CMONジャパンのこと

2022年8月、CMON(シーモン)日本支社が設立された。海外ボードゲーム出版社の日本支社ができるのは初のことで、どのような経緯があったのか気になっていたところ、「暮しとボードゲーム」の企画「CMON JAPANとは何か?(アーカイブ視聴可)」で、ディレクターの健部伸明氏とお話する機会があったのでいろいろお尋ねした。

CMONの謎にせまる

CMONといえば『ゾンビサイド』『ライジングサン』のようなミニチュアがどっさり入ったアメリトラッシュを思い起こすが、調べてみると本社はシンガポールにある。また、今年の年間ゲーム大賞『カスカディア』、年間エキスパートゲーム大賞『リビング・フォレスト』では、オリジナルの出版社と、日本でローカライズしている会社のほかにCMONのロゴがあり、どんな関わりをしているのか謎だった。そこに日本支社の設立である。知りたいことはたくさんあった。

健部氏は、『カタン』の最初の日本語版であるトライソフト版のルール制作をはじめ、40年近くボードゲーム業界に関わってきた。近年では『グルームヘイヴン』などアークライト社の輸入ボードゲームのルール制作を担当していたが、今年の7月末に退職。退職を表明したときから声をかけられ、翌日からCMONジャパンのディレクターに就任した。現在3人で東京に事務所を構えている。

世界各国に展開

CMONは国際企業である。「クール・ミニ・オア・ノット(CoolMiniOrNot、かっこいいミニチュアじゃなくてどうする?)」の略称が示す通り、もともとはミニチュア写真投稿サイトで、運営者のデイビッド・プレティー(イタリア人)が、ギロチンゲームズ(フランス)の『ゾンビサイド』を製作するため会社を作り、デイビッド・ダウスト(アメリカ人)の協力でキックスターターで資金を調達したのが始まりだという。本社をシンガポールにおくのは税金対策もあるが、アジア圏への販売展開を視野に入れての設置で、この度支社を立ち上げた日本の他、タイ、フィリピン、中国にも支社・営業所がある。

ライセンスを一括取得して各国に卸しており、『カスカディア』や『リビング・フォレスト』にCMONのロゴが入っているのはそのためである。社員は世界を飛び回っているが、販売だけでなく制作スタジオもシンガポール本社で行われているという。アスモデ(フランス)も同様にアジア展開しているが、競合しつつお互いに流通網を利用しあっている。

日本支社設立のきっかけ

CMONジャパンが立ち上がったきっかけで「一番大きいのはコロナ禍」という。高額なフィギュアゲームの売れ行きが鈍り、現地の輸入代理店を経由せずに小ロットでも販売する必要性が出てきた。支社があれば日本語版を制作するだけでなく、日本語版が出にくい拡張セットも日本語訳付き(またはPDF公開)で安定的に供給でき、メーカー直販で価格を抑えることもできる(どんな並行輸入よりも安くなる)。開発に時間がかかるフィギュアゲームにおいて、在庫を抱えないで済むことはウィズコロナ時代のリスク回避にもなる。

日本支社は3人しかいないため、当面はCMONオリジナルアイテム・ライセンスアイテムの両方から厳選して取り扱う。独占はせず(できず)、特にライセンスアイテムはこれまでと同様、他の会社からも日本語版は出るし、オリジナルアイテムでも日本支社が取り扱わないものは他の代理店が取り扱うケースもありうる。サニーバードが日本語版を出している『マーベルユナイテッド』のようなオリジナルアイテムでさえ、これまでの取引がある会社には販売を続けてもらったり、サポートしたりしていくという。

日本のゲームをアジアに

健部氏のもうひとつの顔としてヤポンブランドの代表があるが、CMONジャパンを通して日本のゲームを海外、特にアジアに紹介できるというメリットもある。12月にタイ・バンコクでCMONのイベントがあり、ヤポンブランドとしてブースを出す。ヤポンブランドはこれまでエッセンからヨーロッパに展開していたが、今後はアジアでの展開も見込める。欧米ではいまいちでも、感性が近いアジアでならウケるかもしれない。これは健部氏がCMONジャパンを選んだ理由でもあるという。

ゲームマーケット2023春にはエリアブースでの出展を計画中。その前に年末年始あたりには具体的な取り扱いタイトルも発表したいという。「日本にいいゲームをもたらしたいし、日本のいいゲームを世界に出したいということは変わってない。皆で業界を盛り上げていけたら」と健部氏。『グルームヘイヴン』の続編として期待されている『フロストヘイヴン』についてはCMON製品ではないため、基本的にノータッチとなるが、「グルームヘイヴンおじさん」は趣味として続ける。

CMON JAPAN:所信表明

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