ファミリーゲームのリスク

先日、都内でバブル大佐&マダム・ザザ(www.boppai.com)とお会いした。声だけはおなじみの2人と直接会うことになって楽しみにしていたが、期待に違わぬおしゃべりだった(いつも飲みながらトークしている2人につられて、久しぶりにビールを飲んだ)。
そのとき、テレビゲームでは、実はファミリー向けのほうがフリーク向けよりハイリスクだという話をバブル大佐から伺った。フリーク向けは、たくさんではないがコンスタントに売れるのに対し、ファミリー向けは、売れる売れないの差が激しいという。ファミリー向けこそコンスタントに売れるものだと思っていただけに意外である。
しかし考えてみると、ゼロ年代のボードゲームも全く同じである。ゼロ年代は、『カルカソンヌ』のダブルクラウンから始まり、これに倣ってファミリー向けのシンプルなゲームがたくさん発売されたが、そのほとんどはたいして売れずに終わった。ボードゲームの寿命が短くなったというのは、ネット評価の普及もあるが、数多のファミリーゲームが出ては消えしていたことと無縁ではない。
フリーク向けに傾きすぎた90年代後半の反省から、ドイツゲーム業界はファミリー向けに一気に舵を取った。普段ボードゲームを遊ばない層に訴えかけられれば爆発的に売れる―しかしそんな楽観がうまくいくほど、世の中はボードゲームを求めてはいなかった。カルカソンヌ以降、世界的に成功したといえるファミリーゲームは『ブロックス』と『チケットトゥライド』くらいではないだろうか。
一方、フリーク向けはワレスやローゼンベルクなどの力もあって、確かに安定している。しかし愛好者の期待に応えようと、どんどん要素を増やした結果、重厚長大になりすぎて、付いていけない愛好者を生んでいるのも、テレビゲームと同じ状況である。
下手な鉄砲数撃っても当たらないのファミリーゲームと、タコツボ化しつつあるフリークゲーム、これが二極化の実態なのだ。かくしてドイツのメーカーは活気を失い、アイデアも販路も外国に求めつつあるように見える。
来月のエッセン国際ゲーム祭では、どちらにも与しない中庸なゲームに注目している。ファミリー向けを買っても家族で遊ぶわけではないし、フリーク向けの重量級ゲームは出す機会が限られる。その中間を行くのは、45〜60分のゲーム、デッキ構築系のカードゲーム、テーブルの上で遊ばない新次元のゲーム。このあたりが、2010年代のトレンドを作るかもしれない。

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