実質2,3択……のはずが
気になっているゲームとはいえ、プレイ時間が長い戦略ゲームは思いのほか「旬(皆が喜んで遊んでくれる期間)」が短い。プレイ人数やプレイ時間の制限がきつい上に、次から次へと発売される新作に上書きされてしまうためである。そこで1回遊んだだけで終わらないようなものを厳選するわけだが、選ぶときにはメカニクスの新鮮さやリプレイアビリティだけでなく、テーマが興味を持てるかどうかも大きい。
プラハは以前旅行したことがあり、ボードゲームショップ巡り、地ビールツアー、スメタナ博物館、教会での弦楽四重奏、リバーボートツアー、セックスマシン博物館など、楽しい思い出しかない。そこに最近活躍しているチェコのデザイナーが、プラハのゲームを作ったとあってはスルーすることができなかった。
遊んでみるとそんなプラハ感はあまり感じられなかったが、エンジンとなるメカニクスはすっきりしていて、ポイントサラダ特有の何をやったらいいか途方に暮れることはなかった。
手番には6つのアクションのうち1つを選ぶだけで、そこにいろいろなおまけが付いてくる。基本はお金や石を集めて、市壁か建物か「王の道」を建設するだけだ。アクションを改良すると、6つのアクションでもらえるおまけが増えるが、それでもアクションはあくまで6択。リソースが足りなければリソースを集めるし、リソースが溜まったら建設するだけ。後半はそのおまけが尋常じゃなくなってくるのでややテンポが落ちるが、エキストラでもらえるボーナス感が嬉しい。
しかもこの6つのアクションはイーブンではなく、ホイール上に配置されて「最近誰かが実行したばかりのアクションはコストが高く、しばらく誰も選んでいないアクションは選ぶとボーナスがもらえる」という、いわゆる「未選択リソースの価値向上」メカニクスが取られている。これによって、「正直どのアクションでもいいな」とか「何をしたらいいか見当がつかない」という状況でも、ゲームがおすすめのアクションを提示してくれるのだ(終盤になるとコストが高くても取りたいアクションが自然と出てくる)。
ほかにも、プレイヤーボードでの生産能力向上や、ヘックスタイルの配置によるボーナスとエリアマジョリティ、希少なリソースである「卵」の存在、壁と大聖堂のグリッドトラックなど、見るべき要素はたくさん詰め込まれているのだが、各アクションの中での処理として整理できるため、複雑さを感じない。しかしゲームが進むと、独立していたように見えたアクションが実は密接に絡み合っていることが見えてきて奥が深い。
独シュピールボックスの評では「細部にこだわるとゲームが遅くなる」「多くの選択肢がある古典的なユーロゲームだが、少し過剰な印象も受ける」などと要素の詰め込みに対するコメントもあったが、「同じ展開になることはなさそうで、毎回別の局面を考慮することになるだろう」と高い評価を受けている。
Praga Caput Regni
ゲームデザイン・V.スヒィ/イラスト・M.ヴァヴロン
デリシャスゲームズ(2020年)+数寄ゲームズ(2021年)
1~4人用/12歳以上/45~150分