11月16日(土)と17日(日)の2日間、千葉幕張メッセ展示ホール4,5,6,7ホールにて「ゲームマーケット2024秋」が開催された。前回までの東京ビッグサイトから会場を移して初の開催。面積は前回から1310平方メートル増えて27000平方メートルとなり、過去最高となる1219団体※が出展し、2日間でのべ26000人が来場したゲームマーケット、前回までとどのように変わったのだろうか?(文・河上拓)
1日目は曇り。最寄りの海浜幕張駅は東京駅から千葉方面への快速急行で31分。海沿いのため風が強く、空気が冷たい。早期入場組の待機列は開場の2時間30分前となる8時30分の時点で345人。現場のスタッフによると、前回と比べると若干少なめとのこと。国際展示場と比べると都心部からのアクセスが悪くなったことが影響しているのかもしれない。
開場のアナウンスと共に、早期入場チケット組が一気に流れ込む。人気のブースの前にはみるみる人だかりができていく。
特に長蛇の列が目立っていたのは『HacKClaD』の独立拡張『HacKClaD.DeltA』を発売したSUSABI GAMES。会場購入特典の紙袋、ポストカード等を求める人達が200人以上の列を作っていた。
鉄鋼業界の非営利団体 JISF 一般社団法人日本鉄鋼連盟ブースでの無料プロモーションにも多くの人々が押し寄せた。事前に配られる用紙で「鉄のクイズ」に挑戦。正解した数だけクジを引くことができ、みごと“金のネジ”を引き当てると、ゲームが無料でもらえる。当選した200名がカナイセイジ氏の最新作『リサイクルハンター』を手に入れた。
早期入場チケットは前回同様2500枚が完売。チケットの数自体は前回から変化はないのだが、会場が広くなり、幅の広い大通りの数が増えたことで、混雑している人気ブース付近も比較的スムーズに移動することができた。
人気デザイナーのブースには新作を目当てに絶えず人が訪れていた。
「産みの苦しみがあった」と話すのは前作『SCOUT!』(海外版が2022年ドイツ年間ゲーム大賞にノミネート)から5年ぶりの新作となる『Revolve!』を発表したワンモアゲーム!の梶野桂氏。『SCOUT!』と似た上下で数字とスートが異なるカードを使用する新たなゲームを作り上げた。
Saashi&Saashiはエッセンシュピールでリリースされた新作『午前1時の大脱走』をこの日、国内先行販売。『HEY YO(ヘイヨー)』で2022年イノシュピールを受賞した齋藤隆氏は新作『GEAR (ギヤー)』をこの日、リリースした。
『トリオ』で2024年アスドールフランス年間ゲーム大賞を受賞したMob+の宮野華也氏は『ねこポーカー』『いぬポーカー』に続く、動物ポーカーシリーズの3作目となる『もぐらポーカー』をリリース。『トリオ』の逆輸入日本語版も、この日、Engamesから先行発売された。
エリア出展で特に目を引いたのはアークライトゲームズのブース。販売スペースと、試遊スペースを巨大パネルで仕切りつつ、ゲームのディスプレイを外周に配置することで、目的に応じて巡回がしやすいレイアウトとなっていた。試遊のスタンプラリーや『電力会社 充電完了!』のプロモカードの配布、新作発表等もあり大盛況だった。
巨大な潜水艦が浮かぶオインクゲームズのブースでは新作『海底探険 深版』など5種の新作を販売。9月に開催された「ゲームマーケット2024京都in京まふ」で限定販売された新作『トレンド』も購入可能となっていた。
海外パブリッシャーのブース出展が目立った。ゲームマーケット2024秋では、海外の出展者へ向けた事務局からの働きかけはなく、出展した各社は日本の出展者と同じ手順を踏んで、日本語のサイトから申込みを行って参加しているという。
『キャントストップ』等の名作ドイツゲームを洗練されたアートワークで復刻する韓国のメーカー・playteは、今回、台湾のWonderful World Board Games、日本のHonuGames、niji gamesと共に4社合同で「playte & Honu +2 games」として出展。ブースではタイムセール等の企画も行っており、多くの人が訪れていた。
ゲームマーケットは初出展というGemblo Companyは韓国の人気ゲーム『ジェムブロ(GEMBLO)』や『トゥクトゥクウッドマン (TocToc Woodman)』を扱うメーカー。韓国ではメジャーなファミリー向けゲームを日本の方に紹介すべく出展したそう。
韓国でトップシェアを誇る韓国のKorea Boardgamesは3度目の出展。 J. Grunau作の『Cuatro』のリメイク『リンキットフォー (Link it 4)』や、ケンチャンヌ作の国産ゲーム『ラストペンギン』のリメイク等が購入可能。ゲームにはQRコードがついており、読み込めば日本語ルールで遊ぶことが可能とのこと。試作品として展示されていたキンパを巻くパズルゲームが目を引いた。
