アスドール・フランス年間ゲーム大賞とは

現在のアスドール・フランス年間ゲーム大賞のロゴ

毎年2月に南フランスで開催される「カンヌ国際ゲームフェスティバル」の際に、「ゲームの真の楽しみを提供し、カジュアルプレイヤーからマニアまで魅惑するボードゲーム」に贈られる賞。対象はその年の1月までの過去15ヶ月間(前の年と3ヶ月重複する)で、ボードゲーム業界の専門家やジャーナリスト8~10名の審査員で選ぶ。

【草創期】
カンヌ国際ゲームフェスティバルはアナログ・デジタル両方のゲームイベントとして1986年スタート。①出版社やデザイナーを顕彰し、②参加者や一般の人のゲーム選択に役立て、③ゲームの豊かな創造性を促進することを目的として1988年に第1回の「アスドール(金のエース)賞」が発表された。ボードゲーム愛好家6~9名の審査員により、いくつかの部門でアスドール(As d’or、部門賞)を発表し、シュペル・アスドール(Super As d’or、最優秀作品)を1点選ぶ方式。最初の3年間はビデオゲーム部門もあった。

第1回のシュペル・アスドールは『スーパーギャング』というモノポリーライクなマフィア抗争ゲーム。以降、『アバロン』『クアルト!』『傭兵隊長』『マジック:ザ・ギャザリング』『ギャングオブフォー』『ツァトレ』『カフナ』『ブロックス』など、ノンテーマゲームを中心にバラエティに富んだ作品が選ばれている。90年代後半になっても、『カタン』をはじめとする隣国ドイツスタイルのゲームはノミネートすらされていないのが特徴的である。

Blokus Awards
ビバリー版『ブロックス』に記されているシュペール・アスドールのロゴ

【フランス年間ゲーム大賞との統合】
アスドールは2003年に選考方法を変更。部門賞を廃止して全体で約10タイトルをノミネートし、カンヌで出展されたものだけでなく、フランス国内かつフランス語で発売されものすべてを対象として、その中から最優秀作品1点を「アスドール」として選ぶようになった。

フランス年間ゲーム大賞のロゴ

この変更は同じ2003年、フランス・ボードゲーム振興協会(Association Française pour la Promotion et l’Evaluation des Jeux de société、AFPEJ)が発表した「ジュ・ド・ラネ(Jeu de l’année、フランス年間ゲーム大賞)」に影響されたものである。フランス・ボードゲーム振興協会はボードゲーム愛好者が2001年に設立した団体で、ウェブサイトで意見を集め、ジャーナリストやゲームショップ店長など8名の審査員が何タイトルかノミネートしてその中から大賞を選んでいた。このため似たような2つのゲーム賞が別々に発表される状態が2年間だけ続いた。

2003年のアスドールは『アルハンブラ』、年間ゲーム大賞は『羊の戦い』、2004年のアスドールは『チケット・トゥ・ライド』、年間ゲーム大賞は『スコードセブン』が選ばれた。

2005年、この2つの賞は目的が似通っているとして、1年間の休止を経て、2006年から「アスドール・フランス年間ゲーム大賞」に統合。ついでにキッズ部門が新設され、ノミネート作品の中からアスドールを1タイトル、ほかにキッズゲームを1タイトルを選出するようになった(ドイツ年間キッズゲーム大賞は2001年開始)。審査員はアスドールからのメンバーがほとんどで、フランス年間ゲーム大賞からのメンバーは1名(ムッシュ・ファル)しかいない。

統合当初のアスドール・フランス年間ゲーム大賞のロゴ

【ファミリーゲーム路線とゲーマーズゲーム対応】
統合第1回目の受賞作は『タイムズアップ』という30秒ジェスチャーゲーム。もともとはアメリカのゲームで、ベルギーのルポ・プロドゥクシオンによるデビュー作である(フランスのボードゲーム出版社)。以降、現在に至るまで、比較的シンプルなファミリーゲームを中心に選んでおり、昨年までの17回のうち、4回はドイツ年間ゲーム大賞と同じ作品が選ばれている(『ディクシット』『コルトエクスプレス』『アズール』『ミクロマクロ:クライムシティ』)。『髑髏と薔薇』『ザ・マインド』など、よりライトな作品が選ばれた年もある。

一方、ゲーマー向けとしては2008年に審査員特別賞を制定。2012年からは「グランプリ」、2016年からは「エキスパートゲーム部門」と名称を変えて、『フィレンツェの匠』『アグリコラ』『スモールワールド』『パンデミック:レガシー』『サイズ-大鎌戦役-』『テラフォーミングマーズ』『アーク・ノヴァ』などの重めのゲームを選んできた。これはドイツ年間ゲーム大賞が同時期、「コンプレックスゲーム」特別賞(2006年、2008年)を格上げして2011年から「ケナーシュピール(中級ゲーム)」部門(ドイツ年間エキスパート大賞)を新設したのと軌を一にする。

「エキスパートゲーム部門」が新設され3部門になった2016年からは、約10タイトルあったノミネート作品を各部門3~4タイトルに絞り、2022年からはゲームに慣れてきた人向けの「イニシエ(Initié、中級)」部門が新設された。現在はアスドール部門、キッズ部門、エキスパート部門、中級部門の4部門で3タイトルずつ、合計12タイトルがノミネートされ、その中から各部門1作品が年間最優秀作品として選ばれている。

【日本人作品が多くノミネート】
日本のアニメがよくTV放送されてきた親日国の影響なのか、2010年から日本人作品がたびたびノミネートされているのも特徴。これまでノミネートされたのは『シャドウハンターズ』『ラブレター』『七英雄物語』『街コロ』『パレード』『ピクテル』『リトルタウンビルダーズ』『ハピエストタウン』『江戸職人物語』『聖杯サクセション』『ナナ』『キャット・イン・ザ・ボックス』の12タイトル。2024年には初めて『ナナ』が大賞を受賞した。

このうち3タイトルをリリースしているカクテルゲームズは、社長がゲームマーケットに毎回参加しており、スカウトの効果が出ている。ほかにもヤポンブランドのエッセン出展や、ドイツやアメリカでの製品化から注目されたケースもある。

2020年にはトゥールで開催された「ジャパン・トゥール・フェスティバル」にitten、Engames、テンデイズゲームズが参加した(記事)。A.ボザなど、日本をテーマにした作品をよく作るフランス人デザイナーもいる。B.フェデュッティが「ミニマリズム」(最小主義、少ないコンポーネント、少ないルールで面白いゲームを作るというデザイン哲学)と呼んだデザイン哲学や、アニメ的世界観が好まれているのかもしれない。

Cannes Festival International de Jeux – As d’Or-Jeu de l’Année

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