舞台は中米、作者はイタリア人、出版社はチェコというインターナショナルな作品。チェコのほかにもアメリカ、イタリア、オランダ、ドイツ、フランス、ポーランドでも発売され、先日スイスゲーマーズ賞を受賞した。日本でも人気サークル「調布のあな」のかんちょーさん(ブログ)が大のお気に入りで、じわじわと人気を広げている。
見た目にもシステム的にも見事なのが連動する歯車である。毎ラウンド、中心の大きい歯車を回すのだが、それに合わせて周囲の5つの歯車が全部回る。このギミックが気持ちいい。
中央の歯車は26の歯があり、260日の暦を模している。1ゲームは1周26ラウンドである。
手番には、手持ちの労働者コマを好きなだけ暦の周囲にある5つの歯車に乗せるか、すでに歯車の上にある労働者コマを好きなだけ取ってそのアクションを行う。乗せるか、取るかのどちらかしかできないところがシンプルながら悩ましい。
全員の手番が終わると、暦が1つ回る。これによって全ての歯車がその上にあるコマと共に回り、できるアクションがグレードアップする。取らないで長く置いてあったコマほど、取れる食料や資材が増えたり、得点が上がったりと強いアクションができるようになるのだ。
したがって、コマを乗せる、コマを取るという単純な繰り返しではなく、何ラウンドかに分けてコマを乗せ、後でまとめて取ったり、逆に一度に乗せておいて、何ラウンドかに分けて取っていくというような対応が求められる。「このコマは今取らないときつい! でもあと1ラウンド待てば大得点になるぞ・・・」というような果報を耐えて待つ感覚がたまらない。
不確定要素もある。誰かがスタートプレイヤーを取ると、暦を一気に2日進める権利を得る。食料(=お金)をとれると思っていたら、そのアクションをスルーして、別のアクションになってしまったなんてことも。グレードアップすればするほどよいとは限らないのがポイントである。
序盤に重要となる農業の歯車パレンケ。奥の方のアクションは焼き畑しないと食料が手に入らない。
ゲームを有利に進めるため、技術の向上と建物の建設があり、これらはアクションを使い資材を払って行う。特にカギのとなるのがゲーム中4回訪れる食料供給フェイズで、労働者の数だけ食料を支払わなければならず、足りないと得点が減らされてしまう。農業技術を上げて食料を多く手に入れられるようにするか、「農場」という建物を作って食料供給を免除するのは必須といえるだろう。
得点源はいくつかあるが、大きなものは神殿の段数を上げる、記念碑を建てる、チチェン・イツァに水晶ドクロを捧げるの3つである。それぞれのアクションで行うが、食料や資材が必要となるので、周到に(何ラウンドもかけて)用意して行かなければならない。
上からゲームを有利に進める技術レベル、ボーナスをもたらす記念碑、ゲーム中に効果をもたらす建物。
4人プレイで2時間。序盤から農場を複数建設して食料供給の問題を解決したものの、その分技術や神殿に手が回らず、たくさんあるコマが生かされない。チチェン・イツァで待ちに待って最高点をマークしたものの、よい記念碑が取れず最後に伸び悩んだ。1位は、神々の怒りを買ってまで焼畑農業で収穫を行い、そのタイルのボーナスが入る記念碑で大得点したぽちょむきんすたーさん。建物も、神殿も、技術も、伸ばせばウハウハな状況になるのに、全てできるような資材もアクションはもちろんない。選択と集中を終始迫られるのが悩ましく、楽しかった。
Tzolk’in: The Mayan Calendar
S.ルチアーニ&D.タッシーニ/チェコゲームズ出版(2012年)
2~4人用/13歳以上/90分