Saashi&Saashiとの共作『旅のあと』『カム・セイル・アウェイ!』でおなじみのシンガポール人デザイナー、ダリル・チョウ氏が代表を務めるORIGAMEは独立ブースとしては、はじめての出展。もっと自分のブランドを知ってもらいたいという思いから出展に至ったという。今回は新作を3作を持ち込んだ。チョウ氏はゲームマーケット翌週にシンガポールで開催された『Asian Board Games Festival 2024』の主催者でもある。
初出展のallplayはYUTORIO作の2人用トリックテイキング『HAMELN CAVE』のリメイクである『SAiL』、カワサキファクトリー『コネクト37』のリメイクの『Switchbacks』等、日本人ゲームデザイナー作品の海外版を中心に12タイトルの日本語版をこの日、新発売。「我々は、日本産を含む、多くのゲームを世界基準のアートワークにして販売しています。今回はそういったゲームを日本語版にして持ってきました。次のゲームマーケットにも新しいタイトルを10個程持って来る予定です」と話すいのは、同社COOのジョー・ウィギンズ氏。今回、2つのタイトルがわずか2時間で売り切れた。
2015年から9年ぶりの出展となるJapanime Gamesは、『たんとくおーれ』や『プリンセスクラウン』等、日本のゲームをアメリカで発売するメーカー。今回はアメリカ製の日本テーマのゲームの中から、日本でもウケそうなものをピックアップして持ってきた。
この日、登壇予定だったライナー・クニツィア氏が体調不良のため、来日が叶わず、スペシャルステージで行われる予定だった「Kniziaに聞く!ボードゲームのデザインとは?」「Knizia氏 ステージサイン会」が中止となった。
1日目のゲームマーケット終了後の18時30分から22時30分まで、フードコーナーのある第7ホールのスペースを開放し、ゲームをプレイできる「ゲームマーケットナイト」を開催。チケット1500円の有料イベントだが200名以上が参加し、購入したばかりのゲームを楽しんでいた。
翌日17日(日)は、「土曜日のみ」の出展ブースがあった場所に、ニコニコ超ゲームステージが登場。茸(たけ)氏の司会の元、とりっぴぃ氏、フルコン氏、まお氏、むつー氏といった人気配信者が、賞品のゲームの詰め合わせをかけて、ステージでさまざまなゲームをプレイするゲーム大会が行われた。開場から即、こちらのステージを目指す熱心なファンの方も多かったようで、常に客席は満員だった。
お笑い芸人のいけだてつや氏がカメラクルーを引き連れて会場を練り歩き、ブースを紹介していくパートと、ステージでのゲーム大会の模様を交互に生中継で配信を行っていた。
ニコニコ生放送を運営する株式会社ドワンゴはKADOKAWAの子会社。アークライトがKADOKAWAのグループ入りしたことで、今後活発に新規層獲得に向けた、このような企画が行われていく可能性がある。
2日目は親子連れでの来場者も多く、特設ブースやキッチンカーが並ぶ、第7ホールには前日よりも多くの人が訪れていた。
食事用のテーブルと、ゲームを遊ぶことができるフリースペースは共に余裕を持って用意されていたため、休憩がてら、訪れる人も多かった。
ドイツ年間ゲーム大賞作を中心に海外のゲームを遊ぶことができる「本当に面白いユーロゲームの世界」ブースも常に満卓。今回、来日予定だったライナー・クニツィアの作品も多く用意されており、プレイ可能となっていた。隣のTRPGブースも盛況。今回も早い午後にはプレイ予約がすべて埋まっていた。
2日目の午後、特設ステージで開催された「ボードゲームに関わる疑問を解決! ゲムマ座談会3」では、『トリオ』の宮野華也氏、『SCOUT!』の梶野桂氏、『キャット・イン・ザ・ボックス』の常時次人氏が登壇。春99氏の司会の元、世界で活躍するデザイナーたちが名だたる賞を受賞、またはノミネートした経緯や、作品作りについて、興味深い話を語った。
宮野氏は、2024年アスドールフランス年間ゲーム大賞を受賞できたのは、海外のパブリッシャーがカクテルゲームズに決まったことが大きかったという。これまで受賞を逃し続けていたカクテルゲームズが受賞に対してとても前向きだったこともプラスに働いた。受賞にはその国でのパブリッシャーの大きさや流通のタイミングが重要だと話した。
次回のゲームマーケットは、ゲームマーケット2025春が2025年5月17日(土) 18日(日)、千葉・幕張メッセにて。
※出展団体エリア 73、両日 370、土曜 457、日曜 319の合計