・R.クニツィア、イラスト・R.ゾマーカンプ&B.シュペルガー、2~6人用、8歳以上、20分。
一昨年のドイツ年間ゲーム大賞に選ばれたカードゲームがダイスになった。
各プレイヤーは数字カードを6枚手元に並べ、手番にはダイスを3個振るか降りる。出目によってカードを捨てることができるが、出た目のカードがなければペナルティーチップを受け取らなければならない。誰かがチップを全部捨てるか、全員が降りたらラウンド終了。残ったカードはマイナス点となり、チップで受け取る。カードを全部なくすか、ダイスで全部ラマが出たら、チップを1枚捨てることができる。既定ラウンドでチップの一番少ない人が勝つ。
ゲームデザイン・K.アルテンブルガー、イラスト・フィオーレ社、2~6人用、8歳以上、15分。
宇宙テーマの協力カードゲーム。
各自9枚のカードを裏にして並べ、何枚かをめくっておく。プレイヤー人数と同じ数の宇宙人チームを作ることが目標だ。手番には他のプレイヤーが自分の前から裏になったカードを1枚選んでめくる。そのカードと同じ宇宙人を5枚集めるか、全て異なる宇宙人を5枚集めると宇宙人チームの出来上がり。しゃべってはいけないので、どれがどのカードなのかはジェスチャーなどで伝えなければならない。
ゲームデザイン・H.シャフィール、イラスト・Y.シモーニ、2~4人用、7歳以上、10分。
2019年にドイツ語版が発売された『クラック!』のディスクをカードに変えたバージョン。
ディスクの周囲に7枚のカードを並べ、ダイスを2個振る。その出目を見て、ダイスで出たイラストがちょうどの数だけ書いてあるカードを探し、手で取る(木が2本、動物がいないなど)。先に取った人がカードを獲得。どのカードも合わない場合は、中央のディスクを取り、一番早かった人が7枚全部を獲得する。カードがなくなったとき、獲得したカードの多い人が勝ちとなる。
ゲームデザイン・K.フィッシャー、イラスト・F.フォーヴィンケル、3~6人用、10歳以上、45分。
1ラウンド目は1枚、2ラウンド目は2枚……とカードが配られ、獲得トリックを宣言し、宣言通りならば得点となるトリックテイキングゲーム。必ず勝つ魔法使いと、必ず負ける愚者が4枚ずつ入っているほか、魔法使いよりさらに強いドラゴン、愚者よりもさらに弱い妖精、手札を変えるジャグラー、切り札の色を変えるワーウルフ、宣言を変える魔法の雲と爆弾、魔法使いにも愚者にもなるシェイプシフターが入る。
ゲームデザイン・E.ラルキンス、イラスト・B.パング、2~4人用、10歳以上、20分。
タイトルはつぼみが食用になるアザミの一種。野菜集めがテーマのデッキ構築カードゲームで、ゲームライト社から昨年発売された『アーティチョークを全部捨てろ(Abandon All Artichokes)』のドイツ語版。
各プレイヤーはアーティチョークカード10枚のデッキから5枚を手札にしてスタート。手番には場札にカードを補充してから1枚を手札に入れ、手札の野菜カードをプレイしてアクションを行う。野菜には種類によってカードを交換したり、捨てたりするといった効果があり、アーティチョークカードを廃棄していく。手番の終わりに使わなかったカードを捨て札にして、デッキから5枚引く。デッキがなくなったら捨て札を混ぜて新しいデッキにする。デッキから引いた5枚にアーティチョークカードがなかったら勝利となる。
ゲームデザイン・A.ニグルス、イラスト・M.ダ・シルバ&C.ドゥシャン、3~6人用、8歳以上、15分。
2019年にフラットラインドゲームズ(ベルギー)から発売された『ホーダー(Hoarder)』のドイツ語版。
各プレイヤーは5枚の動物カードをもち、その中から2枚を裏にして自分の前に出す。スタートプレイヤーから自分の前にあるカードを1枚めくり、その動物のアクションを行う。アクションによって山札や他プレイヤーから木の実カードを取ったり、他のプレイヤーの横取りから守ったりする。同じ種類の木の実を5枚揃えた人の勝ち。
モナステリウム(Monasterium)
ほしいダイス取られたー!
修練士を修道院に送り込んで、学校の名声を高めるダイスドラフトゲーム。『オルレアン』のdlpゲームによる2020年秋の新作。ドラフトしたダイスによってできるアクションがプレイヤーごとに変わってくるのと、自分しか取れない個人ダイスと、誰でも取れる中立ダイスが混合していることで、濃密な駆け引きを生んでいる。
ダイス配置フェイズでは手持ちのダイスを振って、1つの目を選び、その目のダイスを中央のダイス置き場に出す。何周かして全部のダイスが出たら、今度はダイス獲得&アクションフェイズ。1~6の出目から1つを選んで、そのダイス置き場にあるダイスを取り、アクションを行う。これを人数分ラウンド行ったら次の年へ。3年でゲーム終了となる。
ダイスにはプレイヤーカラーがついた個人ダイスと、白い中立ダイスがあり、中立ダイスは置いた人を問わず、誰がとってもよい。1回の手番で3個まで取ってよいため、自分が取ろうと思ったダイスが他プレイヤーに全部もっていかれることもある。一方、個人ダイスはそのプレイヤーしか取れないので、必ず取ることができるが、同じところに中立ダイスがあっても、個人ダイスを先に取らなければならないというルールがある。
これを見越してダイスを配置したいところだが、ダイスの出目は思い通りに行かないものである。毎ラウンド1回だけ振り直しができるが、そう都合よくいい目が出てくれるとは限らない。1ロールごとに一喜一憂しながらダイスを置くのが楽しい。
さて、獲得した出目に応じて行うアクションは、最初は皆同じだが、「修練士の派遣」を行うことでよりできることを増やせる。プレイヤーボードに並んでいる修練士コマを中央ボードの修道院に送り込み、空いたマスのアクションがその出目で選べるようになる仕組みだ。どのマスを空けるかによって、戦略が大きく変わる。
さらに、中央ボードに送り込まれた修練士は、それぞれの修道院でステンドグラスを集めたり、勝利点カードの条件になったり、エリアマジョリティー争いを繰り広げたりする。1つのアクションの結果が幾重にも絡み合い、非常に考えさせる。プレイ時間はプレイヤー人数×30分で設定されているが、もう少し多く見ておいたほうがよいかもしれない。
最初の手持ちで修練士を3人派遣できるので、それでどのアクションを解放するかが最初のポイント。手前の修道院を固めてから先に進むか、先に進んでちょっと先の修道院に手を出すか、どんどん先に進んでダイスを増やす作戦で行くか。他のプレイヤー(特に上家)の選択も考慮しておきたい。
考えれば考えるほど底なしのガチなゲームだが、ダイスのままならなさで息苦しさがほどよく緩和されており、最後の得点計算まで集中して取り組める作品。ルールの基本構造がわかりやすく、コンポーネントにテキストが一切ないのも好感が持てる。dlpゲームズが「ドイツゲーム」の王道を歩もうとしていること、そして「ドイツゲーム」も日々進化していることを実感できる。
Monasterium
ゲームデザイン・A.D.フューラー/イラスト・D.ローハウゼン
dlpゲームズ(2020年)
2~4人用/12歳以上/90~120分