ゲームに強くなる

日ごろ同じメンバーでゲームをやっているならば、一度勝率の統計をとってみると面白いかもしれません。トップ率でもよいですし、順位の平均でもよいでしょう。そうすると勝率がずば抜けている人がいるのではないでしょうか。このコラムは、そういった勝率がずば抜けている人の特徴を探り、ゲームに強くなる方法を考えようというものです。

もちろん、ゲームに強いことはゲームに参加するための必須要素ではありません。むしろ強い人ばかりでやると、いわゆる「競技プレイ」と言われる抜け目のない戦い方が必要になって消耗することもありますので、ほどほどに強い方がよいとも言えます。

でも、ゲームに参加している以上は勝利をめざし、勝てば嬉しいというのも事実です。また、メンバーがスキルアップしていけばボケボケのお間抜けプレイよりも白熱して楽しくなるかもしれません。そこでゲームに強くなる方法を考えることが有意義であると考えられます。

思いつくままに挙げていきますが、「こんなのもあるよ」という方、ぜひメールをください。

1.読み

特に戦略性の高いゲーム、アブストラクトゲームではこれがものを言います。「自分がこの手を出せば相手はこう来る。それに対してこうすれば…」先の先をどこまで読めるか。

このスキルを磨くのは経験、すなわちどれくらいやりこんでいるかということでしょう。記憶力や思考力も大切ですが、瑣末な要素を無視して大筋で展開の道筋を読んでいくには、そのゲームを熟知していることが何より大切です。

たとえば将棋や囲碁の名人クラスは十何手先までも読んでいるといいます。そこにはいくつかの「型」や「定石」=パターンがあり、ある展開になったときに自動的に戦い方が決まっているわけです。必勝パターンとまでいかなくとも、自分が有利になるパターンをいくつか作っておくことは、勝利に近づく最良の方法です。

たくさんプレイしても、頭で考えなければ経験はなかなか身につきません。観想戦などを行い、自分の手のどこがよかったのか、どこが悪かったのかしっかりと反省することが、次につながるでしょう。

2.観察力

読みの大前提となるのが、状況をよく観察することです。頭の中であれこれシミュレートしていても、現実の状況とまったく違うのでは役に立ちません。その上、状況は刻一刻と変わっています。

手札の状況、ボード上の状況など、常に目配せをしておきましょう。誰が現在トップなのか、誰が有利なのか、伏兵はいないか。ルールを逸脱する行為が過ってなされていないかチェックするのも時には必要です。

また、ゲームの状況だけでなく他のプレイヤーの顔色やセリフにも注意を向けることが大事です。何気ないセリフから相手の状況を予想したりすることが可能になる場合もあります。それぞれの性格をよく知っているならばなおさら結構です。「この人はとりあえず攻撃タイプだから守っておこう」「この人は博打打ちタイプだから手堅くいこう」などの対策が出てきます。

「敵を知り、己を知れば百戦して危うからず」

3.ポーカーフェイス

他のプレイヤーに手の内が見透かされているほど不利なことはありません。急に点数を数え始めれば上がろうとしていることがばれてしまいますし、ニヤニヤしたり、急に寡黙になったりすれば次に大きな一手を打とうとしていることが明らかになります。

また、その人のキャラクターが目立つために集中砲火を浴びるということも希なことではありません。誰を攻撃してもよい場合、誰を攻撃するかといえば、「いつも勝っているから」「前のゲームで勝った」「とりあえず習慣で」「何となく恨まれなさそう」などという理由で叩かれるのは、きまってキャラクターが目立っている人です。

見かけ地味な人でも、プレイスタイルが派手ならば狙われやすいでしょう。序盤突っ走るタイプ、好戦タイプなどは順位にかかわらず叩かれてしまい、トップを取ることは難しくなってしまいます。

無表情が一番というわけではありませんが、あまり目立たないように、またあまり強くなさそうにすることは幾分か戦いを有利にしてくれることでしょう。少なくともドイツゲームに関しては、このことが当てはまると思います。

4.交渉力

3人以上のゲームの場合、1人対全員という戦い方ではなかなか勝つことができません。時と場合に応じていろいろなプレイヤーと協調し、その中で少しずつアドバンテージを重ねていけるというのが強いプレイヤーです。

そのための前提となる観察力や読みがなければただのお人よしになってしまいます。協調することによって自分にどれだけ利益があるのか計算して動かなければなりません。

しかしそれだけでは不十分なのが人間同士の話。事実をつきつけても、説得の仕方がうまくなければ協調は成立しません。特に相手に警戒されてしまうと、成り立つ話も成り立たなくなってしまいがちです。

