家族との思い出にボードゲーム

映画『想いのこし』を見てきた。交通事故で亡くなった4人が、それぞれの「想いのこし」を叶えてもらわないと成仏できないというストーリー。教会で結婚式を挙げたかった、野球部のマネージャーとして試合を見届けたかった、引退した消防士として誇りある仕事をやり遂げたかった……4人が1人ずつ想いを叶えて消え去っていくので、4回泣ける。
主人公のユウコ(広末涼子)は、たったひとりになってしまった小学生の一人息子・幸太郎が気がかり。父親も先に亡くしている幸太郎は、施設に入るのを拒み、母と暮らしたアパートで生活している。そのテーブルの上には、人生ゲームが広げられていた。亡くなったお母さんと2人で遊んだことを思い出して、テーブルに広げているのである。一人で虚しくルーレットを回すシーン、床にひっくり返すシーン、そしてお母さんと遊んでいた頃の回想シーンが、印象深く描かれる。
jun1sさんのコラム「ゲームとアート、そしてデザイン」で、ボードゲーム愛好者には運だけで勝敗が決まると不評の人生ゲームが、ツイッターで検索すると楽しく遊ばれている様子ばかりだったという(ここから敷衍して、本人が面白いと思えば何だってゲームになると結論している)。親子でも友達でも、対面して同じ時間を過ごすことはとても楽しく、心に残ることである。人生ゲームやウノは、確かにボードゲーム愛好者はほとんど遊ばないけれども、知名度、難易度、入手しやすさなどにおいて、そのお膳立てをするのに適したゲームといえるだろう。うちの子どもたちも何百もタイトルあるゲーム棚から、よりによって人生ゲームを出してくる。
ドイツでボードゲームが盛んな一因として、『イライラしないで!(Mensch ärgere Dich nicht)』なんかを幼少時から親や祖父母と遊んでいて、大人になっても遊び続けているということが指摘されている。この『イライラしないで!』はすごく単純なすごろくで、ドイツ人のボードゲーム愛好者はほとんど遊ばないけれども、ドイツ人で知らない人はいない。人生ゲームとは、ドイツにおける『イライラしないで!』のような位置づけなのではないだろうか。
このクリスマスからお正月にかけて、お子さんとボードゲームをする機会がある方には、いつもより簡単なゲームをチョイスして、盛り上がりを優先してみることをオススメしたい。先日公開した「クリスマス・年末年始用に新作ゲーム10選」は、ルールが難しくないゲームを優先してリストアップしている。ほかにも新作でないド定番級のゲームはいくらでもある。これらを1つ2つ、顔をよく見て遊んでみよう。お子さんの心に、ボードゲームを遊んで楽しかったという思い出がいつまでも残るように。
あとそれから、いつ死んでも「このゲーム遊びたかった……」などという未練で成仏できないことがないように、たくさん遊んでおきたいと思った。

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