Kramer, Wolfgang. “Was macht ein Spiel zu einem guten Spiel?”. Kramer-Spiele
よいゲームとは一生付き合って行けるゲームである。
よいゲームとはもっとゲームをほしくさせるゲームである。
ゲームは趣味の問題である。どのゲームが好きで、どのゲームが好きでないかは、各人が決めることだ。運のゲームが好きな人もいれば、戦略のゲームが好きな人もおり、コミュニケーションゲームが楽しいという人もいれば、リアクションゲームが好きな人もいる。手先の器用さが試されるゲームが好きな人、記憶ゲームが好きな人などなど……。よい・普通・悪いという分類は基本的には主観的な判断である。しかしそこには客観的な基準もいくつかある。それらをここで見ていこう。
1.独創性:新しいゲームは独創的でなければならない。従来のゲームがもっていなかった要素か、少なくとも新しい組み合わせがなければならない。
2.何度もできる魅力:何度も遊びたくなればなるほど、いいゲームである。そのためには、遊ぶたびに違った展開になることが重要だ。そうでなければすぐに退屈になってしまうだろう。よいゲームは初回プレイ時と同じ新鮮さと楽しさで何度でも楽しめるものである。
3.驚き:ゲームには驚きの要素があるべきである。展開・イベント・情勢がワンパターンであることは避けるべきである。
4.機会の平等:ゲームの最初は、全てのプレイヤーに勝つチャンスがあるべきである。つまり、先手有利や後手有利などがあってはいけない。
5.勝つチャンス:4と同じことがゲームの終盤にも当てはまる。少なくとも理論的には、全てのプレイヤーが最後の最後まで勝つチャンスを失うべきではない。たとえその可能性が極小であっても、必ずなければならない。
6.「キングメーカー効果」がない:「キングメーカー効果」とは、勝つ見込みのないプレイヤーが終盤の一手で誰が勝者になるかを決めてしまう状況である。戦略ゲームでまま起こる問題だが、あまりはっきりそうなってしまうとゲームの魅力が減退する。
7.序盤で脱落しない:全てのプレイヤーがゲーム終盤まで勝敗に関わりながらプレイできるようにするべきである。最後の最後まで脱落者がでないほうがよいだろう。
8.適切な待ち時間:何もしないでいる待ち時間が長いことほど致命的なことはない。手番に考えることが多いゲームではそういうことが起こりがちである。ただしチェスぐらいの、次の一手を考えられるくらいの適当な時間があるのはいいことである。
9.創造性:運の要素がないゲームでは、プレイヤーがその後の展開に影響を与えられるようになっていたほうがよいだろう。ゲームに操られていると感じることほど、退屈なことはない。ゲームはプレイヤーに全力を出すことを要求しながら、同時にプレイヤーを援助していくべきである。
10.統一感:タイトル、テーマ、形態、グラフィックには統一感がなければならない。
11.コンポーネントの質:長期使用に耐えること、機能的であること、見た目の魅力を備えたコンポーネントはよいゲームに本質的につきものである。
12.ターゲットの明確性/ルールの一貫性:ゲームでは要求されるものの多いものから少ないものまでさまざまある。中には特別なスキルを要求するものもある。重要なことはルール全体にわたって一貫性のあることである。戦略ゲームならば運で決まる場面はないほうがよいだろう。例えば、せっかく戦略を練って手番の行動を決めたのに、最後はサイコロで決まるのでは一貫していない。
ルールに一貫性を期待するのは理に叶うことだが、実際にはターゲットが明確でないゲームがたくさんある。戦略ゲームに興味があるプレイヤーをターゲットにしているのか、運ゲームに興味があるプレイヤーなのか、あるいはこの2つがうまく組み合わさったものに興味があるプレイヤーなのか、コミュニケーションを好むプレイヤーなのかはなかなか区別しづらいものだ。
運ゲームはシンプルなルールで選択肢が少ない方がよいだろう。そうすれば手番に考えることが少なく、展開が早くなる。一方戦略ゲームは、それぞれの手番にさまざまな選択肢があった方がよいだろう。そうすればプレイヤーが勝利するための可能性がたくさんあることが分かり、お手並みを披露することができる。
13.緊張感:ゲームにはそれぞれの異なった緊張感の波がある。重要なことは緊張感の緩んだ状態が続かないようにするということである。以下に2つの典型的な緊張感の波を例示する。
左側はゲーム終了に向かって緊張感がコンスタントに高まっていくパターンである。最初からある程度の緊張感がある青い線のほうがよりよいと言える。そのためには退屈な導入を短くしてすぐにゲームに入れるようにする。
右側は緊張感のピークが何回かあるパターンです。ここでもより多くピークがあって、緩みも少ない青い線のほうがよりよいと言える。
14.習得しやすい:ルールが単純明快ですぐに覚えられ、すぐゲームを開始できるのは必ず、ゲームのメリットになる。そのためにルールが明解で分かりやすいことは特に重要だ。また、ゲームの内容がプレイヤーにとって普段から慣れ親しんでいるものもまた役立つ。ただし実生活と全く同じではつまらない。類似している、同じ理屈であるというだけである。
ただしプレイヤーにさまざまな展開の可能性を与えることができるならば、より複雑なルールでもかまわない。
15.複雑さと選択の多さのバランス:短くて簡単なゲームはルールも短くて簡単にちがいない。一方複雑なゲームのルールはもっと複雑かもしれない。
以下のグラフで、X軸をゲームの展開を決める選択肢の多さ、Y軸をルールの複雑さとする。ゲームをそれぞれこのグラフに配置していくと、全てが領域(2)に収まり、領域(1)にあるゲームはないとすぐにわかることでしょう。このことからゲームの展開を決める選択肢の多さに従ってのみ、複雑なルールが許されるということが結論される。
よいゲームが必ずヒットするかというと、残念ながらそうではない。よいゲーム、偉大とさえ言えるゲームでも、ヒットしなかったものがたくさんある。例えばドイツでは『ツイクスト』『アクワイア』『フォーカス』などは残念ながらあまり売れなかった。
よいゲームもたくさんヒットしているが、ゲームというものは市場というものを通っていかなければならない。マーケティングや広告も必要だ。しかし最高のマーケティングも、そのゲームが時代の好みに合わなければ無駄になってしまう。ブームを起こし、長い間愛されるためには、直観と運とでも呼ぶべきものが必要なようだ。『トリビアル・パースート』『マジック:ザ・ギャザリング』『ポケモン』のようなゲームがメガヒットになるとは、全く予想していなかった。
以上のことは、よいゲームの作り方を教えるものではない。よいゲームが備えるべき特徴のガイドラインとでもいうべきものである。