本書ではアナログ・デジタルゲームを問わずゲームとして扱い、ポケモンGOやFGO(スマホゲーム)などを扱った事例も紹介しているが、デジタルゲームは再生機器やライセンスの問題があり、収集・保存・貸出は難しいようだ。ボードゲームも、紛失・消耗・破損の問題があるが、多人数で遊べるという点で地域のコミュニケーション手段・認知症予防といった名目が立ちやすい。
第1章でゲームの分類をした後、第2章で事例集としておおづ図書館のボードゲーム館外貸出、博多工業高校で行われた「ボードゲームを使用したコミュニケーション研修」(『ボブジテン』『ディクシット』『はじめての人狼』)などが取り上げられる。予算のとり方や企画の進め方から説き起こされており、一般向けのボードゲーム普及活動を立ち上げようとしている人ならば、図書館関係者でなくても参考になる。
第3章はQ&A方式で企画書の書き方、購入費の項目、著作権法の問題、トラブルの対処など具体的に説かれている。ボードゲームの館内利用は営利・非営利、有料・無料いずれでもOK、館外貸出は非営利・無料の場合OKということである。静かな館内でボードゲームができるのかという疑問には、視聴覚室や会議室など隔離された場所を使うか、そのようなスペースがない場合には休館日を利用したり、予め告知をしたりするという提案がなされている。
第4章は図書館情報資源としてのゲーム、第5章はボードゲームアーカイブの可能性ということで、収集・整理・保存の方法をまとめている。高倉氏が担当した第5章では、すぐ絶版になるボードゲームこそ、アーカイブの枠組みを検討する時期が来ているのかもしれないと熱く語る。
アメリカの図書館協会が年に1回ゲームの日を定めてイベントをしたり、ドイツの図書館でボードゲームの館内利用・館外貸出が一般的に行われたりしているが、おおづ図書館では秋に中高生によるボランティアグループ「図書館ゲーム部」が立ち上がり、世界的にも例を見ない活動を打ち出している。しかし全国的に見て、そのような活動をしているところは皆無に等しい。本書を通して、全国に3300あるという公立図書館で(日本図書館協会調べ)、イベントや貸出用にゲームを導入する動きが広まってほしい。