金のない客ばかりでも
毎ラウンド、自分のデッキからお店に客を並べてスタート。各プレイヤーが4つのダイスを振ってその中から1つ選び、残りをそれぞれ左どなりに渡していく(ダイスドラフト)。このダイスを自分のボードやカードに配置して客から収益を得たり、ビールを醸造したりする。お金は酒場のグレードアップに、ビールは新しい客の獲得に使い、自分のデッキにカードが加えられていく(デッキ構築)。8ラウンドで作った自分のデッキにあるカードの勝利点を競う。
基本的な目標は大量のビールを醸造して、高得点の貴族を獲得することにある。18ビールを醸造すれば、貴族が一挙に3人も獲得できて、それだけでもう30点だ。一般客の得点が1桁台ということを考えると、これがいかに大きいか分かるだろう。
しかし1ラウンドに18ビールを醸造するのは容易ではない。通常はダイス1個で1ビールしか醸造できず、ダイスは4つしかない上に、出目が合わないといけない。「ウェイトレス」でダイスを増やしたり、「皿洗い」でダイス目を増やしたり、「納入業者」で醸造量を上げたり、「貯蔵庫」で前のラウンドからビールを繰り越したりしなければならない。
これらのカードの購入にはお金が要るので、まずは常連客で小金を稼ぐところから。最初はギリギリだったのが、少しずつ収入が上がるにつれて、いろいろなことができるようになってくる順調さが心地よい。幸いなことに、お金持ちかどうかは別にして、毎ラウンド満席になるまで客は来てくれる。
お金の使い道だけでなく、ダイスの振り分けについても多様な成長曲線が用意されている。ひたすら客にビールを出してお金を貯めてもいいし、ビール醸造を頑張って上客を待つのもいいし、修道院に喜捨してポイントを稼ぎ、いろいろな恩恵がもらえってもいい。ただしダイスはドラフトで手に入るので、絶好のダイスは上家に取られることもあるだろう。
インストにはやや時間がかかるが、プレイ時間は3人で45分くらい。前半はいい客に恵まれず(醸造したビールの数に場札の客がマッチしない)、設備投資に力を入れた。収入が増えなくて苦しい展開だったが、後半で納入業者カードが4枚も出てきて、そこにダイスを3個投入でき、他のカードの効果で18ビールを達成。これで逃げ切った。
基本ゲームだけでももっといろいろなパターンが試せそうで、またプレイしたいと思えるが、さらに拡張モジュールが4つ入っていて自由に組み合わせられる。プレイ時間もほどよい長さで、繰り返し遊びたい作品である。
Die Tavernen im Tiefen Thal
ゲームデザイン・W.ヴァルシュ/イラスト・D.ローハウゼン
シュミットシュピーレ(2019年)+アークライトゲームズ(2020年)
2~4人用/12歳以上/60分