ゲームマーケット2023秋:レポート

ゆりかもめから東京ビッグサイトが見える
ゆりかもめから見える東京ビッグサイト

12月9日と10日、両日とも快晴の温かい青空のもと、ゲームマーケット2023秋が東京ビッグサイト西1・2ホールで開催された。5月に開催された2023春と同じ合計17760平方メートルの会場に、2日間合計で1116団体が出展し、2日合計で25000人が来場した。出展団体数は過去最多、来場者数は2023春から3000人の増加で、ようやくコロナ禍前の規模に戻った。

開場2時間前の行列

一般入場は12時から、入場料が1500円高い早期入場は11時から。それでも土曜日の早期入場チケット2500枚は売り切れ、限定品を求めて朝早くから待機列が形成された。この日、都内の最低気温は6度。例年より温かいとはいえ、屋外での行列は身体に堪えただろう。朝5時から並んでいたという情報もある。

開場時のスタートダッシュ

前回は入場に非常に時間がかかったが、今回はスタッフが待機列を回ってチケットの確認とリストバンドの配布を行ったことからスムーズな入場を実現。2500人の早期入場者はあっという間に会場内に吸い込まれていき、12時入場の方が早くも入口で待っていた。

賑わう会場の様子

会場は壁側を囲むように企業などのエリアブース、内側に長テーブルの一般ブースが設けられた。人気ブースの周りは人だかりで渋滞しているところもあったが、通路は広く取られ、往来はしやすい。

まずは今回の目玉ブースから。サントリー協賛のもとボドゲ好き・お酒好きの多彩なメンバーが参加するコミュニティ「LIQUOR GAMERS CLUB」では、お酒をテーマにしたボードゲーム『ミッドナイトカクテル』『バーテンダウト』を発表。謎解きクリエイターの松丸亮吾さんとファッションモデルの貴島明日香氏がYoutubeで紹介したこともあって、たくさんの人がブースに集まっていた。

LIQUOR GAMERS CLUBの新作『バーテンダウト』と『ミッドナイトカクテル』

マーダーミステリーの合同出展も多くの人で賑わっていた。ここには主に企業の製品版が並んでいたが、他にも一般ブースでマーダーミステリーを頒布しているところもあり、一大ジャンルとなっている。

2日目は売り切れが目立つマーダーミステリーブース

今回のゲームマーケットでは、多くの輸入ボードゲームが日本語版先行発売、または日本語訳付きでお目見えした。ビッグタイトル・注目タイトルが目白押しとなり、どこよりも早く、そして安く買えるならゲームマーケットで手に入れようという参加者も多かったようだ。あちこちで売り切れ続出。

アークライトはホール外に大きいブースを設置
久々の出展となったメビウスゲームズは『エルグランデ』を先行販売。テンデイズゲームズは新発売の『ドーフロマンティックボードゲーム』などを販売し、早々に売り切れ。
エッセン・シュピールの最新作で100人・2時間待ちの大行列ができたゲームストア・バネスト
エッセン・シュピール最新作『マッチ・オブ・ザ・センチュリー』と、新版の『アベカエサル』がうず高く積まれた数寄ゲームズ
クニツィア作品『ゴールドラッシュ』をリメイクした『サニーバード』

安定した面白さの輸入ボードゲームが注目されているのは特設ブース「本当に面白いユーロゲームの世界」にいるとわかる。ここでは『ドーフロマンティックボードゲーム』『チャレンジャーズ!』『カスカディア』などの体験卓がずっと埋まっており、卓が空くまでしばらく待っている方も。当初は3卓しかなかったところを、5卓まで増やし、スタッフはゲーム説明に大忙しだった。私もお手伝いで2,3ゲームの説明に入ったが、ボードゲームを楽しむ生の声を聞くことができて幸せになれる。

「本当に面白いユーロゲームの世界」の体験卓に立つタナカマさん&カワカミさんがほらボド!のインタビューを受ける

もちろん国産ボードゲームの規模は輸入ボードゲームの比ではない。企業からアマチュアまで多くの団体が渾身の新作を持ち込み、試遊卓を設けるところも少なくない。ゲームマーケットの開場時間は12~17時。試遊する時間がほとんど取れないのが残念だ。

