『大航海時代』の特別指令カード
『大航海時代』のゲームバランスが悪いという議論と対策について。
問題となっているのは特別指令(Special Mission)カード。12ルートの各遠征に船を置く数が定められており、達成すればボーナスが入る。
・1つの船……自分の船を1つでも置けた遠征にボーナス
・半分の船……自分の船が半数に達した遠征にボーナス
・過半数の船……自分の船で過半数を取った遠征にボーナス
・すべての船……自分の船で独占した遠征にボーナス
下になるほど難しく、達成時のボーナスも大きいのだが、難易度の差があまりに違いすぎるというのがたくさんの人から寄せられた感想だ。前二者は後からでも気楽にいけるのに対し、後二者は最初からそのつもりで狙っていかないと不可能に近い。
このようなクレームに対し、ドイツのゲーム誌SpielboxでC.コンラートが発表したバリアントルール。
特別指令カードはゲームの最初に配らず、4枚オープンしておく。中間決算時に、ひそかに1つ選んでメモ。これをゲーム終了時に公開し、ボーナスを入れる。同じ特別指令を選んだ人がいてもよい。
これを改変してゲームの最初にひそかに1つ選んでもよいという案、さらに選ばれたカードの人気度を記録し、オッズのようにボーナス点を変更するという案もある。
日本のゲームストアバネストも迅速に対応した。そのバリアントルール。戦略の幅は小さくなるが、同じ条件にすればお金と船のマネージメントに焦点が当てられる。
ゲームの最初に1枚を公開し、全員その特別指令でボーナスをめざす。
さて作者A.V.シュルツはこの件をどう考えているのだろうか。
私たちはすごくたくさんテストプレイをしてバランスを取りました。実際バリアントルールを用いるのもいいかもしれませんが、すべての可能性を見つけるためにまず何度か遊ぶ必要があると思います。(Spielbox-Spielerforum)
もちろん独占は1つの船を置くだけよりいくらか難しいですが、だから得点も高いのです。小さい点数の遠征を早めに埋めてしまって、得点の高い船を1つか2つ狙えば、勝利しやすくなるでしょう。独占してしまえば、その遠征で他人は得点できないということも忘れずに。(Boardgamegeek-Session Report)
自分たちでいろいろ試してやっとできたルールだから、簡単にいじられたくないのだろう。だが、1つの船のボーナスを取った人も、小さい点数の遠征に置いて上記の戦略を潰そうとしたらいよいよ不利ではないだろうか?
結論:最低4、5回遊ぶつもりで買ったならはじめは通常ルールで遊び、状況に応じてバリアントにしよう。1、2回で結果を出さないとお蔵入りになる恐れがあるなら、最初からバリアントを。
この件から浮かび上がってくるのは、現代のボードゲームは1回か2回で面白さが理解されなければそのまま捨て去られるという厳しい運命にさらされていることだ。おそらく元ルールでも何度も何度も遊べば脈はあるのかもしれない。しかし何度も何度も遊ぶことができないというのが、現代ボードゲームの病弊とも言える。
IGA2007に『何時代にもわたって』
『何時代にもわたって(Through the Ages)』はチェコのボードゲーム。日本では個人輸入で入っている程度でまだ流通はしていない。古代から現代にかけて4つの時代を戦い抜く壮大な文明発展ゲームだ。有名な政治家、奇蹟、建築物、政府、軍隊が登場しゲームをユニークなものにしている。
一方、『ミスタージャック(Mr.Jack)』はフランスのボードゲーム。さまざまな特殊能力を持った登場人物の中から、切り裂きジャックを見つけ出す推理ゲームだ。ゲームストアバネストから5000円で発売中(現在は品切れ)。
大賞はメンバーの投票で決められているが、次点には『カナルマニア』、『大聖堂』、『ノートルダム』などが票を集めた模様だ。
IGAのノミネート作品は半数以上ドイツゲームが占めていたが、受賞したのは両部門とも非ドイツゲーム。いずれもドイツゲームの影響を受けながら、独自のアイデアで斬新に作ったものが評価されている。一風変わった非ドイツゲームに注目が集まっていることは、新しい時代の幕開けを予感させる。
・IGA:Recipients Announced for 2007 International Gamers Awards – General Strategy Category
・TGW:IGA2007ノミネート発表
・BGG:Through the Ages
・TGW:ミスタージャック