キングダムビルダー(Kingdom Builder)
ドイツ年間ゲーム大賞にノミネートされた3タイトルのうち、もっともゲーマーズゲーム寄りの作品である。六角形のマス、毎回変わる特殊能力と勝利条件の組み合わせ、高い拡張可能性などをもちながら、わずか45分でプレイできるのは驚嘆に値する。
デザイナーは『ドミニオン』のヴァッカリーノ。『ドミニオン』では、得点となる「屋敷」「公領」「属州」が、ただ点数の書いてあるカードに過ぎず、それらしきイラストもないため、何を目指してゲームをするのか具体的なイメージが湧かなかった。このゲームも自分の王国を広げるゲームであるが、コマを並べることで広がっていくので実にイメージしやすい。
毎回自分の番には、家コマを3個、カードに指示されたエリア(森・草原・花畑・峡谷)に置く。最初はどこに置いてもいいが、次からは可能な限り、前に置いたコマに隣接して置かなければならない。カードのしばりと、隣接のしばりが、独特なプレイ感を生み出している。カードは毎回1枚だけなので、選択肢がぐっと絞られ、考える時間が短い。これが45分で終わる理由である。
ボード上には「特殊地形」と呼ばれる場所が4ヶ所あり、ここに隣接して家を置くと、追加アクションタイルがもらえる。「追加でコマを1個置ける」「河川エリアに置ける」「1マス離れたところにワープできる」など、どれも強力。しかもこの追加アクションタイルは毎手番使えるので、いかに早く手に入れ、いかにうまく活用できるかが大きなカギとなる。
誰かのコマがなくなったら得点計算。追加で置けるという特殊能力を駆使しないと、まだコマが残っているのに終わってしまう。しかし大事なのは、たくさん置くことよりも、特典になるように置くことだ。
ボード上にあるお城に隣接して家を置いていると得点というのは基本。このほかに、毎回3枚の得点カードが公開されており、その条件で得点する。この条件は全員共通というところがポイント。マイ目標がないので、オープンな戦いになる。
得点の条件は例えば「河岸のコマ×1点」「城・特殊地形のつながり×4点」「横一直線に最も多く置いたコマの数×2点」「最も広い陣地のコマの数×0.5点」「陣地の数×1点」など。これらを同時に満たすのはなかなか難しい。
特殊地形は8つあるうち毎ゲーム4つ、勝利条件は10あるうち毎ゲーム3つしか使わない。これで8400通りの組み合わせがあることになるが、さらに拡張もすでに発売されていてさらに組み合わせを増やせる。どの特殊地形を活用して、どの得点条件を重点的に狙うか、よく考えて手番を行いたい。
4人プレイで45分。一直線に並べると1個追加で置けるという特殊地形と、最後に直線上のコマの数が得点になるという得点条件が出たため、そこが最初の狙い目となった。コマを1マスワープできるという特殊地形と、陣地の数が点数という得点条件も相性がよかったが、得点はあまり高くない。しかしこちらのほうが、陣地を広げるのに重要だった。隣接のしばりがあるため、ワープしてその先に置けるのは非常に強いからである。直線の陣営を途中で切られ、周囲を囲まれてしまったdjさんは打開するカードも引けず中盤から詰み状態。くさのまさんが河川上に置ける特殊地形を駆使して1位。
カードが1択なので、何を引くかで運の要素が大きいが、その先はどこを優先的に置いていくかで、囲碁のようなシビアな陣取りが楽しい。
Kingdom Builder
D.X.ヴァッカリーノ/クイーンゲームズ(2011年)
2〜4人用/8歳以上/45分
第2回500円ゲームズ、来年のゲームマーケットにて
国内のゲームデザイナーによる同人アナログゲーム創作企画「500円ゲームズ」が、2013年のゲームマーケットで行われる。現在、参加者を募集中(〆切未定)。
同人ゲームの高品質化と高価格化に対するアンチテーゼから始まったプロジェクト。コンポーネントの質が低くても低価格のボードゲーム、カードゲームを作成・販売することで、ライトゲーマーでも参加しやすい環境、創作ゲームデザイナーがゲームを発表しやすい環境を作るきっかけになることを目指す。
第1回は2010年のゲームマーケットで行われ、カワサキファクトリー、賽苑、OKAZU Brand、操られ人形館、カナイ製作所、タンサンファブリーク、骨折ゲームズ、などが参加して26タイトルもの新作が発表された。新作評価アンケートでは、そのうち『ブレインフリッパー』(カワサキファクトリー)と『RR』(カナイ製作所)が10位以内に入っている。
参加の条件は、制作費が1個あたり500円以下で、販売価格が500円であること。これを来年3月のゲームマーケット2013大阪、その後のゲームマーケット2013春で販売する。販売個数や未発表かどうかは問わない。
実験的なゲームを発表したい、広くいろいろな人に遊んでほしいと思う方は参加してみてはいかが。参加表明、問い合わせは下記のリンクを参照。
・第2回500円ゲームズ