「ゴーアウト系」が海外で通じない?

Yokokara Shitsurei2 Manゲームマーケット2023秋のトレンドに、トリックテイキングゲームと並んで「ゴーアウト系」が目立った。「ゴーアウト系」とは、最初に手札を出し切った人が勝つカードゲームで、『ウノ』のように色や数字が合っていれば出せるもの(「マッチング」)と、『大富豪(大貧民)』のようにより強い役があれば出せるもの(「ラダークライミング」)がある。ゲームマーケットで人気なのは後者で、『SCOUT!(2019)』や『ナナトリドリ(2022)』がヒットし、ゲームマーケット2023秋では『OPEN(商業版)』『LOOP』『ゴーレム』『ELEVEN』などの新作が注目されている。

ゲームマーケット2023秋でヤポンブランドの方から、エッセン・シュピールで「ゴーアウト系(going out)」が通じなかったというお話を伺った。当サイトでもよく使う言葉なので、国際的には何と呼ぶのが一般的か気になるところである。

まず『ゲームメカニクス大全』の「ラダークライミング(CAR-02)」では次のような記述があり、「ゴーアウト」は和製英語ではないということがわかる。

手札をすべてなくすことは「ゴーアウト(ゲームから抜ける)」とも呼ばれ、一般的にラダークライミングゲームの目標であり、多くの古典的なゲームでは、これが勝利条件となっている。(Shedding all your cards, also called “going out” is generally a goal in Climbing games, and in many classic shedding games it is the win condition.)

この説明の中にも言葉として見られるが、Wikipediaの「カードゲーム」の項目では「シェディングゲームズ(shedding games)」または「シェディング系(shedding-type games)」という分類がある。その中には「ゴーアウト系」という用語は見られない。”shed”とは「(涙を)流す」「(葉を)落とす」「(服を)脱ぎ捨てる」という意味があり、要らないカードを切ってすっきりするというようなニュアンスである。

シェディング系のゲームでは、プレイヤーの目標は手札のカードまたはタイルを他のプレイヤーよりも先になくすことである。(In shedding-type games, the player’s objective is to empty one’s hand of all cards or tiles before all other players.)

トランプゲームでは「ストップ系(stops group)」という用語がある。カードを出していき、手札が最初になくなったプレイヤーが勝ちとなるゲームを指すが、「ストップ」とはもうそれ以上誰も出せない(その時点では最強の)カードのことで、手札を全部なくしてゲームを終わらせることではない。

以上、「ゴーアウト系」「シェディング系」「ストップ系」などの言い方があることを見てきたが、いずれもBGGのメカニクス分類には登録されていない用語である(「手札をなくす」というだけでは『タイムライン』のような数字やスートのないゲームまで含まれてしまうという問題もある)。通じない場合があるとはいえ和製英語でもないことから、当サイトでは当面「ゴーアウト系」という表現を続けたいと思う。

なお、ドイツ語では「(手札を全部)捨て札にするゲーム(Ablegespiel)」または「(手札を全部)場に出すゲーム(Auslegespiel)」という分類がある。Wikipediaのカードゲームでは次のように説明されている。

これらのゲームの目標は通常、できるだけ早く手札をすべて捨てることである(Ziel dieser Spiele ist in der Regel das schnellstmögliche Ablegen aller Handkarten.)

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