修行してないとダメ
お寺の住職になって、檀家さんを増やすダイスゲーム。東京・下町の臨済宗寺院が制作したゲームで、『御朱印あつめ』に続く仏教ゲーム第2弾である。芝の増上寺で行われている寺社フェス「向源」と、5月5日のゲームマーケット2016春で発表される。
このゲームのために作られた特殊ダイス。修行、接待、お参り、荘厳、催し、大仏の目がある。手番の最初には、これを6個一気に振る。何度か振り直しができ、出目に沿ったアクションを行う。それぞれのアクションで檀家さんが増え、最終的にその数で勝敗を決める。
修行は全ての基本である。「修行」の目はそれ自体、檀家さんを増やさないが、この目が出ていないと、何もアクションを行うことができない。しかも「諸行無常」というカードを引いてその指示に従う。檀家が半減する「僧侶の不祥事」は痛い。
お寺は檀家さんをいつでも温かくご接待しなければならない。そのためダイスで「接待」が出ると、檀家さんがちょっと増えるが振り直しができない。ほかにやりたいことがあるのに!
お布施はお寺の収入源。「お参り」の目の数だけ「お布施カード」を引く。裏には1~3金が書いてあるが、いくらになるかは引いてみないと分からない仕組み。
頂いたお布施は「荘厳」や「催し」に大事に使わせて頂く。「荘厳」とは檀家専用駐車場、永代供養墓、鐘楼などのことで、出た目に応じたお金を支払い、カードを獲得すると、檀家さんが増えたり、それ以降お布施や檀家さんが増えたりする。「催し」とは法話の会や本山参拝などで、こちらも出費して檀家さんを増やすことができる。
大仏はお寺のシンボル。ゲームのコンポーネントである木製の大型仏像コマを獲得し、檀家さんが20人も増える。ただし「大仏」の目を3個以上出さなければならず、ほかの人が「大仏」を3個以上出せばもっていかれてしまう。ゲーム終了時にもっていることが大事だ。
このように、ダイスの六面にお寺の全てが凝縮されているといってもよい。ダイスを振った後、「接待」とそのほか1種類を選んでわきによけておき、残りを振り直す。振り直したら再び「接待」とそのほか1種類を選ぶ……というのを繰り返して、全て確定したらそれぞれのアクションを行う。檀家チップがなくなったらゲーム終了で、檀家さんの一番多いお寺が勝利。
3人プレイで30分ほど。私はなかなか修行の目が出なくてバーストしまくり。「修行が足りませんな!」鴉さんはゲーム開始早々に難易度の高い本山参拝を成功させ、檀家さんを20人増やす。さらに大仏を獲得して盤石の体制に。残り2人で必死に大仏奪還を試みたが、そのためさらに修行が疎かになってしまった。結局ダブルスコアで鴉さんの圧勝。「修行」を先に確保しておくか、最後に出ることを期待して振り続けるかが悩ましい。
価格がネックではあるが、お坊さんになりきった会話が面白く、またリスクヘッジのできる軽いダイスゲームとしても楽しめる作品。お寺に興味さえあれば、ゲーム慣れしていない人にも勧められる。第3弾にも期待したい。
檀家
向井真人/陽岳寺不二の会(2016年)
3~4人用/10歳以上/30~60分