言語依存のないゲームの日本語版

ホビージャパンの日本語版ラインナップに、言語依存のないゲームが含まれている。アイコンで理解できる『エンデバー』、クニツィアの『サムライカードゲーム』『砂漠を越えて』『インジーニアス』など。来月アークライトが発売する予定の『電力会社』もそうだ。

これまで日本語版といえば、『サンファン』や『アグリコラ』のように言語依存が高いゲームを遊びやすくするという目的があった。そのため、言語依存のないゲームの日本語化に違和感を感じる人もいるようだ。日本語版を作るなら、もっとほかにあるだろうと。

実際、どのゲームの日本語版を作るかは会社のマーケティングや、取引先との関係などによって決まるのであって、言語依存の有無はそれほど大きな要素ではないようだ。なのでお前らの知ったことではないと言われればそれまでだが、愛好者から見ても、言語依存のないゲームでも日本語化することは大事なことであると述べたい。

2005年に大阪で行われたボードゲームシンポジウムの最後に、箱の日本語について意見が交わされた。ドライマギア元社長のリュッティンガー氏は、「韓国人は箱に韓国語が書かれていないと買わないが、日本人は逆に日本語を入れないでと頼んでくる」とよく言っていた。日本語が入ると舶来物の高級感が薄れるからである。そういうこともあって、ハバ社やセレクタ社を手がけるジョルダン社は、今も箱に日本語を入れていない。

そこまで日本語をネガティブに捉えていなくとも、日常的に海外ゲームに触れている愛好者には日本語箱の必要性など感じない人が多いだろう。ルールとコンポーネントが日本語になっていさえすれば遊ぶことができる。言語依存のないゲームの日本語版に意義を感じないのは、主にこの層だと思う。

これに対して、『人生ゲーム』や『ウノ』の次を求めている一般層は、内容云々より前に、箱に外国語が入っていると難しそうだと思って手に取らない。ましてや箱の表を見ても裏を見ても日本語が一切入っていないなどといったら論外である。外国語アレルギーという人も相当いる。

日本語が入るのは陳腐だとか無意味だという人たちと、日本語が入ってないと不安な人たちのどちらが一般的に多いかといえば、圧倒的に後者である。そして言語依存のないゲームの日本語版は、後者の人たちに訴えかける。

トイザらスであれ博品館であれ、店頭では中身を見ることができないし、店員も説明してくれない。前情報をもたない人たちが興味を持って手に取るにはまず、箱表の日本語が不可欠である。その次に箱裏を見て内容を知るにも、日本語ルールが袋入りで貼られているよりも、直に日本語で印刷されているほうが安心する。

このことは専門店でも変わらない。メビウスゲームズの売れ筋である『お邪魔者』『お先に失礼します』『ニムト』『ごきぶりポーカー』『カルカソンヌ』はいずれも言語依存がないが、日本語化されている。このラインナップは初めての人が手に取るもので、いくら評判が確立しているといっても、直に見たときに日本語なのは非常に買いやすい。

ボードゲームを手に取る人が皆、ボードゲームのことをよく知っており、プレイ欲求が強いとは限らない。何かいい暇つぶしを探しているのかもしれないし、たまたま何の気なしに手にとってみただけかもしれない。そんな人に対しても、判断材料があることが望ましい。

このようなことは、長いこと海外ゲームばかり見ている愛好者には気づきにくいことかもしれない。でも一般の人が英語やドイツ語しか書かれていないゲームを手に取るときは、我々がヘブライ語やアラビア語しか書かれていないゲームを手に取るのと同じくらい、抵抗を感じるだろう。

以上のように、外国語の抵抗感を和らげ、気軽に手に取って判断できるようにするため、言語依存のないゲームでも日本語化することは大事なことである。ほかにも日本語版にするメリットとして、たくさん作るので単価が下がり、在庫を確保して長く販売できることもあるが、その在庫リスクを下げるにも、いかに多くの一般層に手に取ってもらえるかがカギとなるだろう。

言語依存のないゲームの日本語版」に2件のコメント;

  1. 「電力会社」の日本語化が嬉しくてたまらないボクは多分、プレイアビリティ重視の愛好者寄りなんでしょうが、言語依存の少ないゲームの日本語化の意義は十分わかるような気がします。それによってパイが大きくなること自体が、新しいアイデアにつながってでボードゲームの可能性を広げるでしょうし、それは卑近なところでは商売にも有利ですし。
    ただ同時に、ボードゲームの舶来感、骨董感ですかね、ボクの場合、もうドイツ語もヘブライ語も関係ないほどに、不思議な言葉で書かれたカードやボード、木や石でできたコンポーネントそのものに惹かれてしまいます。遊べるかどうかは別にしてまで。これはもう、考古学者のはずのインディージョーンズがムチ持って遺跡をぶっ壊しながら秘宝を探してしまうのに似ています、ちょっと違うような気もしますが(笑)

  2. 『エンデバー』や『電力会社』は、内容自体が込み入っていますので、パイを広げるならばメビウスゲームズのようなラインナップが中心になるんでしょう…と思っていたら、ホビージャパンで一番売れているタイトルが『ドミニオン』と『パンデミック』というのを聞いて、難易度はあまり関係ないようですね。愛好者はえてして初心者や一般の人を型にはめて考えがちですが(「『ニムト』でいいだろう」みたいな)、世の中広いものです。
    新しいものか古いものか、希少価値か大衆人気か、一概にどちらがいいとはいえませんが、ドイツゲームに惹かれる理由として、舶来感、骨董感というのは私にもありました。そういうものを感じさせるゲーム(ツォッホ社の木の駒とか)は、グローバル化のせいかこのごろ少なくなってきて残念です。

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