「人を見て法を説け。」饒舌な話術でいくべきか、真摯な態度で臨むべきか、そこは交渉相手をよく見て対応を決めることになります。またゲーム中ずっと同じ人とばかり協調していれもいられません。パートナーを替えるときにどうもちかけるか、これもひとつの立派なスキルだといえます。

例えばカタンの開拓者で「横流し」という戦術があります。自分が当面必要でない資源を要求して、それを手に入れたらそれをほしがっている別のプレイヤーに売りつけるというやり方です。「汚い」といって嫌がるプレイヤーもいますが、感じのよしあしはやり方次第だと思います。どんな小さな材料でもルールで許される限り交渉に使って、有利な立場にたちましょう。

ちなみにルールに交渉をするともしないとも書いていないゲームでの交渉は全員で協議しておくべきです。例えばマンハッタンで「あなたがここにビルを置かなかったら、私はここに置かない」といった協定を交わすのはありなのか、考えてみましょう。今までつまらなかったゲームも交渉ありでいきなり面白くなるかもしれません。

5.冷静さ

ある麻雀の名人の言葉に「トップがとれないときには2着を狙い、2着がとれなければ3着を狙う」というのがあります。ゲームに強い人はトップ率がそれほどでなくとも、とにかく滅多にビリにならない人だったりします。

すなわちゲーム終盤に、1位か4位かの確率の低い賭けに出ずに、ちゃっかり2位を狙って確実にとるという戦い方です。確かに1位をとれなければ意味がないという考えもありますし、ルールで1位以外の順位について特に定めていないゲームが多いですから、2位を狙うということ自体には疑問もあるかもしれません。

しかし、最後の最後まで冷静さを失わないという点で、この戦い方は強いです。終盤2位を狙っていたら1位が崩れてトップになってしまったということもあるでしょう。1位のスキがよく見えれば見えるほど、最後に1位になるチャンスは広がります。

また、1位だからといって油断しないためにも冷静さが大切です。1位は全プレイヤーからマークされるので、それに負けずに他プレイヤーとの差を広げ続けるためには、熱くなりすぎてとんでもない手を打たないことが必要だからです。

負け癖というものがあるとすれば、それはかなりの部分、冷静さの欠如によることが多いような気がします。

6.運

万事を尽くしてもやはり最後にものを言うのは運です。何でも運がよかった悪かったで済ませてしまうのはよくないと思いますが、サイコロの目、カードの引きなどといったものはどうしようもありません。

これに対する効果的な対策があるわけではありませんが、あえて挙げるならば、結果をポジティブにとらえるということではないかと思います。カタンの開拓者でいつまで経っても自分の開拓地の目が出ないとき、暗くなりがちです。しかしそこで暗くなってしまうと交渉やその後の展開にもよい影響を及ぼしません。何よりもゲームが楽しくなかったという悪い思い出になってしまいます。

「確率は常に同じ、出目とかは思い込み、次に期そう」と考えれば運以外の、他の勝つ要素にもっと力を注ぐことができるでしょう。運が悪ければ悪いなりに戦う方法があります。同情を誘って交渉を有利に進めるとか、他のプレイヤーからノーマークになったところで力を蓄えるとか、勝つチャンスが全くなくなるわけではありません。運に見放されながら勝てたときに喜びは、ひときわ大きいものになるでしょう。

7.みなさまからのご意見

判断力
ゲームはつまるところ選択の岐路においてどのような選択をするかに掛かっているので、的確な判断を行うことができれば与えられた状況下でベストの結果をだせるのではと思います。(康さん)

バランス感覚
ゲーム中の不確定な部分(運、未公開の情報、公開だが記憶力が甘いため曖昧な情報など)をいかにプレイの指針として取り込めるかという感覚です。これだけだとバランスという表現はあたらないかもしれませんが、ゲーム中での自分の位置(順位がわかりにくいゲームにおいてのおおよその順位、プレーヤー間での自分の役割、スタイルなど)を見極め、ゲームを動かして行く感覚も含むのでそういう風に意識しています。 つきつめるとそれぞれ別の能力に分けられそうですが、そうじて曖昧な要素をコントロールする能力です。(康さん)

場数と経験
慣れと経験則でゲームはおそらく理解されるものだと思います。 ただわたしは、あまりカツカツなのは苦手なので、場に応じた形で楽しめるようにやっています。(バネスト中野さん)


以上、理想論を述べてきました。「私はこれを実践しており、事実強い」ということでは決してありませんのでご了承ください。自分の周囲にいる強いゲーマーがなぜ強いかを観察し、抽出した要素です。これを見習えば強く慣れるんだろうとは思いますが、言うは易し行うは難しです。

とにかく、強くなろうという努力は怠るまいと思うところです。もちろん、みんなで楽しく遊ぼうという大前提のもとでです。


Takuya Ono(hourei@e.jan.ne.jp)

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