大江戸八百八町(Yedo)
花のお江戸で裏稼業
江戸時代の大名となってかずかずのミッションを果たし、名声を競うドイツのゲーム。エッガートシュピーレ社が、今秋のエッセン・シュピールに合わせて去年から製作を進めていたが、クイーンゲームズ社が今春『江戸(Edo)』という別ゲームを発表してしまった。そこで新しいタイトルとしてY付きの”Yedo”になったというわけである。デザイナーはベルギー人で、イラストレーターはシアトル在住のドイツ人、F.フォーヴィンケル。どうしてこんなに日本が人気なのだろう?
プレイヤーは豊臣、細川、鍋島、前田、真田のいずれかの「部族」を担当する。徳川家に協力しつつ、裏活動で名声を高める。
プレイヤーボードは、アイテムやカード置き場を兼ねている
まずは競りでアイテムとミッションを取る。ここでは「挙(特殊能力)」、「賞与(ボーナス)」、「鋭(武器)」、「建増し(部屋)」、芸者、「乾児(追加の侍)」、ミッションの7つが3つのグループに分けられ、各グループを競り落とした人がその中から好きなものを取る(日本語がやや謎)。
次にイベント発生。このラウンドに入れない場所が決まったり、プレイヤーの財産を失わせる地震・津波・明暦の大火などが起こったりする。自然の脅威に人間は無力だが、お寺にお参りして「祝福」チップを取っておけば、被害が抑えられることもある。
次に侍の配置。江戸は江戸城、池上本門寺、京橋、吉原、芝、高輪大木戸、宿屋(笑)の7地区に分かれており、ここにワーカープレイスメントする。江戸城でミッションカードを手に入れ、池上本門寺で仏の祝福を手に入れ、京橋で武器を買い、吉原で芸者を雇い、芝で舶来ものを買って名声を上げ、高輪大木戸で名声をお金に変え、宿屋でカード交換をする。配置も行動も1人ずつなので、先手先手をとっていかなければならない。
長城のようなもので7つに区切られた江戸の街。中央には同心が回っている。
配置が終わると、同心が移動する、ここで捕まるとアクションできないので、同心が来るところは避けるか、特殊能力カードで回避。そしてようやく行動のときがやってくる、この行動のときに、ミッションを達成できるのだ。
ミッションカードは「翠色」、「黄色」、「丹色」、「墨色」の順で難易度が上がる。「翠色」はどこかに行くだけで達成できたのが、次第に必要な武器や部屋などが増え、「墨色」となると侍を3箇所に配置し、部屋を2つ、仏の祝福、武器4つ、芸者2人揃えなければならないものなど、ゲーム中に達成できるかどうか微妙になってくる。
ミッションの内容は、ゲーム自体とは関係ないが面白い。僧侶のヒロを誘拐せよ、将軍の茶器を盗め、芸者マリコを暗殺せよ、女形のハルコを誘拐せよ、教会から寄付箱を盗め、来週の宿屋のメニューを調べよ・・・スパイ、盗み、誘拐、暗殺とどれも黒いが、実在の人物?
下の段のボーナスは、必須ではないが条件を達成すると追加で収入や名声が入る
これを11ラウンド繰り返して、名声の多い人が勝つ。「墨色」のミッションカードを早めに狙っていくか、それとも「翠色」や「黄色」で数を稼ぐか。同じアイテムで達成できるミッションカードを狙うのが効率がよいが、そうはうまくいかない。
ふうかさん、karokuさんと3人プレイ。最初のラウンドでいきなり地震に見舞われ、建てたばかりの部屋が消滅。気を取り直して「翠色」のミッションをどんどん達成していたが、易しいため点数が伸びない。そのうちkarokuさんが「墨色」をスピード達成して高得点。私も「墨色」で将軍の娘を誘拐するというミッションにチャレンジしたが、武器の縄(そりゃ誘拐には最も必要ですな)が最後まで手に入らなかった。たくさんアイテムを集めていって、あと1つで達成できないととても悔しい。交換で「縄、縄下さい!」と連呼していたら、2人に笑われた。1位は、終盤に「黄色」「丹色」のミッションを次々と達成したふうかさん。
ミッションを達成するというシンプルな目的に比して要素が多く長時間ゲームになっているが、日本に対するいろいろな勘違いも含めて楽しめるゲームである。
Yedo
T.V.ギンステ、W.プランケ/エッガートシュピーレ(2012年)
2~5人用/14歳以上/120~180分
ゲームストアバネスト:大江戸八百八町
ふうかのボードゲーム日記:大江戸八百八町
江戸(Edo)
江戸幕府は、地方大名が反旗を翻すことを防ぐため、財政負担と人質を目的とする参勤交代制度を義務化した。以来200年以上この制度は継続し、交通の発達や文化の交流など現代にも大きな影響を与えている。
そんな参勤交代の中で、江戸で一旗揚げたい地方大名が、国元で資材を調達し、建物を作って権力を競うドイツのボードゲーム。ソフトウェア会社社長のS.マルツとその息子のL.マルツがデザインした作品で、2010年のヒッポダイス・ゲームデザインコンテストで長時間ゲーム特別賞に選ばれた。このときはアンデス高原が舞台だったが、クイーンゲームズから発売されるに及び日本のテーマに変更された。
ゲームの特徴はタイルを回転させてプロットするアクション選択である。全員が3枚ずつもっているタイルには、4辺に1つずつアクションがついており、合計3つのアクションを選ぶ。これと同時に、侍コマをそれぞれのアクションに振り分ける。そしてスタートプレイヤーから順に、1枚目のアクションを実行。全員が終わったら2枚目、3枚目と順番に行う。
このラウンドのアクションは、ほかの人の動きを見る前に全て予め決めておかなければならない(プロット)のと、1枚のタイルにあるアクションはやりたいものが2つあっても択一なところが悩ましい。
アクションの種類は、お金(両)、米、移動、侍の雇用、追加タイルの購入、木材の切り出し、石材の切り出し、米の収穫、建設、交換(売買)と多岐にわたり、アクションによって、プロット用の侍のほかに、ボード上の侍も必要となる。例えば木材を切り出すには、プロット用の侍がいて、その上、森林にもう1人いなければいけない。しかも同じ森のほかの侍がいると取れる木材が減る。たくさん木材を手に入れて建設に取り掛かるつもりでいたら、ほかの侍が乗り込んできて取り分が減り、建設中止になることも。その読み合いと裏のかきあいが、プロットゲームの面白さである。
勝敗に重要なのは建物で、屋敷と石垣と商館(越後屋とか?)の3種類がある。木材・石材・お金を払ってこれを江戸の各町に建てると、権力ポイントがもらえるだけでなく、その町の中での影響力を上げ、ラウンドごとに収入が入ってくる。アクションが終わったら、江戸に残したい侍全員に給料として米を与えなければならない。米を与えないと国元に帰ってしまう。
タイルの選択が悩ましく、またプロットゲーム特有のハプニングがあちこちで起こって楽しい。米もお金もかつかつなのは、地方大名の厳しい財政状況をうまく再現していると思う。
侍は東海道からも日光街道からも、どこからでも江戸入りできるのが不思議。いったいどこの藩なのか。浮世絵風のマップに、でかでかと掲げられている俳句と「日本 徳川家康」の文字がおかしい。
Edo
L.マルツ、S.マルツ/クイーンゲームズ(2012年)
2~4人用/12歳以上/60分