10月のエッセン・シュピールで合同出展し、長い行列ができたSaashi&Saashi、itten、オインクゲームズはゲームマーケットでも存在感があった。いずれもエリアブースを構え、新作を展示。またドイツ年間ゲーム大賞にノミネートされた『街コロ』の続編や、『キャット・イン・ザ・ボックス』作者の新作など、国際的に評価されているデザイナー・出版社の新作も展示されており、海外からの参加者も多く訪れていた。

Saashi&Saashiはフリップ+ロール&ライトゲーム『ニュースボーイ』を発表。シュピールのようなブース建込み
ittenはバランスアクションゲーム『トーキョーハイウェイレインボーシティ』の巨大版を出展
オインクゲームズの新作『ヒュードロドロップ』。片手の上に乗ったアイテムから、指示されたものだけを真っ先に落とす。
グランディングは久しぶりとなるシリーズ最新作『街コロライフ』を発表。夢をかなえて理想の人生を作り上げる
『キャット・イン・ザ・ボックス』の操られ人形館は14年ぶりのリメイクとなるゲーマーズゲーム『マインアウト』を発表

スペシャルステージでは三遊亭楽天氏のTRPG落語、M.ウォレス氏によるボードゲームデザイン、エッセン・シュピールのコミュニケーションディレクターであるR.デ・クルア氏によるゲームマーケットとのコラボ、I.オトゥール氏によるボードゲームのアートワーク、印刷所を招いたボードゲーム印刷事情についてインタビューと質疑応答が日本語通訳付きで行われた。

たくさんの聴衆が集まったM.ウォレス氏(写真右)のインタビュー。「借金をして苦しむゲーム」というのは昔の話で、今はジェントルなデザインを心がけているという
ゲームマーケット事務局長の草野氏(写真左)とエッセン・シュピールのR.デ・クルア氏(写真中)によるコラボ対談。ゲームマーケットの出展者がヤポンブランドの協力でエッセン・シュピールに出展するというプロジェクトが進行中だという。エッセン・シュピールからゲームマーケットへの出展促進にも期待したい

輸入ゲームに匹敵するクオリティの国産ゲームが増えている中で、多種多様な同人作品・実験的作品・日本ならではの作品が見られるのもゲームマーケットの醍醐味である。特に今回初となる「チャック横丁」は、外箱がないゲームを1種類100個まで安価で出展できるという、同人ゲームの原点に立ち返った企画で意欲的な作品が並んだ。

どんどん売り切れになっていくチャック横丁
お香の会社「松栄堂」は匂いを使ったカードゲーム『くんくんくん』を発表。3種類のにおいを嗅ぎ分ける
『沈黙ノ艦長』で注目されたよぐゲームズは新作『宙へ』を発表。90分クラスのリソースマネージメントを同時プレイでプレイ時間圧縮
らせん状・昇順に数字を並べる『スワイダー』(キューハチドッグ)はゲームマーケット初出展
早速時事ネタがゲームに『安倍派ンブラ』(タルトゲームズ)
買ったゲームをゲーム終了まで全部遊ばないと失点になる『罪ボドゲ』(EMPLAY)
期間限定のアミューズメント施設「うんこミュージアム」で発売された『うんこっていいたい』(サグイネル)がゲームマーケット初登場
ゾーニングエリアで出展された『童貞人狼』(モザイクがかり)。GMなし、脱落なしで隠された「童貞ミッション」を知らない「ヤリチン」を探す

ほかにも500種類を超える新作国産ボードゲームが発表された。とても追いきれないという方(筆者も含む)のために、当サイトでは事前アンケート「注目の新作ボードゲーム」を実施し、1月25日まで「新作評価アンケート」を実施中。遊んだ方はぜひ投票をお願いします。

今回、筆者はスモール出版ブースを間借りさせてもらい、拙著の新刊『ボードゲームで社会が変わる』(河出新書)や6月に発刊した『ゲームメカニクス大全第2版』(翔泳社)、既刊『ボードゲームワールド』(スモール出版)を販売した。スモール出版のほうは撮影用に使用したボードゲームの中古販売。久々にブースに立つと(8年ぶり)、風景が180度変わり、通りがかりの人を観察できて楽しかった。

なおスモール出版では来年2月25日に高田馬場で中古ボードゲーム専門のフリマ「中古ボードゲーム蚤の市」を開催するという。

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