ゲームマーケット2017春レポート

2017年5月14日、東京ビッグサイト東1ホールにて、国内最大のアナログゲームイベント「ゲームマーケット2017春」が開催された。国内ボードゲーム専門店や創作・同人ゲームサークルなど575団体が出展し、284タイトル(暫定値)の新作ボードゲームをはじめとする多数のアナログゲームを展示即売。1万3000人(昨年秋から1000人増)が参加した。
ゲームマーケット2017春
通路が広く取られていたが、それでも混雑する会場
限定品を求める来場者が早朝よりつめかけ、10時の開場時には約3000人が並んでいたとみられる(Realさん調べ)。テレビ局も多く訪れ、テレビカメラが見守る中で幕は切って落とされた。

走らないでくださーい!
会場と同時に長い行列ができたのは、Bakafire Party(『桜降る代に決闘を 祭札』)、FLIPFLOPs(TCG『レギオンズ!』)、KITERETSU(『猫と死体と12人の容疑者』)、DOMINA(『Argoat』)、ノスゲム(『マムマムマーガレット』)、Polygonotes(『弱者の剣』)、スーパーナンバーワンゲームス(『酒魅人』)、itten(『TOKYO HIGHWAY』)、スパ帝国(『ナショナルエコノミー・メセナ』)、カワサキファクトリー(『ルールの達人』)など。数多くの新作が発表される中で注目されたところには、①固定ファンがいる、②直前に大手メディアに取り上げられる、③先行して流通しており話題となるといった要因がありそうだ。

ノスゲムの『マムマムマーガレット』は1個1個手作り。11個の限定販売で瞬殺

カワサキファクトリーの『ルールの達人』は600セットを3時間ほどで完売
さて今回の新しい企画として「ボードゲームライトニングトーク」が行われた。愛好者やデザイナーなどが5分という制限時間でプレゼンするもので、12時から16時までの間に16人のスピーカーが登壇した。司会は声優の慶星氏と、今月CDをリリースするボードゲームアイドル「しゅぴ~る遊園地」の月田桜菜さんと神城くれはさん。

昨年のゲームマーケットにオリジナル作品『外人ダッシュ』を出展したフランスのボードゲームデザイナー、A.ボザ氏は通訳付きでゲームデザイン論を発表。テストプレイは最低でも50回以上行うことや、開発の後半には余分な要素を削っていくことを説いた。

その次に登壇したのはOKAZU Brandの林尚志氏。今回のゲームマーケットでは「これまでで一番重い」という新作『エンペラーズチョイス』を発表している。重量級ゲームのデザイン論として、核となる要素から始めて要素を加えていく手法を紹介。A.ボザ氏の作るファミリーゲームと、林氏の作るゲーマーズゲームとでは、デザインの方向性が逆方向になっているのが興味深い。

最後はゲームマーケット事務局の刈谷圭司氏が今後の展望、特にみんなが気になっている次回の2日間開催について語った。2日開催といっても、コミケのように多くのサークルはどちらか1日の出展になる見込み。アンケートを取ったところ、1日目希望のほうが2日目希望よりやや上回った。2日間開催によって出展者もほかのサークルを見て回ったり、謎解きイベントに参加したりできるようになるほか、1日目夜にはレセプションも計画したいという。

登壇したA.ボザ氏のほかにも、外国からの参加者が目立った。BoardgamegeekのE.マーティン氏とJ.パワー氏は通訳を伴って新作のチェックに精力的に動き回り、台湾のボードゲーム出版社は今回初めてブース出展を行った。フランスやドイツのボードゲーム出版社も優れた日本ゲームを探しに来ている。

台湾のボードゲーム出版社は14社共同で32タイトルを出展

テンデイズゲームズの試遊卓ではブルーオレンジゲームズ(フランス)が日本のボードゲームシーンを見に来日し、『ドクターエウレカ』をインスト
小箱のシンプルなゲームを次々とヒットさせているオインクゲームズ。ドイツ支社からラウラ・グルントマン氏が来日。デュッセルドルフ大学で現代日本学を学び、オインクゲームズの通訳としてシュピールに参加しているうちに支社を立ち上げることになった。ドイツで「香水みたいな箱」と評されるオインクゲームズの美しいデザインと、シンプルなルールに魅せられ、ヨーロッパだけでなくアメリカまで展開する。好きなゲームは『インサイダーゲーム』と『スタータップス』。

オインクゲームズの試遊卓は常に人がいっぱいで、遊んでいる人の周りにさらに見物客がおり、大盛況だった。ほかのブースでも行列をさばくのに精一杯で、試遊卓を回す余裕がないところがいくつも見受けられた。そういった状況において実際に遊ぶことができたものはごくわずかで、気になったものは購入して遊ぶことにした。ここでは目についたタイトルをいくつか概要だけ紹介しよう。
『東京ダンガン』(グランディング)は、道タイルを配置して都内の目的地を早く回るゲーム。タイルがつながると一気に移動できるが、一度置かれたタイルが回転されたり除去されたりすることもある。

『マジックメイズ』(ヘムズユニバーサル)は、ベルギーのボードゲームの日本語版。4つのコマを時間内に移動してショッピングモールから脱出させるゲーム。各自が担当しているムーブがあるが、しゃべったりジェスチャーしたりしてはならず、以心伝心が必要となる。

『半額オソウザイ』(J.C.クリエイツ)は、総菜が半額になる時間を狙ってスーパーに行くゲーム。早すぎると定価で買う羽目になるが、遅すぎると買うものが残っていない。あるあるが落とし込まれたゲームは楽しい。

『カップラーメン』(シブヤに5時)は、ゲームマーケット会場で運営に見つからないようにカップラーメンを売るゲーム。なぜに?

『楽園の方舟』(TDS)は、沈みゆく島から方舟を作って新天地に脱出するワーカプレイスメントゲーム。ワーカーを置いた先のアクションスペースが順次変わっていく面白いシステム。

『ヌビア』(COLON ARC)は古代エジプトでピラミッドを建築するゲーム。カードをピラミッド状に並べ、「ハ」の字型に効果が出る。

『うんちばさみ』は、ハエカードとウジカードでうんちを集めるカードゲーム。愛すべきクソゲー枠。紹介している人のかぶりものも最高。

輸入ゲームはゲームストアバネストと、東京初出展となるDDTがたくさんのタイトルを販売した。創作ゲームの新作タイトル数が減少したことで、輸入ゲームにお金が流れると予想していたが、売り上げについて聞くと、バネストの中野店長は「悪くない」、DDTラボのちむ店長は「ぼちぼち」という答え。ゲームマーケットのアンケートを見る限り、1人あたりの購入額自体は減少していないようなので、愛好者が増加しても従来のコア層(輸入ゲームをどんどん購入する層)の拡大には直結せず、多極化が進んでいるとみられる。

ゲームマーケットはいつもハイテンションの中野店長。「これでも44歳です」

DDTラボのちむ店長は、今月横浜にプレオープンしたDDTレルムにちなんでアラビア風のコスプレ
会場内を回って各ポイントでヒントを集める謎解きゲーム、TRPG・クリベッジ・キッズゲームの体験コーナーも盛況で、「LARP(ライブアクションRPG)」で鎧を着た人たちが剣をふるっている姿はエッセン・シュピールを髣髴とさせる。お目当ての作品を買うだけでなく、会場をぶらりと歩いて気になったものを遊ぶ・聞くという楽しみが充実してきたのは、2日開催への扉を開くことになるだろう。ゲームマーケットは、ゲーム・人・出会いの面で世界的に注目されつつある日本ゲームの原動力となっている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。